電車内、ホームで大捕物

延岡駅と警察先駆けて訓練

◆もし、不審者がいたら

　東京・京王線の無差別放火・刺傷事件や九州新幹線の放火未遂事件などを受け、延岡警察署と延岡駅は２２日、実際に列車を使った合同の不審者対応訓練を実施し、万一への対処と連携を確認した。

　列車を降りた客から延岡駅に、「液体の入ったペットボトルを手にした不審な男性が列車に乗った。灯油の臭いがした」と電話があり、対応した駅員が直ちに１１０番通報。ホームに止めた列車では、犯人役と乗客役の警察職員がシートに座り、車内にある緊急用の「ＳＯＳボタン」が押されて延岡駅に緊急停止した場面から実践訓練した。

　犯人がいきなり立ち上がり刃物を掲げると車内はパニックとなり、刺股（さすまた）を手に駆け付けた２人の駅員が前後で挟み込むように威嚇しながら、乗客をホームへと避難させた。

　犯人はさらに興奮して刃物を振り回すなど抵抗したが、急行した警察官が体を張って周囲の安全を確保。犯人がホームに飛び出したところを取り囲んで制圧し、無事逮捕した。

　今回の訓練は、走行中の列車という密室を狙った事件に危機感を募らせた延岡駅が延岡署に申し出て、全国に先駆けて実現。訓練後には駅職員が警察官の指導で刺股の使い方も実習した。

　ＪＲ九州宮崎総合鉄道事業部は毎年、刺股訓練には取り組んでいるが、列車を用いた不審者対応訓練は初めてといい、同鹿児島支社の職員も見学して参考にしていた。

　延岡駅の有村哲治駅長は、「本番さながらの訓練でしたが実際にはもっと緊迫すると思うので、身近にある掃除モップで間合いを取るといった現実的な対応も練習していきたい。何かあればすぐに１１０番通報するよう駅員に徹底するとともに、利用客の方にもさらに周知したいと思います」と話した。