ココカラＳＤＧｓ－第１９回「ＳＤＧｓ宣言に向けて」

本紙掲載日：2022-10-27

6面

◇メンバー選出、幹部外しアンケート－山口さん
◇意外にも社会に影響、やりがい感じた－田中さん
◇子どもにより良い未来を、今こそ発信－髙橋俊さん
◇若手に任せる、そこに山口さんの覚悟－難波さん

　今注目のＳＤＧｓ（エスディージーズ）をテーマに、地域や地球の未来を共に考えるＦＭのべおかの番組「ココカラＳＤＧｓ」の第１９回「ＳＤＧｓ宣言に向けて」が、２０日に放送された。内容を一部抜粋し紹介する。

　アドバイザーはＳＤＧｓコミュニケーターの難波裕扶子さん（５０）＝シンク・オブ・アザーズ代表、日向市亀崎西＝。ゲストは和光産業＝延岡市古城町＝の専務・山口勝久さん（５０）、住宅建築事業部・髙橋俊貴さん（３９）、工務設計部・児玉栄子さん（４７）、住宅建築事業部・甲斐晴奈さん（２９）、企画住宅事業部・田中遥哉さん（２７）、総務経理部・高橋千夏さん（２７）、不動産事業部・加門愛優実さん（２２）。なお、収録は１１日に行われた。

－－第１９回のテーマは「ＳＤＧｓ宣言に向けて」です。

〈難波〉帝国データバンクの２０２２年度の調査結果によると、ＳＤＧｓに積極的な企業の割合は５割超で、前回（昨年度）と比べ１２・５ポイント増加しています。
ただ大企業と比べ、中小企業での取り組みは進んでおらず、「どう取り組めばいいのか分からない」という中小企業も多いと思います。
そんな中、今回は社内に「ＳＤＧｓプロジェクトチーム」を立ち上げ、真剣に挑戦している和光産業の皆さんをゲストに、取り組みのヒントを探りたいと思います。

－－始めに、和光産業の事業内容を教えてください。

〈山口〉和光産業は不動産業、建築業、リフォーム業を中心に創業４３年を迎えます。不動産に関すること、住まいに関することをオールインワンで行っている会社です。
最近では社会貢献事業として、障害者の賃金アップのために障害者施設と提携し、焼き芋の加工と自動販売機での焼き芋販売に取り組んでいます。

－－ＳＤＧｓプロジェクトについてお聞きします。いつ立ち上げたのですか。

〈山口〉昨年８月に社内でＳＤＧｓカードゲームを実施し、それをきっかけに、会社全体で取り組んでいくことを決めました。難波さんにコンサルタントとして手伝ってもらいながら、同１０月にチームを立ち上げました。そしてようやく、今月２１日に「ＳＤＧｓ宣言」を行います。

－－メンバーの皆さん、とてもフレッシュな顔ぶれです。どう選出されたのでしょうか。

〈山口〉通常、会社として何かに取り組む場合は上層部で決め、それを下に落とし込んで進めていきます。ただ、ＳＤＧｓの場合は何か違うなという感覚があって。どう進めていくべきか、それが僕の悩みでした。
ＳＤＧｓは未来に向けての活動です。会社全体で取り組んでいくことも踏まえ、幹部社員を外し、アンケート調査を実施して各部門から１、２人ずつ手を挙げてもらい、このメンバーに決まりました。

〈難波〉会社の未来を若手に任せるということは、すごく大きいこと。そこに、山口さんの覚悟を感じました。

〈山口〉社員を信頼していますし、将来の会社を支えてもらいたいと思っています。また、これから入ってくる社員との世代も近いので共感してもらいやすい。そういうことを大事にしたいと思いました。

－－では、メンバーの皆さんにお聞きします。プロジェクトチームに手を挙げた理由を教えてください。

〈甲斐〉「これからはＳＤＧｓに取り組まないといけない」「そういう社会になっていく」というのは分かっていて。だけど、みんなやるから自分もやるんじゃなくて、ちゃんと自分で理解して取り組みたいと思って手を挙げました。

〈田中〉甲斐さんと同じで、ＳＤＧｓは大切な取り組みだと思いますし、それを任せてもらえることで会社はもちろん、自分の暮らす地域の活性化にも携わることができると思い、プロジェクトチームに入れてもらいました。

〈難波〉そうやってチャレンジできる場が職場にあることが、すばらしいですよね。

－－もともとＳＤＧｓについて、どういうイメージを持たれていたのでしょうか。

〈高橋千〉真っ先に思い浮かんだのは、学校の社会の授業でした。環境問題や貧困問題についての活動なのかなという感じで、正直、身近に感じるものではありませんでした。

－－そのイメージがＳＤＧｓプロジェクトを通じて、どう変わってきましたか。

〈高橋千〉思っていたよりも身近な問題なんだなと感じたことと、具体的な活動を決めていく中で、小さな一つ一つの積み重ねが大きな物事につながっていくことを改めて感じました。

