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ココカラSDGs−第31回「世界を旅する音楽家が向き合うサステナビリティ」

本紙掲載日:2023-10-26
6面

◆望む未来は自分でつくっていける−成澤さん
◆そこにしかないもの気付けるか−難波さん

 今注目のSDGs(エスディージーズ)をテーマに、地域や地球の未来を共に考えるFMのべおかの番組「ココカラSDGs」の第31回「世界を旅する音楽家が向き合うサステナビリティ」が、19日に放送された。内容を一部抜粋して紹介する。

 アドバイザーはSDGsコミュニケーターの難波裕扶子さん(51)=シンク・オブ・アザーズ代表、日向市亀崎西=。ゲストは音楽家の成澤けやきさん(48)=日向市東郷町=。なお、収録は11日に行われた。

▽提供:旭化成、グローバル・クリーン

□再放送□26日午後8時、29日午前11時からの2回。


−−今回のテーマは「世界を旅する音楽家が向き合うサステナビリティ」です。

〈難波〉日本でもよく「サステナブル」「サステナビリティ」「持続可能」「SDGs」といった言葉を目にするようになりました。
しかし日本は、石炭の利活用もプラスチックごみの量も先進国でトップレベルに多く、環境配慮へのアクションが遅れています。
サステナビリティ(持続可能性)に本気で取り組んでいるヨーロッパは、日本と何が違うのか。
今回はヨーロッパに吹き荒れるサステナビリティの風やその最新事情を、ヨーロッパを中心に世界を旅している音楽家の成澤さんにじっくりお聞きしたいと思います。

−−では成澤さん、自己紹介をお願いします。

〈成澤〉はい。私は4歳くらいまで大分県日田市で育ち、高校、大学、就職と東京で過ごしました。その後、10年ほど日本を離れたのですが、うち7年ほどはベルギーのブリュッセルに住んでいました。2020年に帰国し、宮崎県に移住しました。
本業はミュージシャンで、ヨーロッパにいた時は演奏活動と、楽曲を作って人に提供していました。日本に戻ってきてからは引き続き演奏活動も続けながら、日本のために力になれることがあればと思い、現在は日向市東郷町で「勝手に地域おこし協力隊」と名乗って、音楽イベントやオーガニックマーケットなど、いろいろなイベントを主催しています。

−−なぜ東郷町に移住されたのですか。

〈成澤〉よくいろいろな人から聞かれます。4歳まで住んでいた大分県日田市の記憶がずっと心の原風景として残っていて、田んぼがあったり、その田んぼの稲穂が夕日に照らされて光り輝いていたり、そういう記憶がずっと心に残っていました。
それで、いつかは九州に住みたいと思っていて、いよいよヨーロッパから日本に本帰国するのに合わせ、九州内を演奏しながら回って、どの土地に住もうか下見をしました。
たまたま日向市で演奏させていただく機会があって、その次の日、東郷町のある大きな古民家と縁ができ、そこにそのまま住むようになりました。
初めは仮住まいをさせていただきながら、そこの日本庭園の剪定(せんてい)や家の中の片付けを手伝い、別の本拠地を探そうと計画していました。
ところがコロナ禍の影響で、その後予定していたヨーロッパでの演奏活動が全部キャンセルになってしまい、にっちもさっちもいかなくなった中、その古民家のオーナーさんから「コロナ禍が落ち着くまでいていいよ」と言っていただきました。
近所に無農薬で野菜を作る方がいらっしゃって、その方に教わりながら野菜作りをしたり米作りを始めてみたりする中で、気付いたら仲間が増えていって一緒にオーガニックマーケットなどを開くようになりました。

−−いつから音楽家として活動されているのですか。

〈成澤〉音楽だけで生活するようになったのは2009年です。それまでは会社員として東京で働きながら、休みの日や週末だけ演奏したりイベントを主催したりしていました。
アフリカのジャンベという太鼓にほれ込んで、現地で習ってみたいと思って10年にアフリカに行きました。その後、イギリス、オーストラリア、アイルランド、インドネシアを巡る旅を4年ほど続け、ベルギーのブリュッセルに住み
始めました。

