知事とのふれあいフォーラム分野版

本紙掲載日：2021-11-18

3面

医療従事者が知事に現場の実情と課題を語ったフォーラム

コロナ対応－最前線の７人が課題を確認

◆第６波、基本的な防止策を

　県は１７日、今年度１回目となる「知事とのふれあいフォーラム（こんにちは！河野です）」分野版を県庁で開いた。コロナにより１年ぶりの開催で、新型コロナ対応の最前線に立つ医療従事者ら７人が参加。第６波への備えと課題を確認し、「基本的な感染防止対策を続けること」と県民に訴えた。

　フォーラムは地域版とテーマを選んで対話する分野版がある。例年１０回程度開いているが、コロナの影響で分野版は昨年１０月以来の開催となった。

　知事は現場での奮闘に感謝した上で「尽力される皆さんと意見を交換するなら今というタイミング。体験、思いを次なる対策に生かしていきたい」とあいさつした。

　参加したのは、患者の入院調整に当たる宮崎大学医学部付属病院医師の落合秀信さん、訪問介護ステーションなどさまざまな現場の看護師３人。宮崎市消防局、県の保健師と、行政検査を行う県衛生環境研究所の薬剤師。

　看護師らが現場の実態として語ったのは未知のウイルスへの恐怖。特にワクチン接種前は「自分たちが感染してはいけない」と強い重圧を感じながら、患者に対応し、日常生活を送っていたという。

　県内の行政ＰＣＲ検査を一手に引き受ける県衛生環境研究所微生物部の杉本貴之部長は「所内で１人の陽性者が出れば、県内で検査が出来なくなる。職員は買い物、家族との触れ合い一つにも神経を使ってもらった」と明かした。

　１～５波で各機関が経験を積み、情報を更新していった参加者それぞれが、「当初は情報が錯綜（さくそう）し不安感が強かった。正しく新しい情報を基に改善しながら対応に当たってきた」と振り返った。

　杉本部長によると、衛環研では、感染の波の合間、沈静化している１、２カ月の間に研修を実施し、検査できる職員を増やすなど、次への備えを続けてきた。

　参加者が保健所への業務の集中を指摘。訪問看護師は「保健所からの陽性者に関する連絡メールは深夜に届くことも。切なくなるほど大変な思いをされている」と気遣った。

　今年３月まで日向保健所に勤務していた中央保健所健康づくり課の髙妻真子課長は「不安が憶測やデマを呼び、ＳＮＳなどを通して瞬時に拡散された。保健所の対応に関するお叱りの電話にも傾聴しながら、膨れ上がる感染者の数に圧倒されていた」と率直に語った。

　一方で、「陽性者が分かれば、その家族や同僚などの翌日の行動を止めることが感染の拡大防止につながる。夜１０時ごろまで電話で行動歴などを確認していたが、丁寧に答えていただくことで、新たな発生を食い止められた」と語った。

　第６波への課題としては、「重症化の予防と、療養者が急変した時のバックアップ態勢が課題。休日、夜間に対応してくれる医療機関が増えれば」と落合医師。宮崎市消防局の担当者も「陽性患者を受け入れる医療機関に加え、感染を疑う救急の傷病者を受け入れる医療機関のさらなる確保を」と求めた。

　また、感染管理認定看護師の養成や、地域の福祉・教育施設でゾーニング（区域分け）を学ぶ機会が必要との声もあった。

　県民へ向けては、基本的な感染防止を続けることで次なる波を遅く、小さくすることを共通して訴え。後遺症への理解、ワクチン接種を呼び掛ける声などが上がった。