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絵本と大人をつなぎたい

本紙掲載日:2023-01-13
6面

絵本セラピスト・松田朝子さん(延岡市)

 絵本は子どもが読むもの―。そのようにイメージする人が多いだろう。しかし今、絵本を読んだり絵本のイベントに参加したりする大人が増えている。県内で活動する「絵本と大人をつなぎ隊」(8人)の代表で、絵本セラピスト協会認定絵本セラピストの資格を持つ松田朝子さん(67)=延岡市北一ケ岡在住=は、大人に向けた絵本の読み聞かせを県内各地で行っている。活動内容や絵本の魅力などを聞いた。

◆癒やし、気付きがもらえる−人生経験による感じ方の違いが楽しい

 絵本セラピーとは絵本を介して大人に癒やしや気付きを得てもらい、心をリラックスさせること。同協会の絵本セラピストは国内に約1200人いるが、県内は松田さんただ一人という。

 松田さんは3年半前から大人のための絵本の読み聞かせを主体にして活動をスタート。高校や大学に出向き、授業の一環として読み聞かせている。最終的な目標は、将来、親になる生徒や学生が自分の子どもに読み聞かせができるようになること。「子どもが絵本に出会うきっかけは大人がつくっている」と考え、大人が体感した絵本の楽しさを、子どもに伝える流れをつくってほしいという願いも込めて授業を行っている。

 昨年は、絵本で県内の人々の心をつなぎたいと、「みなみのくにの旅する絵本」と題するイベントを開催。絵本を通して幸福度の高い社会づくりを考える団体・えほん未来ラボ(濱崎祐一代表、所在地非公開)が、絵本の面白さを多くの人に伝えたいと行っている「旅する絵本」の思いを受け継いで行った。

 「みなみのくに―」の仕組みは、▽読んでほしい絵本に旅の記録カードを貼り付けて誰かに手渡す(絵本の旅立ち)▽受け取った絵本を読んで、記録カードに感想を書く▽写真やコメントをSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)で共有する▽2週間以内に次の人に手渡す▽これらを数回くり返した後、半年後に絵本が持ち主に戻る―。しかし、絵本が戻ってこないケースがあり、現在は仕組みを見直すために中断。来年度からの再開を目指している。

 松田さんは「絵本そのものは子どもの本ですが、大人なりに楽しむことができます」と話す。子どもは絵本の世界に入り込んで物語を楽しむが、大人になるとそれは難しくなる。人生経験と照らし合わせて読むようになり、絵本の感じ方が人それぞれに違ってくる。それが楽しさになるという。

 「たくさんの大人の方々に絵本の楽しさを体験してほしい。また、大人のための絵本の読み聞かせをする機会を頂けるとうれしいです」と松田さん。同協会の目標は「絵本で世界平和」。この目標に向かって松田さんはこれからも絵本で子どもだけでなく大人も笑顔にしていく。


【一年の始まりに読んでほしい絵本】

 新年にお薦めの絵本を松田さんに聞きました。子どもに限らず、大人の皆さんも絵本を読んで癒やされてみませんか。

◇あさになったのでまどをあけますよ−荒井良二作・絵偕成社

「あさになったのでまどをあけますよ」という掛け声とともに窓を開けると、そこにはいつもと変わらない景色とありふれた日々の暮らしがあります。しかし、その中にこそ生きる喜びがあると伝えてくれる絵本です。
新しい朝、部屋の窓を開けて「やっぱりここが好き」とつぶやいてみましょう。きっと幸せな一年が始まることでしょう。


◇スマイルショップ−きたむらさとし(作)・岩波書店

大勢の人が行き交う冬の街角。買い物をしようとワクワクしながら歩いていた少年は、お小遣いを溝の中へ落としてしまいます。しかし、そのおかげで少年はお金では買えない幸せを知ったのです。
新しい年の始まりに本当に大切なものとは何かを教えてくれる絵本です。皆さまにとりまして、笑顔あふれる一年となりますように―。

【この他のお薦め】
◇最初の質問−長田弘(詩)・いせひでこ(絵)・講談社

◇はじまりの日−ボブ・ディラン(作)・ポール・ロジャース(絵)・アーサー・ビナード(訳)。岩崎書店

◇たいせつなこと−マーガレット・ワイズ・ブラウン(作)・レナード・ワイスガード(絵)・うちだややこ(訳)・フレーベル館

◇おしょうがつのかみさま−おくはらゆめ(文・絵・作)・大日本図書

◇おもちのきもち−かがくいひろし(文・絵)・講談社

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