新型コロナ週刊トピック－感染増加、加速

本紙掲載日：2022-12-17

2面

医療崩壊の要因と注意事項（佐藤圭創医師作成）

負担感増す医療現場－置き換わり進み重症化も

　新型コロナウイルスの感染者数は全国的に増え続けており、県内も増加スピードが加速しています。延岡市内の医療機関では発熱外来の受診が一気に増えて通常診療を圧迫しているほか、休日・夜間の救急要請も急増しています。今回は負担感が増す医療現場の状況をお伝えします。

◆実効再生産数１・１７－１３日現在の本県

　直近１週間の人口１０万人当たりの感染者数はこれまで、北日本や日本海側の地域が都道府県別の上位を占めていましたが、１２日時点で広島県が６番目、佐賀県が８番目に多くなり、「東高西低」の感染状況は少しずつ西へと拡大してきました。

　また、北海道や東北の一部は、１人から何人に感染しているかの指標となる実効再生産数が先週、一時的に下がりましたが、この１週間で再増加し、全国的に増加傾向が顕著化しています。

　１３日現在の実効再生産数は宮崎県が１・１７、大分県と福岡県も１・１２など、九州各県とも全国平均の１・０４を上回っており、今月末はかなり感染者が増える兆しとなっています。

◇目立つ喉の痛み、肺症状悪化の高齢者も

　１日当たりの死亡者数は８日現在で２４３人に達し、第７波のピークだった３４７人（９月２日）に近づきつつあります。専門家によると、第８波の死者数は第７波を超える勢いで増加しているといいます。

　置き換わりが進んでいるＢＱ・１やＸＢＢなどの新たなウイルス株は、海外の統計では、重症化率、入院率とも第７波の主流だったＢＡ・５と変わらないとされていますが、国内の現状は異なるようです。

　特に目立つのが激しい喉の痛みで、若者でも食事や水分が取れないために衰弱して救急病院に駆け込む人が急激に増えています。また、感染後１、２日で急速に肺症状を悪化させる高齢者が第７波をしのぐ勢いで増えており、かなりの速さでウイルスの置き換わりが進んでいるものとみられています。

◇ピーク年末、年明けと２回の可能性

　県内では医療緊急警報が発令され、新型コロナ専用病床の使用率も１５日時点で３６・８％と、この１週間で倍増しました。第７波では同警報が出てから約３週間で緊急事態宣言が発令されており、年末年始でピークに達すると警戒されます。

　県新型コロナ対策調整本部の佐藤圭創特任医師は、今月２７日ごろにピークを迎え、正月休みを挟んで来年１月１５日ごろに２回目のピークが来る可能性が高いと予想しています。

　ピーク時の感染者数は第７波のピークの１・２～１・５倍まで達するとみられるということです。延岡市では１日当たり６００～７５０人にも上る可能性があり、そうなってしまうと市内の医療機関だけでは対処困難になる恐れがあります。

　インフルエンザについては、マスク着用がある程度徹底されており、当初予想されたほど感染が広まってはいませんが、大阪などでは流行しており、年末の帰省などによる増加には注意が必要です。

◇医療はパンク状態－電話なしの患者で混乱

　延岡市内は１週間当たりの感染者数が、２週前の３５８人から先週は５５８人、さらに今週は１０２５人まで一気に増えました。このうち１２日は、１日だけで３０１人にも上りました。

　こうした中、受診の仕方により医療現場の負担が増大しています。多くの医療機関では午前中を中心に発熱外来へ患者が殺到して駐車場からは車があふれ、病院の受付も電話が鳴りっぱなしで、対応しきれずに受診を断られる事態が発生しています。

　特に、電話なしで直接来院する人が多く、より混乱が増している状況です。その中でも徒歩や自転車でいきなり来られると、発熱者用の待合所がない病院ではほかの患者と同じ空間に待機させるわけにはいかず、一般外来を止めるケースも出ています。

　また、この時期は特定健診を受ける人が多いため、十分な外来診療の態勢を確保できない医療機関も多くあります。新型コロナに感染した人が保険料の受け取りに必要な資料を請求したり、陰性証明を出してほしいと来院する人もまだ多くいて、すでに地域医療はパンク状態です。

◇崩壊避けるためにも受診前に必ず連絡を

　県立延岡病院の新型コロナ入院患者は１５～２０人前後で推移していて、実働可能な専用病床の占有率はすで実質５０％を超えている状況です。

　軽症者などを受け入れている市内の宿泊療養施設は、１４日時点で３２人が利用していますが、実質空いている８床が埋まるのも時間の問題とみられています。

　また、多くの医療機関が休診する休日の夜間を中心に、救急要請が急増しています。特に若い世代で、夜中に「熱が出た」「薬がなくてどうしたらいいかわからない」などの理由だけで救急車を呼ぶケースが急増しており、第７波で延岡市独自の医療緊急事態宣言が出された時に近い状況だといいます。

　切迫する医療崩壊の危機を避けるため、市医師会などは、①必ず事前に連絡して病院を受診する②車での受診が望ましい③夜間・休日の受診を控える④不必要な救急要請をしない⑤常備薬・常備食を準備する⑥繁忙時の病院への書類請求を避ける─などを呼び掛けています。

　夜間・休日の受診や救急要請を迷う場合は、新型コロナウイルス感染症受診・相談センター（電話０９８５・７８・５６７０、土日・祝日も２４時間対応）まで。なお、症状がある場合でも、現在は薬局やコンビニエンスストアなどに薬を買いに行くことは「不要不急」の扱いにはなっていません。