−−ヨーロッパで取り組まれているサステナビリティについて、どう感じますか。

〈成澤〉例えば昨年、演奏でスイスの首都ベルンに滞在したのですが、SDGsの17の目標に対して「ベルンはこういったことに取り組むよ」と決めているんですね。
子どもたちが興味を持ち続けられることを提供し続けるとか、音楽のフェスティバルでは舞台美術や照明のパーツ一個一個が持続可能なもので作られているとか。すごく面白いなと思うし、とても深く考えられていると感じます。

〈難波〉それがルールとして成立しているということは、街が成熟しているということ。何が大事なのか、その本質を知っている社会だなと思います。
日本は世界の中でも、SGDsという言葉をよく知っている国ですが、SDGsの本質を知らない国でもあります。それをどう組み換えていけば良いのか。ヨーロッパには見習う点が多くあります。

〈成澤〉今年は夏にフランス、スイス、ベルギー、オランダに行ってきました。驚いたのはヨーロッパ、EU圏内のほとんどの国で緩やかではありますが、人口が増加していることです。
島国である日本と違って陸続きの国々は、自分の国や人種や民族を守るには何が必要か、とてもよく分かっています。
彼らは食べ物を自国で作ることは国を守ることだと考えていますし、子どもを増やすこと、子どもに質の高い教育を提供することは国を守ることだと知っています。
食べ物を採り続けていくためには、山や海の生態系を守っていかなくてはいけないということを自然に考えています。そういう意味でサステナビリティの意識は高い。これは国を守ることにも結び付いているような気がします。
また、家族で食事をする時間をすごく大切にしています。日曜日には家族で集まってご飯を食べる、クリスマスは親族で集まってご飯を食べる。これって自分の土地、親族、文化圏を守ることなんですよね。その根本が家族で食事をすること。これ、どうしてなのか分かりますか。
家族の絆を深めることはもちろん、安全なものを共有して食べる場を最後の安全圏として、それを家族の食事で保っている。そして、その安全圏を守るために互いの状態を確認し合うのです。

−−成澤さんはディジュリドゥという珍しい楽器を演奏されます。

〈成澤〉もともとはオーストラリアの先住民アボリジニの方々が儀式の時、祭りの時に使う神事ごとの道具です。シロアリが食べて中が空洞になったユーカリの木を、切って吹いて使うもので、長さは大体1メートル、長いものだと2メートル弱あります。
現在は木だけではなく竹、メタル、FRP(繊維強化プラスチック)などいろいろな素材で、いろいろな人たちが世界各国で作っています。
この楽器はヒーリングにも使われていて、アボリジニの方々は吹き口と反対側の音が出てくるところを相手の胸に当てて、その振動を体に伝えます。ヨーロッパでは楽器の振動を浴びて全身を癒やす「サウンドバス」にも、このディジュリドゥが使われています。

−−東郷町での取り組みを詳しく教えてください。

〈成澤〉月に1回、オーガニック農家が集まって「道の駅とうごう」でミニオーガニックマーケットを開催しています。そして年に1回、東郷町を中心としたミュージシャンが集まる東郷音楽祭や、木のつるやつた、石などを作品に見立てて展示する自然素材アート展をしたり、竹を切って楽器を作った後に演奏する子ども向けの演奏会をしたりしています。

〈難波〉穴を掘るイベントもありましたよね。

〈成澤〉自然素材アート展の一つで、東京から友人のアーティストが来て、参加者全員で地面にスコップで穴を掘りました。穴は直径2メートル、深さ1メートルでかなり大きく、掘るのに4時間くらいかかりました。参加者は最初の30分はわいわいしてましたが、1時間半を過ぎると全員が無口になり、ひたすら掘る人や全く掘らなくなる人もいました。
完成に近づくとみんなのボルテージが上がり協力するようになり、完成すると穴の中に寝転がって地球の中に自分が入り込んでいる状態で空を眺めるというイベントです。参加者はとんでもない充実感と少し高揚した様子で、浄化されたような顔で帰っていました。

