新型コロナ週刊トピック－２種に大別２価ワクチン

本紙掲載日：2022-11-05

2面

接種する新型コロナワクチンを選択する際の考え方（佐藤圭創医師作成）

どちらを打てばいいの

　新型コロナウイルス感染者数は県内を含め全国的に下げ止まりとなりました。過去と同じく年末・年始に感染が再拡大する懸念があり、専門家らはワクチンの接種率を高める必要性を訴えています。

　ただ、主流となるオミクロン株対応の２価ワクチンは大きく２種類あり、「どちらを打てばいいのか」と迷う声も聞かれます。そこで今回はワクチン選択の参考となる情報を中心にお届けします。

◆全国で増加傾向

　県内の感染者数はこの１週間、前週の同じ曜日を上回る日が続きました。１人から何人に感染しているかの指標となる実効再生産数は、沖縄を除く全都道府県で「１」を超えて増加傾向を示しており、明らかに下げ止まりしている状況です。

　延岡市内だけで見ても、９月と１０月の連休後に一時拡大した感染が高齢者関連施設のクラスター（感染者集団）へと移り、それが再び家庭内感染から学校や地域などへと広がる悪循環も出ています。症状が軽いため風邪のつもりで受診した病院で陽性が判明し、結果的に看護師などのスタッフに感染したとみられるケースも増えているといいます。

　感染者が再増加している原因について専門家らは、行動制限や水際対策の緩和によって人の動きが活発化したことに加え、新型コロナワクチンを接種して一定期間が過ぎ、抗体価が下がっている人が多くなったためだと分析しています。

　そのワクチンですが、３回目接種からオミクロン株対応の２価ワクチンが使われるようになりました。２価ワクチンは①ＢＡ・１とＢＡ・２系統により効果が高いとされるタイプ（以下ＢＡ１＆２型）②ＢＡ・４とＢＡ・５の抗体価を高めるとされるタイプ（以下、ＢＡ４＆５型）――の２種類に大別されます。

◇感染した人は異なる型のワクチンを

　どちらのタイプのワクチンを接種すればいいのかを判断する上で重要なのが、自分に備わっている抗体です。県新型コロナ対策調整本部の佐藤圭創特任医師によると、自分もしくは同居家族が過去に感染していれば、いずれかの抗体を獲得していると考えられます。

　その種類は感染時に流行していたウイルスと症状の特徴で判断し、感染時期が▽今年１～６月であればＢＡ・１▽７～８月前半ならＢＡ・２（味覚嗅覚障害なし）▽８月以降だとＢＡ・５（味覚嗅覚障害あり）――の抗体を有している可能性が高いことになります。

　つまり、ＢＡ・１かＢＡ・２に感染した人はＢＡ４＆５型、ＢＡ・５に感染した人はＢＡ１＆２型のワクチンを接種すれば幅広いウイルスに強くなると言えます。

　なお、確認されている感染者数に濃厚接触者と無症候性感染者（自分が感染したことに気付かなかった人）を加味した佐藤医師の推計で、県民の抗体保有率はＢＡ・１が約３％（３万人）、ＢＡ・２が約９％、ＢＡ・５は約３０％にも上るのだそうです。

◇未感染者、いま接種するならＢＡ４＆５

　悩ましいのが、これまでに感染したことがない人です。現在、海外ではアジアを中心にＢＡ・２系統の亜種（ＸＢＢなど）、欧米ではＢＡ・５系統の亜種（ＢＱ・１など）が猛威を振るっており、すでにどちらも日本国内での市中感染が確認されています。

　佐藤医師によると、感染拡大の「第８波」を前提とした場合、どの系統のウイルスが優勢となるかは今月末までに兆候が分かるとのことです。ただ、前回接種から３カ月以上が経過すると抗体価が下がるため、早めの接種が望ましいといいます。

　これらを踏まえ佐藤医師は、インフルエンザとの同時流行も考慮して、手元に接種券があれば、現時点で感染が継続しているＢＡ・５対応のワクチンを接種するよう勧めています。

　ただ、ＢＡ１＆２型、ＢＡ４＆５型のどちらのワクチンであっても、現在確認されているウイルスに対しては十分な重症化予防効果を備え、一定の感染予防効果もあるため、「打てるときに打てるワクチンをなるべく早く接種することが重要です」と強調しています。

　なお、延岡市では現在、ほぼ全ての接種会場（医療機関）がＢＡ４＆５型のみを使用し、ＢＡ１＆２型が接種できるのは１医療機関（あたご整形外科）のみです。

◇高齢の感染者、望ましい施設内治療

　県北では最近になって高齢者施設でクラスターが相次いで発生しましたが、感染した利用者の家族からは「なぜ入院させてくれないのか」との訴えが多く寄せられているといいます。

　これは国が医療崩壊を防ぐため、利用者が感染した場合はできる限り施設内で治療するよう指示しているためです。病院には介護専門のスタッフがいないため、介助が必要な高齢者が１人入院するだけでも、かなり大きな人的負担となります。

　対して、施設であれば介護系スタッフが充実しているため、従来通り食事や排せつなどの介助が可能です。また、高齢者は入院で環境が変化するとせん妄状態になりやすく、暴れたりするケースも多いため、慣れた環境での治療が望ましいとされます。

　施設内での治療は医療機関や保健所とも連携しており、抗ウイルス剤や酸素の投与、点滴など、病院と同等に行われます。一方、心肺蘇生や気管内挿管などはウイルスが大量に飛散して周囲への感染リスクが高いため、一般的には行われません。

　何よりも、入院すると本人に面会できなくなりますが、施設では最期まで家族のみとりが可能で、結果的に「施設内で治療・みとりができてよかった」という家族が多いといいます。