県北勢、大健闘

本紙掲載日：2022-08-08

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全国和牛能力共進会県代表牛決定検査会

◆西臼杵藤原、井植、佐藤さん－喜びの初出場「日本一を奪還したい」・４区

　１０月の全国和牛能力共進会（全共）鹿児島大会出場を懸けた県代表牛決定検査会が６日、小林市の小林地域家畜市場で行われ、西臼杵と延岡市を含む東臼杵の県北勢が大健闘。西臼杵からは８頭、東臼杵の１頭が代表の座をつかんだ。

　４区（繁殖雌牛群）代表が発表され、全共初出場を決めた３人は夢心地といった様子で喜びをかみしめた。

　牛のポテンシャルを信じて戦ったという藤原さんは今大会が初出品。「西臼杵から一頭でも選ばれれば良いと思っていた。県代表が一つの目標だったが、正直、喜びよりも安心の方が大きい」と謙虚に笑った。

　同じく初出品の井植さんは、母と二人三脚で世話する「かわいい牛」が選ばれ感慨深げ。「うちの牛舎は設備が良いわけではないが、食べる量や便の状態など細かく目配りしながら管理している。代表の座を勝ち取れてうれしく思う」と喜んだ。

　佐藤さんは３回目の挑戦で念願の代表に選出された。日頃世話を手伝ってくれる息子４人に感謝し「今回は絶対に全国へ行きたかった。かっこいい背中が見せられて良かった」と安堵（あんど）の笑みを浮かべた。

　全共へ向けて佐藤さんは「和牛日本一の称号をもう一度宮崎へ」と力を込める。藤原さんと井植さんはチーム力の大切さを強調。総合３連覇を逃した前回大会を振り返り「一緒に頑張ってきた仲間の思いを胸に日本一を奪還したい」と語った。

◆高千穂の林さん、５大会連続「２カ月でのレベルアップが鍵」・３区

　３区（若雌２）代表を勝ち取った林さんは、結果発表後、西臼杵陣営で関係者たちの称賛を一身に浴びた。５大会連続の全共出場となるレジェンドは「浮かれている時間はない。残り２カ月でどれだけレベルアップできるかが鍵」と気を引き締めた。

　今大会は、自らの牛に加えて若手の育成にも注力。自宅で焼き肉を振る舞いながら勉強会を開いたり、無料通信アプリ「ＬＩＮＥ」で質問に答えるなど長年培ってきたノウハウを惜しみなく伝え、その成果が若手の躍進につながった。

　２区（若雌１）で優等６席を受賞した前回大会は、西臼杵で唯一の出場だったため、「今回は仲間と出場できるので楽しみ。私の（過去４大会の）経験も生かせると思う」と自信をのぞかせる。

　「宮崎は激戦区なので、十分に日本一を取れる力は持っている。個人的には前回大会のリベンジも懸かっているので、残り２カ月、牛の体調に気を配りながらベストな状態で臨めるように頑張りたい」と話した。

◆「てっぺん目指してやるだけ」延岡市の織田さん－３５年ぶり出場に涙

　６日の県代表牛決定検査会では、延岡市石田町の織田直行さん（３９）が東臼杵として１９８７（昭和６２）年の島根大会以来３５年ぶりの出場を果たし、「うれしい」と涙と汗を拭った。見守った東臼杵の関係者は祝福の言葉と拍手を送り、２カ月後の全共鹿児島大会に向けてさらなるサポートを誓った。

　織田さんは検査会までの約２カ月間、栄養管理や美しさの維持などに神経をとがらせた。午前６時に起床し、午後８時ごろに終える。そういう日々を過ごした。全共に出場したことはない。目標達成のため「週２回ほどしていた」という大好きな釣りに、行くのをやめた。

　２日の６区に出品し、代表の座はつかめなかった。望みを懸けた６日の３区には、名だたる出品者がそろっていた。「気後れしていたかもしれない」。だが「牛を信じていたし、選ばれる自信はあった」

　自分の番号がアナウンスされると、涙が流れた。県代表が決まり、愛牛と審査場内を回る。東臼杵の仲間たちは祝福の拍手を送ってくれた。その姿を見て、うれしさが一層込み上げた。感謝の気持ちを込め、脱帽して頭を下げた。

　父淳一さん（６５）と母智子さん（６０）は、会場で結果を見届けた。代表に選ばれ「一生懸命な姿を見てきたので、２人で顔を見合わせて泣いてしまった。感無量だし、名誉なこと」。淳一さんは、息子の活躍を手放しで称賛した。

　東臼杵の関係者も「よし！」などと声を上げ、自分のことのように喜んだ。東臼杵郡市畜産農業協同組合連合会の藤本隆康会長は「全共出場にずっと挑戦してきたし、きょうまで選抜から１年以上かけて準備してきた。うれしい」と目を細めた。

　本番まであと２カ月。同連合会の白坂秀喜参事は「やっとスタートラインに立てた。関係機関の担当者や先輩方らの指導を仰ぎながら、サポートしていきたい」と誓い、「日本一を目指す」と意気込んだ。

　織田さんももちろん、思いは同じ。「牛に集中する」と釣りに行く気は毛頭ない。「仲間の思いを背負い、てっぺん目指してあとはやるだけ」。牛に本格的に関わり始めて１２年。ようやく手にした全国行きの切符を、無駄にするつもりはない。