〈難波〉触って見て聞いて食べる感じるといった五感を全部統括しながら地域をおこす活動をされているのですね。

〈成澤〉12月にはインドネシアのバリ島に行きます。バリでは祭りで竹の楽器が伝統的に使われています。楽器の作り方と演奏を学んで東郷町に持って帰り、地元の子どもたちと一緒に竹を切って楽器を作り、曲を練習して最後はみんなでコンサートを開く予定です。
竹害という言葉がありますが、それを竹財に変えたいです。地元の素材が子どもの想像力を伸ばすこと、身近なもので一つの目標に向けてみんなが協力できることから、これは持続可能な活動だと思います。

〈難波〉地域をおこすというと、お金や誘致など大きなものが必要なイメージがあります。それは地域おこしの一つの方法ではありますが、成澤さんの場合は文化や自然でまちを豊かにしていき、人が人をつなげて人を呼ぶ地域おこしをしています。
地域には何もないわけではなく、そこにしかないものに気付けるかどうかが大事です。そこに気付けると、あしたはいい日になるはずだと信じられる日々を送れるようになると思います。

−−成澤さんはもともと、音楽大学に通っていたのですか。

〈成澤〉大学に進学して国際法を学びました。そしてコンサルティングの企業に就職し、社会課題や企業の課題をIoT(モノのインターネット)の技術を使って解決する計画を提案する仕事をしていました。
私は団塊ジュニアの世代です。大学を卒業後、就職して結婚するのが正しい道だと育てられ、その道をたどっていました。しかし、30代になった時に自分の人生を自分でかじ取りしたいという思いがどんどん強くなり、小さい頃から好きだった音楽だけで生計を立てられるようになってみたいと退職しました。

〈難波〉成澤さんと私は出前授業もしています。子どもたちから学ぶことは非常に大きく、私を変えてくれたのは子どもたちです。恩しかありません。
私は大人と話す中で迷いが生まれることがあります。迷いがある時にタイミングよく出前授業があり、目の前にいる子どもたちを見て、「この子たちのために頑張ろう。だから独立したんだ」と再確認しています。出前授業は足元をもう一度原点に戻してくれる大事な場所です。

〈成澤〉9月に都農町立都農東小学校で出前授業をしました。ディジュリドゥの体験や民俗楽器を紹介してみんなで演奏しました。子どもたちはものすごく目をきらきらさせて興奮していました。いろいろな種類の楽器を持って行きましたが、子どもたちがわくわくしながらうれしそうに楽器を触っていて、心が洗われました。子どもたちのピュアな反応が見られてよかったです。

−−日本の教育に望むことはありますか。

〈成澤〉どのような子どもも創造力を持って生まれてきていると思います。創造力を伸ばすことは、大人になってゼロから何かを作り出したり日常の中から新しい価値を見いだしたりすることにつながります。
それでは創造力はどのように培われるのか。それは見たことのないものを見る、聴いたことのないものを聴く、行ったことのないところに行くなどさまざまです。そうすると脳が刺激されて自分の認知する範囲が広がり、これが好き、嫌いといったものの価値を自分で気付けるようになります。
大人が子どもにできることは、子どもがアハ、ワオと思うような体験をいかにさせてあげられるのかです。大人が子どもを制限するのではなく、いかに創造力を伸ばすようにするのかといった視点で考えたカリキュラム、プログラムが日本の教育で増えたらいいなと思います。

−−最後に、皆さんに伝えたいことはありますか。

〈成澤〉仲間や先輩から指導を受けてきた中で言われた「望む未来は自分でつくっていけるんだよ」という言葉を、いつも思い出すようにしています。
世の中に何かしらの課題があるのは当たり前です。その課題をどうやって次に進めていくのか、どういう視点で進めていくのかを考え、未来の目標を共有して次のステップに進んでいく意識が大事です。

〈難波〉成澤さんの話に対して私たちがどれだけ目覚めることができたのか。私たちはまだ目覚めていないような気がします。目覚めて初めて自分は望む未来を自分で獲得することができます。それが仲間につながっていきます。私たちは小さいかもしれませんが力はあります。

(おわり)

□第32回の内容□
〈テーマ〉「ここでしかないもの・地方資源由来のサステナブルをつくる」。
〈ゲスト〉杉本商店(高千穂町)代表の杉本和英さん、LOCALBAMBOO(延岡市)代表の江原太郎さん。

〈放送日〉11月16日午後1時から

〈再放送〉11月23日午後8時、26日午前11時からの2回

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