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藤高霧島さん8回目、西村玄洋さんと立石加志子さん初めて
日展(日本美術展覧会)の2022年度の展示会が、昨年11月に東京都の国立新美術館で開かれた。全国から8576点が寄せられた書部門では、県内から8人が入選。県北からは五ケ瀬中等教育学校教諭の藤高霧島=本名・祐太朗=さん(38)が8回目、延岡市瀬之口町の西村玄洋=同・寿洋(としひろ)=さん(58)と日向市北町の立石加志子さん(71)が初めての入選を果たした。
◆藤高霧島さん−その土地の魅力表現したい
今回の入選で日展会友の認定基準を満たした藤高さんは「毎年入選を目指して書いています。国内最高峰の展示会なのでうれしいです」と喜んでいる。
出展作「神楽歌」は、国指定重要無形民俗文化財である「高千穂の夜神楽」の奉納で歌われる詩を抜粋したもの。漢字仮名交じりの調和体を用い、縦2尺(約60センチ)×横8尺(約240センチ)の和紙に26字を配置した。
高千穂町三田井出身。地元の中川登神楽保存会で奉仕者(ほしゃ)と呼ばれる舞い手を務めていた父克彦さん(70)の影響で、幼少から神楽に触れる機会が多かった。
進学を機に故郷を離れた時期もあってか、「昨年ごろから神楽に対する興味を強く抱くようになり、教わろうかと父に相談もしました。今回出展した作品は、神楽が息づく土地に縁を持つ人しか選ばない題材だと思うんです」と微笑。
師であり、県内の書家唯一の日展会員でもある陣軍陽さん(宮崎市清武町)の叱咤(しった)を受けつつ、点画の向き、行間や字中の余白、にじみやかすれにまでこだわった。
昨年8月と10月に開いた個展の準備や日々の業務とも並行し、約3カ月を出展作に注いだという。
「今までは自然をモチーフにした作品が多かったのですが、今後は神楽を題材にした作品にも力を入れたいと思っています。書道を通して、伝統文化や、その土地に住んでいるからこそ感じられる魅力を表現したいです」と語った。
◆西村玄洋さん−筆の丸さを駆使する線質へ
西村さんが結果を知ったのは、母親で師でもあった和香さん(享年82)が亡くなった4日後だった。「母が最初に入選したのは60代後半だったから、10年ぐらい早くもらった。母からのプレゼントのような気がする。『今から頑張れよ』と後押しをしてもらったのかな」とほほ笑む。
10歳で書道を始め、順に西田玄豊、近藤祥雲、西村和香、大重筠石(いんせき)、伊藤一翔の各氏に師事。「母と妹(同じく書家の一華さん)、私の3人で切磋琢磨(せっさたくま)してきた」
日展挑戦は40代以降、自身の年間スケジュールの一つ。「とにかく締め切りまで一生懸命書く」が信条だ。
入選作は杜甫の漢詩「晩秋陪嚴鄭公摩訶池泛舟」(晩秋に嚴武が摩訶池=まかち=に舟を浮かべて遊んだ時、お供をして詠んだ詩)。「達成感はあったが、手応えがあったというわけではなかった」という。
一方で「線質が少し良くなった」とも感じている。目標とする線質は大重氏の言う「筆の丸さを駆使する」。「5人もの師に学んだことで視野が広がり、字の流れや線の強さを考察しながら人の作品を見られるようになった。それらを自分の字に取り入れていきたい。まだ希望。未完成なんです」と謙虚。
和香さんが主宰していた書道会を継いだ。「子どもたちや定年退職で時間のできた人に書道の楽しさを伝え、延岡の書文化の向上に、わずかながらでも寄与できれば」と抱負。
◆立石加志子さん−行の流れ自由に操りたい
「入選の連絡が信じられず、間違いじゃないかと思った。師や仲間のおかげ」。立石さんは5回目の挑戦で念願の初入選を果たした。
書道を始めたのは12年前。年賀状をきれいな字で書きたいと思ったことがきっかけだった。師の中室舟水さん(広島市)が新設した宮崎市の書道教室を紹介され、「仮名のみやびで流麗な美しい文字に心引かれた」と入会を即決。「奥深さに魅せられ、のめり込んだ」と練習の基本である臨書に打ち込んだ。
入選作品は「三十六歌仙抄」。平安時代の歌人が詠んだ和歌35首を半紙14枚に書いた。全体で縦32センチ×横4メートルの大作。何度も推敲(すいこう)を重ね、完成までに約3年かかったという。「見る人が吸い込まれるような景色を書で表現したかった」と立石さん。「どうやったら、もっと良い作品になるのか。その奥深さを痛感し、自身の限界を感じ挫折しそうな時もあった」と振り返り「師の指導、仲間の助言もあり、何とか完成にこぎ着けた」と感謝する。
「細い線をきりりと書くのが難しい」と課題を挙げ、「昔の人の筆の運び、心の在りようを感じることが目標。毎日書いていると、ある日、このような心の在りようで筆の運びでできるんだと発見することがある」と日々の楽しみを語る。
「これからが出発点。さらに精進しないといけない。もっとしっかりした線を書き、行の流れなどを自由に操りたい」と抱負を語った。