〃クラムボン〃の謎に迫る
本紙掲載日：2022-05-04
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アーサー・ビナードさん延岡で講演−ととろ三人の会
◆説さまざま、定義したらつまらない
延岡市を拠点に活動する読書ボランティア団体ととろ三人の会（山本裕見子代表）は４月２９日、同市祇園町のキャトルセゾンマツイで講演会を開いた。アメリカ出身の詩人で、絵本の翻訳なども手掛けるアーサー・ビナードさん（５４）＝広島県在住＝が講師となり、参加者約５０人に言葉の魅力や奥深さを語った。
題材は宮沢賢治の短編童話「やまなし」。カニの兄弟が谷川の底から見る生き物の世界を５月と１２月の２部構成で描いた作品で、この日は文中に登場する謎の存在〃クラムボン〃について考察した。
冒頭、自身が英訳し、絵本作家の山村浩二さん（５７）がイラストを担当した絵本を朗読。賢治が谷川の情景を表した「二枚の青い幻燈（げんとう）」という言葉に触れ「同じ『青』でも５月はブルー、１２月はグリーンを連想させる。日本語は面白い」と声を弾ませた。
続けて、クラムボンとは何かと問い掛けた。参加者からは「プランクトン」や「賢治がつくり上げた妖精のような存在」、「そういう名前の何かがあると思っていた」などさまざまな声が上がった。
ビナードさんは「『クラム』が『クラブ（カニ）』に通じることから、母ガニではないか」などの説を紹介。その上で「想像するのは楽しいけれど、定義を付けるとつまらない。言葉は意味よりもどう使われているかが大切」と結論付けた。
同市富美山町から参加した野��富男さん（６７）は「言葉の表面だけでなく、裏まで見なさいと言われているように感じた。物事について深く考える力を身に付けたい」と感想。
山本代表（６３）は「同じ言葉からでも感じることは人それぞれ違うと思う。異なる感性を大事にしながら『考える』ということについて考えてもらえれば」と話していた。