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100年の歴史に幕

本紙掲載日:2021-08-12
3面
100年の歴史を守ってきた2代目の吉田稔さん
7月末で閉店した吉田文具店。まちの文具店として市民に親しまれてきた

大正時代に開店吉田文具店−日向市本町

◆「多くの出会いに感謝」

 まちの文具店として市民に親しまれてきた日向市本町の「吉田文具店」が7月末で閉店し、97年の歴史に幕を降ろした。約100年の歴史を持つ老舗の閉店に、多くの市民からは惜しむ声が聞かれた。

 「吉田文具店」は、2代目で代表取締役の吉田稔さん(81)の祖母、故文子さんが1924(大正13)年に同町で開いたのが始まり。73(昭和48)年に東京から稔さんが、妻のしづ子さん(73)ら家族と帰郷し店を引き継いだ。その後、79(昭和54)年に現在地に店舗を新築。約半世紀にわたり営業してきたが、日向市駅周辺土地区画整理事業に伴う店舗解体、稔さんの高齢化などを理由に閉店することを決めた。

 稔さんは同町出身。富島高校卒業後に上京、東京の大学を卒業し、就職していたが、祖母・文子さんが高齢となり後を継ぐために日向に帰郷した。以来、店舗での営業のほか、市内外の公立学校、企業を回り、しづ子さんと二人三脚でのれんを守ってきた。「もうけようとは、思いもしなかった。利益がなくても良いものを提供し、困っている人を助けることだけを考えてきた」と稔さん。

 東京の仕事で身に付けた技術力を生かし、自店で販売した商品以外も気軽に修理を請け負った。「困ったときは、吉田さんに」とお客さんから頼りにされ、顧客のネットワークも広がった。「ノート1冊でも配達したり、アフターサービスにも力を入れた。助かったと言われるのが励みになった」と振り返る。

 昔のにぎわいを取り戻そうと、まちの活性化にも取り組み、さまざまな役職も歴任した。日向十五夜祭奉賛会の会長を務め、ユニークなアイデアを練って祭りを盛り上げた。本町商店街振興組合の組合長としては、日向市駅鉄道高架事業、中心市街地活性化などまちづくりに積極的に協力した。

 40年以上の付き合いがあるという日向市在住の70代男性は「なじみの店がなくなり、本町の景色が変わっていくのは寂しい」と残念がった。

 「たくさんの思い出があり、多くの皆さんに支えられてきた。まちなかの灯を消してしまうのは申し訳ないが、(稔さんが)元気なうちにと決めていたようです」としづ子さん。稔さんは「60歳でやめよう、70歳でやめようと考えていたら、気がついたら80歳を超えていた。皆さんには本当にお世話になった。多くの出会い、思い出に感謝したい」と笑顔で話した。

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