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2年ぶり天下一薪能

本紙掲載日:2021-09-17
3面
会見する松下宏理事長(左から2番目)、片山九郎右衛門さんら(右隣)

10月9日、延岡総合文化センター

◆片山九郎右衛門さんが会見−コロナ禍だからこそ伝えたい思いある

 10月9日に延岡市の延岡総合文化センター大ホールで行われる「第24回のべおか天下一薪能(てんがいちたきぎのう)」を前に、同薪能に出演する観世流能楽師シテ方・片山九郎右衛門さん(56)が16日、主催するNPO法人のべおか天下一市民交流機構(松下宏理事長)の関係者と市役所で会見を開いた。苦渋の決断となった会場変更の経緯や「つなぎ、つながり合ってきた」25年間を振り返り「コロナ禍だからこそ伝えたい思いがある」と、2年ぶりとなる同薪能への思いを語った。また、前日の15日には同市のカルチャープラザのべおか多目的ホールで、同薪能に出演する市内在住の小学3年生〜高校2年生5人を直接稽古し、その様子を公開した。

 同薪能は1997年から毎年続けられており、昨年は国文祭・芸文祭みやざき2020分野別フェスティバルの一つとして予定されていたが、新型コロナウイルスの影響で演目などはそのままに1年延期された。

 また例年、約千人の市民ボランティアが参加し、1カ月以上かけて延岡城址(し)二の丸広場に会場を設営してきたが、今回は感染拡大が続く中、「作業は困難」と判断。1日、雨天時も開催可能で換気システムも整っている同センターへの会場変更を決めた。

 演目の一つ能「橋弁慶(はしべんけい)」は、牛若丸と武蔵坊弁慶の五条大橋での出会いを描いた、よく知られる物語で、同薪能では初公演。今回は小学4年生から出演している下沖花萌(はるも)さん(17)=延岡星雲高2年=が牛若丸(子方)役を務め、弁慶(シテ)役の片山さんと共演する。

 15日は、最大の見せ場となる後半の激しい戦いの場面を中心に熱の入った一対一の稽古に挑んだ。

 地元の子どもたちの出演は「こども能プログラム」として2002年から取り組まれており、今回はリモートを交え、今年6月から同薪能に出演する観世流能楽師らと稽古を続けてきた。

 この日、片山さんとの初めての稽古を終えた下沖さんは、汗をにじませ「緊張しました。本番は思い切って、牛若丸らしく力強く演じたい」と話した。
会見で片山さんは「つなぎ、つながり合ってきた」と25年間を振り返り「中でも出演する子どもたちは、この薪能の大切な宝物。コロナ禍でもけなげに稽古に取り組む姿を見てとてもうれしかった。この薪能に関わらせてもらっていることに改めて誇りを感じた」。

 また「延岡の薪能には深い思い入れがあり、1年延期となった昨年は本当に無念だった。コロナ禍だからこそ舞台を通して皆さんに伝えたい思いがある。絶叫するだけが熱ではないことを、この薪能で示してみたい。私たち出演者だけでなく、お客さまの胸にも静かな炎をともしてもらい、つながりたい」と語った。

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