〈加門〉私も初めはＳＤＧｓという言葉に対して堅い、難しい、聞き慣れないイメージを持っていましたが、プロジェクトチームの一員として学んでいくうちに、すぐにでも挑戦できることがたくさんあることに気付きました。

－－山口さん、ここまで聞いてきて、どうお感じですか。

〈山口〉どうしてプロジェクトメンバーに手を挙げたのか、こうやって聞くのは初めてだったので、うれしい気持ちでいっぱいです。

〈難波〉一体感を感じますね。皆さん部署は違いますが、何回も対話を繰り返しながら思いを共有するうち、こういう空気が生まれたのだと思います。

－－具体的に、ＳＤＧｓプロジェクトをどう進めてきたのでしょうか。

〈難波〉企業がＳＤＧｓを経営に組む込む場合に指針とするものがあります。それが「ＳＤＧ（エスディージー）コンパス」です。五つのステップを示した行動指針で、このＳＤＧコンパスに沿って進めてきました。
よく「弊社はＳＤＧｓに取り組んでいます」と、ＳＤＧｓアイコンを付して事業活動を表現していますが、多くの企業がそこで終わってしまっています。
そうではなく、経営に組み込むためには、自分たちが社会に対してできることは何か、社会に求められていることは何かを分析しながら、どう目標を設定し、どう各部署に落とし込んでいくか。
さらに、誰がいつまでに何をしていくのか数値目標を掲げ、アクションを起こし、その結果を検証し、アップデートしていきます。そういうことを皆さん、苦労しながら取り組んでいるところです。
こうして作りあげられたものはガイドラインとして、例え時代が進んだとしても調整可能なものとして設計されています。

〈児玉〉各部署のバリューチェーンマッピングを作成し、各工程の正と負の影響を洗い出したり、分析したりしました。次に、私たち企業がＳＤＧｓに取り組む上で、得意なことだけではなく積極的に取り組むべきことにも行動を移すことを学び、考えました。
現段階では、全体的にまとめたものを各部署で行動に移す直前の段取りをしています。

〈難波〉ＳＤＧｓは棚卸しだと思っています。進める中で将来的にどうなるのかを十分に考えることができ、大事なことは何なのかをみんなで共有し合うこともできます。

－－活動する中で感じたこと、疑問に思ったことは。

〈加門〉私たちが生活する上で、できることがたくさんあることに気付きました。例えば、私は洋服が大好きでたくさん集めているのですが、着なくなった洋服を捨ててしまいがちです。捨てるのではなく、リユースやリサイクルなどに回すこともＳＤＧｓにつながると感じています。

〈田中〉バリューチェーンマッピングを作成した後、業務の中にある強みと弱みをあぶり出す作業がありました。自身の業務を見下ろした時に、意外にも社会に影響を与えていることを知りました。
初めのうちはすべて疑問だらけでした。そのため、プロジェクトメンバーと協力して分からないことを調べたり、協議し合ったりしました。一言で表すと難しかったです。
他社のＳＤＧｓの活動の一覧を見た時、果たして自分たちがこのようなことをできるのかという不安がありました。しかし、難波さんにアドバイスされたことを一つずつこなしていくと、段々と形になっていき、企業で取り組み、自分たちで決められることにやりがいを感じました。

〈高橋千〉難波さんに影響を受けました。ＳＤＧｓとは何なのか、今抱えている問題、ＳＤＧｓの活動が私たちにとってどれだけ大切なことなのかを熱心に教えてくれました。

〈児玉〉私は息子と娘に影響を受けました。２人に何気なく「ＳＤＧｓって知ってる？」と聞くと、当然のように「知ってるよ。学校で習ったよ」と言われました。
ＳＤＧｓは子どもたちに浸透しています。子どもから大人まで全員ができることをもっと考えなくてはいけないと改めて思いました。

－－パーパス（目標）が決まった時、どう感じましたか。

〈甲斐〉思い返してみると、そこまで苦労はしませんでした。思ったことをはっきりと言い、互いの意見を尊重するメンバーだったため、一日でまとまることが多く、苦労した覚えはありません。

〈高橋千〉パーパスが決まった時は、すごくきれいにまとまったなというのが最初の感想です。メンバーのたくさんの思いがたくさんの単語になって出てきて正直、私は苦労したと思っています。
いろいろな思いや単語が一言でまとめられるのか心配でしたが、まとまった時にいいものができたという満足感がありました。

