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語りへの招待−薗田潤子さんインタビュー

本紙掲載日:2022-01-17
6面

23日、延岡市で公演「スイート・ラバーズ」

◆コロナの時代だからこそ優しい物語を

 のべおか文化事業団は、23日午後2時から延岡総合文化センター小ホールで「語りへの招待〜スイート・ラバーズ」を開く。

 2002年に宮崎市で初公演以来、県内では16回目、延岡市では8回目。公演を始めた薗田潤子さん=宮崎市在住、元宮崎放送アナウンサー、現在フリー=に、公演の見どころ、語りの魅力などについて聞いた。

−−今回のテーマについて教えてください。

コロナでうつうつしている状況が続いています。強い、きつい話より、ほっこりした話がいいと、江國香織さんの短編集「つめたいよるに」(新潮文庫)を選びました。
大人の童話といった感じで、ちらっと涙が出たり、心がほっかりするような話ばかりです。つらい、不安な時代だからこそ、愛とか、不思議な話でほっこりしてほしいです。

−−5編はどのようなものを選びましたか。

全部で21編収録されています。候補はいくつもありましたが、出演者で話し合って決めました。
今公演の題でもある「スイート・ラバーズ」は、入院中で死を間近にしたおじいさんと、まもなく結婚する孫娘を中心としたお話です。人が亡くなるシーンでも、愛情を感じ、そしてどこか不思議な話です。私が語る「デューク」は、21歳の女性と愛犬を中心とした話。よくある日常生活に、愛がしっかりと入った話ばかりです。
ポスターにぶらんこの挿絵がありますが、「ぶらんこがあったな。ゆらゆらと揺れていたな」と、どこか懐かしい、自分の思いを投影する、そんな話を集めました。
自分が共感できるのが一番です。どれも共感できるものだと思いますし、自分の思い出のどこかと、一部重なる部分があるのではないかと思います。

◇ピアノの生演奏も

−−見どころを教えてください。

これまでは一人何分と時間を決め、それぞれが語る形を取ってきましたが、せっかく3人なので、別々に語るだけではつまらないと、最初と最後の作品2編は3人で役を分け、一緒に語ります。
また作品に合わせ、ジャズ・ピアニストの立石一海さんがオリジナル作品を演奏します。優しくてほっこりとした曲が多いので、楽しんでもらえたらと思います。
立石さんには何度も出演してもらっていますが、ピアノのリズムで気分が上がりますし、いつも助けられています。特に今回は、ピアノにぴったりの雰囲気だと思います。
コロナ禍でさまざまな制限がかかる中、改めて今、語ることの意味を教えてください。
音楽もそうですが、舞台芸術を楽しむことは不要不急だと言われます。ですが私は、大切なことだと思っています。
2000年以降、東京で「けやき会」として年に2回ほど公演を行っていたのですが、コロナ禍でできない状況が続きました。
昨年12月、久々に開催すると、東京の皆さんが「待ってたわ」「楽しみにしていたのよ」と、私たちを待ってくださっていました。そういう時間が欲しいんだ、大切なんだと改めて気付きましたし、そういう時間をつくりたいなと思いました。
家にこもっている時間が長引く中、少しでも違う時間を過ごし、気分転換になればうれしいです。

−−語りの魅力は何ですか。

本を読むのと、声、音で聞くのは別世界です。深めれば深めるほど面白いです。「風が吹いてきた」と言えば風が吹いている気がする。暑い夏の日の話をすれば、暑く感じる。空気が聞いている人に伝わる。そういう面白さがあります。
昔から物語というのは、口伝えによって今に伝わってきました。物語の原点は、物を語ることです。本を読むだけではない、面白さを伝えたいです。
最後に皆さんにメッセージをお願いします。
コロナの時代だからこそ優しい物語を。懐かしい青空のような雰囲気の時間になると思います。
ポスターにも書きましたが、不安な時代だからこそ「やわらかな愛を届けたい」。優しい気持ちになる、そんなひとときを楽しんでほしい。ゆったり、ほっこりしていただければうれしいです。


◆演目は江國香織作の5編−語り手3人による〃せりふ劇〃も

 公演は23日午後1時30分開場、同2時開演。チケットは一般2000円、大学生以下1000円。全席自由。

 今回は、深野弘子さん、串間太持さん、薗田潤子さんの3人が語り手として出演。立石一海さんがピアノでオリジナル曲を奏でる。

 最初に「草之丞の話」を3人で語り、串間さんが「桃子」、深野さんが「スイート・ラバーズ」、薗田さんが「デューク」を語り、再び3人で「鬼ばばあ」を語る。

 新型コロナウイルス感染予防のため、途中休憩を挟み換気を行う。2時間弱の公演。チケットは同センター、延岡市役所売店、TSUTAYA岡富店、西村楽器延岡店、門川町総合文化会館、日向市文化交流センターで販売中。問い合わせはのべおか文化事業団(電話延岡22・1855)まで。なお、感染状況によっては公演が中止となる場合もある。

【薗田潤子さん】けやき会に所属し、鎌田弥恵さんのもとで稽古を重ねた一方、地元宮崎でも語りを広めたいという思いで活動を続けている。藤沢周平、森瑤子、浅田次郎らの作品を好んで語る。

【深野弘子さん】テレビ朝日「オリジナルコンサート」、FM東京「若き音楽家たちの世界」など、多数のテレビ・ラジオ番組司会を務める。薗田さんと同じく鎌田弥恵さんに師事。「語り」をライフワークにし、けやき会、六紅樹の会、ひとり語りなど活動している。

【串間太持さん】宮崎県出身の役者。舞台、映画、テレビなど出演多数。2015年に宮崎民謡の「日向木挽き唄」をベースにした一人芝居「木挽きのほほえみ」を創作以来、日本、アメリカ、フランスなどで上演継続中。国内外で即興パフォーマンスツアーを展開している。

【立石一海さん】ジャズ・ピアニスト、作・編曲家、プロデューサー。大学在学中にプロ活動をスタートし、卒業後、レコード会社を経て独立。都内のライブハウスを中心に活動すると同時に数々のレコーディングに参加するほか、舞台の劇中音楽の作曲、演奏を担当するなど活躍中。

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