ココカラＳＤＧｓ－第２１回「地域資源を生かして」

本紙掲載日：2022-12-22

6面

◇もったいない、知られていないものにスポット―廣澤さん
◇周りの環境と自分は一心同体―杉田さん
◇危機感が仕掛けにアクセル―難波さん

　今注目のＳＤＧｓ（エスディージーズ）をテーマに、地域や地球の未来を共に考えるＦＭのべおかの番組「ココカラＳＤＧｓ」の第２１回「地域資源を生かして」が、１５日に放送された。内容を一部抜粋して紹介する。

　アドバイザーはＳＤＧｓコミュニケーターの難波裕扶子さん（５０）＝シンク・オブ・アザーズ代表、日向市亀崎西＝。ゲストはスナオ製薬＝宮崎市＝の代表・廣澤直也さん（４１）、クロスゴー＝同＝の代表・杉田剛さん（４７）。なお、収録は１３日に行われた。

－－第２１回のテーマは「地域資源を生かして」です。

〈難波〉ＳＤＧｓ達成のキーワードとして皆さんよく、イノベーションという言葉を聞くと思います。ないものからつくるイメージを持っている人も多いと思いますが、実は大事なことは、今目の前にあるものを結合させて新しいものを生み出すこと。今回はこの地域で、この地域の資源を生かして活動している二人がゲストです。

－－では廣澤さん、自己紹介をお願いします。

〈廣澤〉広島県三原市出身で、高校卒業後、宮崎大学工学部への入学を機に宮崎県で暮らすようになりました。
大学では化学を専攻し、天然物の有機化学を学びました。卒業後は会社員としてサプリメントの研究開発や営業を経験し、１２年前、２９歳の時に起業しました。それが現在のスナオ製薬です。

〈難波〉社名の由来を教えていただけますか。

〈廣澤〉僕の名前は直也といいます。僕の両親が「素直な子どもに育ってほしい」と付けてくれました。仕事においても素直な姿勢を大切にしたいとの思いから「スナオ製薬」と名付けました。
また、スナオは「ＳＵＮＡＯ」と表記します。区切るとＳＵＮ（太陽）とＡＯ（青）。宮崎県の太陽と青い海を表しています。

－－続いて杉田さん、自己紹介をお願いします。

〈杉田〉僕は宮崎市出身です。これまで宮崎商工会議所などで働きながら、宮崎市青島にトゥクトゥクを走らせたり、花火大会をＳＮＳで中継したり、地域の観光事業や活性化事業、創業支援などに携わってきました。昨年起業し、現在、企業と企業の新しい出合いを生み出す活動に取り組んでいます。

〈難波〉杉田さんは地域の面白いを０から１に、それも何回も何回もつくってきた人です。数年前に県教育委員会の会議で初めて会って、宮崎県にこんなに突き抜けた人がいるんだと、とても刺激を受けました。

－－ゲストお二人の出会いについて教えてください。

〈廣澤〉６、７年前、同じ経営者仲間のつながりで剛さんと出会いました。あるとき剛さんからメッセージが届いて。「スタートアップ道場という取り組みを始めるから参加しないか」という内容でした。
起業して５年ほどたった頃で、自分の事業に対して何となくマンネリ化しているのを感じていました。新しい動き、新しい学びを自分自身にインプットしていかないと、これからの時代に生きていけないんじゃないかと、危機感を感じていた時期でもあり、参加させてもらいました。
事業の本質はもちろん、自分の思いを伝える大切さや、異業種の人たちとのつながりなど、多くの学びがあり本当に感謝しています。

－－杉田さんは、廣澤さんからどのような影響を受けていますか。

〈杉田〉僕の半分は廣澤さんでできていると言っても過言ではありません（笑）。廣澤さんの話を聞いたり、笑顔を見てもらったりすると分かるのですが、空気をつくるのが天才的に上手な人で、出会う人みんな廣澤さんのファンになってしまうような、そんな事業家です。

〈難波〉廣澤さんは「剛さんは乗せるのが上手」とおっしゃっていましたが、二人とも乗せたり乗せられたりしながら、常に越境し続けていますよね。

〈廣澤〉僕は剛さんに乗せられっぱなしです。剛さんだから乗っかりたいとも思っています。

－－ここからはテーマ「地域資源を生かして」について、具体的に教えてください。

〈難波〉地域資源を生かすことはとても重要なキーワードです。地域資源は新しい価値を生み、地域外からお金を生んで地域内に再分配することができます。
地方では小さな経済を回すことが大事になります。しかし、人口減少が進む地方の人が、自分たちのお金だけで発展し続けることは難しい。地域外からのお金を再分配した方が、新しいものを生み出しやすいのです。
ゲストのお二人は、このようなことを事業の核に、楽しく取り組んでいます。スナオ製薬の企業理念は「地域資源革新でみんなを幸せに」です。ここに込めた思いを教えてもらえますか。