－－どのようなパーパスに決まったのですか。

〈高橋千〉「ＬｉｆｅＳｍｉｌｅＳｕｓｔａｉｎａｂｉｌｉｔｙ（ライフ・スマイル・サステナビリティ）〃暮らし〃でつなぐ〃笑顔〃をつくる」です。

〈山口〉パーパスのサブタイトルが全体的にしっくりきました。パーパスの言葉自体はシンプルですが、僕たちの目指したいものはそこにありますし、お客さまと社員、社員の家族が笑顔でずっと暮らしていける社会が私たちの願いです。何より、みんなが一生懸命考えてくれたことがありがたいです。

－－これから、どうアクションをしようと考えていますか。

〈高橋千〉ＳＤＧｓの１７の目標のうち、四つの項目を重要課題として選びました。まずは８番「働きがいも経済成長も」からお話しします。
働きやすい職場にするため、職場改善に少しずつ取り組んでおり、クールビズの導入や勤怠システムの見直しなどを行っています。
また、より良い職場にするために、社員から働き方についての意見を募り、それを反映させるような活動を行っていこうと思っています。

〈加門〉次に１１番「住み続けられるまちづくりを」です。延岡市は年々人口が減っています。そのため古い空き家をリノベーションして、市と連携しながら子育て世代の移住者に貸していけるようにしたいと考えています。

〈児玉〉次に１２番「つくる責任つかう責任」です。性能の良い住宅に長く住んでほしいので、住宅性能の強化に取り組んだり社内の製品について適切な表現、開示をします。
データセキュリティーやプライバシーの保護では、個人情報の徹底管理および社内教育も実施します。このような会社の取り組みを理解してもらうために、ホームページを立ち上げたりパンフレットを作成したりします。

〈田中〉最後に１３番「気候変動に具体的な対策を」です。弊社の行動指針に「環境問題に積極的に取り組む」があります。それに伴って毎月１回、まちの清掃を行っています。また、定期的な海洋汚染の対策として海周辺のごみ拾いも行っていきます。

－－最後に、ＳＤＧｓを一言で表すと。

〈髙橋俊〉ＳＤＧｓとは「子どもたちの未来」です。これからの未来をつくるのは子どもたちです。僕たちが子どもたちにより良い未来をつないでいきます。
不便で優しくない世界を子どもたちに渡せません。今こそ、みんなで発信していきましょう。

〈児玉〉ＳＤＧｓとは「輪」です。ＳＤＧｓは企業や社会の一員である私、家族、お客さま、みんなが輪になっているイメージです。できる限り再利用するという意識を高めることをイメージして選びました。

〈高橋千〉ＳＤＧｓとは「課題」です。課題という意味を調べると、「問題のうち解決するといった行動に重点が置かれているもの」という意味がありました。いろいろな課題をＳＤＧｓの活動を通して解決していきたいと思います。

〈加門〉ＳＤＧｓとは「チャレンジ」です。会社としても初めてのことですし、私は関係ないと思うのではなく、一人一人が１７の目標に向かってチャレンジしていくべきことだと思いました。

〈甲斐〉ＳＤＧｓとは「感謝」です。周りの人や環境に感謝することがＳＤＧｓの第一歩となり、一番大事なことだと思います。誰にもできることです。

〈田中〉ＳＤＧｓとは「つながり」です。ＳＤＧｓのどの項目を取り組むにしても、すべてがつながっていくという意味がありますし、活動が周りに影響を与えるという意味でもあります。何にしてもつながりが大事だと思います。

〈山口〉ＳＤＧｓとは調和を意味する「バランス」です。実際にＳＤＧｓに取り組むと、矛盾することが結構出てきます。
例えば、経済活動を良くしようとすると環境に悪影響を及ぼすことがあります。そのような矛盾の中で、社会の考え方や主張がいろいろあります。それは当然の話です。バランスを取って調和を図って、みんなが住みやすい社会をつくることがＳＤＧｓだと思います。

〈難波〉まさにＳＤＧｓはハーモニーだと思います。多様性が混ざり合うことでより良くなっていきます。ハーモニーを奏でることによって豊かな未来になっていくということを、皆さんのお話を聞いて確信したような気がします。

（おわり）

□第２０回の内容□
〈テーマ〉「暴力のない社会へ」
〈ゲスト〉延岡市長の読谷山洋司さん、ハートスペースみやざき（宮崎市）の代表理事・財津三千代さん
〈放送日〉１１月１７日午後１時から
〈再放送〉１１月２４日午後８時から、同２７日午前１１時からの２回