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LL サイズ
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1枚 1,200円
(ラミネート加工は300円追加) |
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民俗学の宝庫−延岡
◆今を記録することが重要・家族アルバム、ささいな暮らしも
延岡史談会(甲斐典明会長)の第1回公開講演会はこのほど、延岡市社会教育センターであった。文化人類学の専門家で、同会の会員でもある渡辺一弘さん(57)が、「民俗学の宝庫、延岡」と題して講演。県内のシャーマニズム(原始宗教)、歴史学と民俗学の違い、延岡の教育者で郷土史家小嶋政一郎氏(1893〜1977)の功績などに触れて「民俗学には、世間話などささいなことを当然と思わず、記録していくことが重要」と話した。
渡辺さんは宮崎市出身・在住。鹿児島大学大学院を修了後に2年間、県史編さんに携わり、「民俗2」第6章第7節「神仏をとりつぐ人々」などを執筆した。戦中・戦後の国民生活上の労苦を伝える昭和館(東京都千代田区)に20年勤務。現在、日南看護専門学校などで非常勤講師を務めている。
地元とのつながりが深いシャーマン(祈とう師、おがみやさん)は、県内では延岡市が一番多いという。その一人が、桜ケ丘の蛇谷霊場の世話をしていた夏田喜代子さん(1930〜2017)。夏田さんは、荒れ果てた蛇谷が夢に現れたことをきっかけに、参拝や掃除をするようになった。夢を見始めて急に腰が痛くなったが、参拝するための風呂敷を買った途端に回復したという。
また、延岡市北浦町古江の天野神社、諸塚村の吉野宮神社などを例に挙げ、「たたり伝説」が民俗学にとって重要なものだと話した。
「庶民の歴史は、文字を書ける人がいなかったから文書にならなかっただけで、歴史自体がなかったわけじゃない。伝説の中に事件がとどめられていると考え、その背景や広がりを研究するのが民俗学」
歴史学との違いは「過去のある時間を切り取って研究するのが歴史学。民俗学は、たたりが起こらないように続けられている祭りの背景にあるものを、現代からさかのぼって研究するもの」と説明した。
延岡市では、過去に郷土雑誌「延岡春秋」、夕刊ポケット新聞社発行の「郷土展望」、新聞は「延岡新聞」「夕刊ポケット」、そして今も「夕刊デイリー」が発行されている。小嶋氏は各誌・紙に多くのエッセーを投稿し、「延岡のことば」「延岡百景、今と昔」などを出版した。若山牧水の旧制延岡中時代の同級生、泉毅一郎(いずみ・きいちろう)氏の「延岡雑談」、教師だった中川千雪氏の「熊野江風土記」など、市内には貴重な郷土資料が多いことを紹介した。
一方で「今を記録することが重要」と強調。収集すべきものとして家族アルバム、ささいな暮らしの記録、方言などの会話の記録、世間話の記録、民具の収集と使い方の記録、高齢者施設での聞き取り−を挙げた。
中でも家族アルバムは「膨大な歴史が眠っている。捨てずに取っておいてほしい」。
方言については「今使っている言葉と、昔の言葉を話せるのであれば、それを記録しておく。『研究者が記録する』と言うとかしこまってしまうので、自分たちの世間話を録音してほしい」。
会員に対して「皆さんが記録していくものと、小嶋さんが記録したものを擦り合わせることで歴史が浮かび上がる。それが皆さんがこれからやるべき課題であり、だれでもすぐできること」と勧めた。
延岡史談会の公開講演会は全4回。次回は23日午後2時から同センターで、元日向市立図書館長の緒方博文氏が「官軍少佐迫田鉄五郎」をテーマに話す。
迫田は薩摩藩出身ながら、西南戦争の際は西郷軍の敵となり、西郷軍が可愛岳突破の際に戦死した。西郷史観とは異なる、迫田の視点から西南戦争を語る。受講は無料、資料代として200円必要。
第3回は9月10日「延岡上空B29撃墜と戦後の戦犯捜査をめぐって」(講師・渡邉斉己さん)、第4回は11月19日「故郷の山に埋もれた歴史を掘り返す」(講師・工藤寛さん)。開始時刻、会場、料金は4回とも同じ。