〈廣澤〉企業理念は僕の大学時代の経験がきっかけです。大学で宮崎県にやって来て、宮崎県出身の同級生から日向夏を初めて食べさせてもらいました。
日向夏は普通のかんきつとは違って、白い皮を食べます。僕の出身地である広島県ではそのような食べ方をするものはなく、めちゃくちゃ面白いなと思いました。
そして、隣にいた僕の友人は日向夏にしょうゆを付けて食べ始め、衝撃を受けました。僕も恐る恐るまねをして食べたら、意外とおいしかったです。宮崎には素晴らしい素材がたくさんありますが、食文化もすてきだなと感じました。
しかし、日向夏はマンゴーのように有名ではありません。県外では青果として売れないため、果汁を搾っていろいろなところで使われていることを知りました。そして、絞った後の皮のほとんどが捨てられると聞きました。
かんきつの皮は栄養成分が豊富で、特に日向夏にはダイエットに良い成分やアロマオイルになる成分がたくさん含まれています。
そのようなもったいないものや知られていないものに、地域資源としてスポットライトを当てて、化粧品やサプリメントなどの付加価値商品に変えて県外に販売することで、より多くの人にハッピーを提供できるのではないかと思い、起業に至りました。

〈杉田〉率直に言うと優れた地域資源は全国にたくさんあります。しかし、スナオ製薬は栄養が取りづらい食品をサプリメントで取りやすくしたり、県内に還元したりしており、素晴らしい仕組みだと思いました。
また、廣澤さんは社内でディスカッションをたくさん重ねていて、周りのスタッフの意見を聞いています。その意見を商品に落とし込み、自身の限界を超えていく手法を取っているのです。

－－具体的に、どうスタッフの意見を抽出しているのですか。

〈廣澤〉商品アイデア募集箱をクラウド上に設け、誰でもいつでもどこでも思い付いたアイデアを投稿できる仕組みをつくっています。
７月からの今期は、１５０～１６０のアイデアが集まっています。そのアイデアを商品開発チームを中心に審査して、その中から選ばれた商品を販売しています。
また、業務改善の点ではアイデアプレゼン会を行っています。月に１回、僕と社内のナンバー２に向けてプレゼンをしてもらいます。アイデアを出した人は５００円、採用された人は５０００円をもらえる仕組みになっています。

－－スナオ製薬の商品で、県北の素材を使った商品はありますか。

〈廣澤〉今年９月に発売された発酵ハーブティー「ｓｈｕｔｔｏ（シュット）」です。弊社と延岡市の茶園・スローライフトゥ、五ケ瀬町の宮﨑茶房、宮崎県、宮崎大学が共同で開発した商品で、県北のブルーベリーの葉を使っています。
ブルーベリーの葉は、１５年以上前から宮崎県と宮崎大学が非常に力を入れて研究している機能性素材で、実よりも葉の方がポリフェノールが８倍ほど多く含まれているそうです。県外には知られていない地域資源のため、もっと認知度を高めていきたいという思いの中で生まれた商品です。

－－杉田さんは中小企業診断士の資格を持っており、アクセラレータでもあります。

〈杉田〉中小企業診断士の資格を持つ僕がお話ししても、急激に事業が拡大するわけではありません。大手企業とスタートアップを連携させ、新しい事業をつくることがアクセラレーションプログラムの一番大きなところだと思います。
大手企業はチャンネル、商品力、研究所もあり、いろいろなノウハウを持っています。それらを活用して新しい事業を展開していくことがアクセラレーションプログラムになります。
大手企業は現在の売り上げが大きいからこそ将来への危機感があるようです。そのため、連携させて一緒にやらせてくださいというスタンスで行っている企業が多いです。

〈難波〉大手企業が、もうかってはいるけれども危機感があることはとても大事なキーワードです。その危機感が、新しいことやいろいろなことを掛け合わせていく仕掛けに、アクセルを掛けていくことになります。地方の企業こそ、持っておかなければいけないことだと思います。

－－お二人にとってＳＤＧｓとは。

〈廣澤〉地域資源に付加価値を創造し、提供することだと考えています。僕の中で地域資源は人、もの、こと、場所、技術、すべてだと思っています。
それらを掛け合わせることで地域がつながり、その地域がつながってできあがったものを地域外に売っていく。そうすることで地域外からのお金を稼ぎ、地元や地域に貢献できます。

〈杉田〉パートナーシップだと思います。スペインの思想家で哲学家のオルテガが「私は、私と私の環境である」という言葉を残しています。この環境が救えないのであれば私をも救えないということを意味しています。つまり、周りの環境と自分は一心同体なのです。これからも難局を乗り越えていかなくてはいけないと感じます。

（おわり）

◆提供…旭化成、グローバル・クリーン

□再放送□２２日午後８時、２５日午前１１時からの２回

□第２２回の内容□
〈テーマ〉「今こそ知りたい！『地の利』を生かした再生可能エネルギー」
〈ゲスト〉旭化成延岡総務部の繁昌久哲さん
〈放送日〉来年１月１９日午後１時から
〈再放送〉来年１月２６日午後８時から、同２９日午前１１時からの２回