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新型コロナ拡大防止対策−緊急シンポジウム(2)

本紙掲載日:2021-09-03
3面
第5波の感染状況を説明する県福祉保健部の重黒木清部長

困難な封じ込め−感染爆発、最強の変異株

◆マスクしなければ簡単にうつる

 「これまでなら(夜間の接待を伴う)飲食店に営業時間の短縮を要請すれば1、2週間で効果があったが、現在は減っていない」。新型コロナウイルス感染対策で県の司令塔を担う重黒木清県福祉保健部長は、ウイルスがほぼ「デルタ株」に置き換わった第5波の封じ込めの困難さを語った。

◆「デルタ株」の脅威

 県内で過去に、1日当たりの新規感染者が100人以上報告されたのは、第3波が広がった今年1月の1回のみだったが、この第5波ではすでに計11日間も2桁台を突破。8月20日には過去最多の158人が報告されるなど爆発的に感染が拡大し、同月1カ月だけで計2259人と、一気に県内累計感染者数の4割以上を占める数字となった。

 重黒木部長は、非常に強い自粛の呼び掛けに反して夏休みに県外から帰省した人が多く、若者同士の集まり、その後の家庭内で感染が広まるなどしてウイルスが拡散したと分析。感染者の過半数は行政検査で追跡できているとしたが、それを上回る速さで拡大している実態が明らかになった。

 県北地域の調整役を担う県新型コロナ調整本部の佐藤圭創特任医師はデルタ株について、「これまでに出てきている変異種の中で最強」と断言。感染力は第4波までに流行したアルファ株の2倍以上で、水ぼうそうに匹敵し、感染者1人に対する濃厚接触者の数は5、6人に上るという。

 インフルエンザと比べても4、5倍の感染力があり、「マスクがなければ簡単にうつる」と強調。ここに来て顕著になったのが、非常に子どもへ感染しやすい点で、家庭内感染が増加している主な原因になっていると報告した。

 免疫学的にもアルファ株までと違い日本人も悪化しやすいウイルスに変異しており、発症から10日経過した後でも重症化することがあると説明。また、急性胃腸炎や感染性胃腸炎と診断されて、実は新型コロナと判明するケースが増えており、「おなかの症状が出たときは感染が疑われる」と直近の症例を紹介した。

 入院のリスクもアルファ株より2倍高く、シンポジウム当日も、入院して10日たった感染者の血中酸素濃度が急落したという。さらに、20代や30代の感染者にも肺炎がかなり増えていると、デルタ株の脅威を語った。

◆1、2人から爆発的感染例も

 延岡保健所の救仁郷修所長も、県北で確認されている爆発的な感染事例の一部は、ほんの1、2人から拡大したとみられる追跡調査の速報を報告。お互いマスクを着用していながら、短時間、同じ車に乗っていただけで感染した事例も見受けられるという。

 佐藤医師はまた、7月後半〜8月30日に県北でデルタ株への感染が確認された患者のうち、0〜19歳の割合が全国平均と比べてかなり多かったと説明。中でもワクチン接種の対象でない12歳未満が増加しているとして、「学校再開により再びこの年代から拡大する可能性が高い」と指摘した。

 その裏付けとして佐藤医師は、「子どもは大人よりもウイルス量が圧倒的に多く、下手をすれば1000倍くらいある」との知見を提示。子どもは感染免疫が不完全なため、感染しても抗体反応、つまり症状がなかったり軽症の場合が多い半面、知らず知らずにウイルスを拡散してしまう恐れがあるというのだ。

 子どもがいる家庭では妊娠している母親の割合も多いとして、今後は妊婦の感染が増えていく可能性も示唆。さらに、デルタ株は2回目のワクチン接種を済ませた人に、いわゆる「ブレークスルー感染」することがあると分かっており、学校を感染源とする再拡大を懸念した。

 それでも大半のワクチン接種が完了した高齢世代の感染者は確実に減少し、「感染しても非常に症状が軽い」と説明。接種を迅速に進めつつ、新変異種を含む新たな感染の封じ込めに備える必要性を呼び掛けた。

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