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乳がん・治療続けながら前へ

本紙掲載日:2023-05-23
2面

タレント・声優−矢方美紀さん講演

◆日本郵便県北部地区連絡会がセミナー

 日本郵便県北部地区連絡会による「がん検診啓発セミナー」が13日、延岡市の野口遵記念館で開かれ、乳がんの治療を続けながらタレント、声優として活躍する矢方美紀さん(30)が「乳がんになっても前を向いて」と題して講演、自らの経験を通しての気付きなどを語った。

◆意識の芽生えが早期発見に

 矢方さんは大分県出身で、アイドルグループSKE48の元メンバー。25歳で乳がんに罹患(りかん)し、治療しながら仕事を続けている。

 乳がんが発覚したきっかけは2017年、芸能人が若年性乳がんで亡くなったニュースを見たこと。「今まで、早く見つければ治る病気と思っていたが、若年性乳がんという言葉、実際に亡くなった人がいることを知り、『気を付けないといけない』と意識が芽生えた」と振り返った。

 そこでセルフチェックをしたところ、しこりらしきものを発見。痛さを感じなかったため病院に行くのをためらったが、周りの人に相談し、知人の付き添いで受診し、早期発見につながった。

 しかしその後、リンパ節への転移なども分かり、左胸切除などの手術、抗がん剤やホルモン治療、放射線治療などが必要になった。この時、医師から迫られたのが卵子凍結するかの決断。「今ではなく、先のことを考えて判断しないといけないのかと驚いた」という。

 また、当初は「仕事ができなくなってしまう」と思ったが、1週間ほど入院し、2週間後に復帰してからは大きく体調を崩すこともなく仕事が続けられている。「仕事をすることで、病気やつらい治療を忘れることができ、仕事をするために治療を頑張ろうという気持ちになっている」と、仕事が治療の支えになっていることも紹介した。

◇金銭的負担大きく−保険など「備えが安心に」

 一方、金銭面での苦労も。再発のリスク、右胸が乳がんになる可能性などが分かる遺伝子検査は当時20万円ほど。家族と相談し受けることができたが、「レストランに行けばメニューに価格が書いてあるが、病院に価格表はなかった。金額が高すぎて心配になった」と当時の心境を紹介した。

 矢方さんの場合は保険に加入していたため、保険でカバーできた部分も大きかったが、金銭面の負担は感じたという。保険について「安心感もあったが、受けたい治療を受けられたのが一番。いつどこで何が起こるか分からない。備えが自分の安心や、やりたいことにつながる」と強調した。

 この日はメディポリス国際陽子線治療センターによる陽子線治療についての説明や、乳がんモデルなどの展示もあった。

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