夜神楽と現代アート

本紙掲載日：2022-11-30

7面

最古と最新美の共演－高千穂

　高千穂の夜神楽と現代アートの共演イベント「ＬｅｇｅｎｄｓｏｆＪａｐａｎＰｒｏｊｅｃｔ」（レジェンズオブジャパンプロジェクト）が９日、高千穂町押方の農家民泊よどんやどであった。地元の中畑神社神楽保存会（藤﨑康隆会長、１７人）による演舞と神奈川県を拠点に活動する絵師・髙橋憲助さん（４５）によるライブペインティングを隣り合わせで実施。町内の関係者ら約１０人が、最古と最新の織り成す美の宴（うたげ）を楽しんだ。

　インバウンド向けツーリズム事業などを展開する訪う（本社・同町三田井、日髙葵社長）と、新規企画の創出やマーケティング事業などに取り組むやまがたアルカディア編集社（本社・山形県長井市、船山裕紀社長）の共同プロジェクト。女性による「さと神楽保存会」会長でもある日髙社長（３４）が昨年１２月、共通の仕事仲間を通じて同編集社企画担当の佐藤拓也さん（４６）と知り合い、意気投合して実現した。

　イベントは、岩戸へ引きこもった太陽神・天照大御神（アマテラスオオミカミ）の気を引くため、常闇の世界で舞ったとされる天鈿女命（アメノウズメノミコト）を語り継ぐ「天岩戸開き伝説」をテーマに進行。中畑神社神楽保存会の奉仕者（ほしゃ）が、「鎮守」「武知（ぶち）」「手力雄（たぢからお）」「鈿女」「戸取（ととり）」「舞開（まいひらき）」の６番で伝説を追い、髙橋さんが、たいまつを掲げた八百万（やおよろず）の神々から喝采を浴びる鈿女の舞い姿を即興で描ききった。

◆絵と音楽を製品化－アーティスト支援、奉納へ

　絵は、日用品や掛け軸に印刷するなどして製品化する予定。また、世界中で活躍するＤＪ・ＫＥＮＴＡＲＯさん（４０）＝宮城県出身＝がこの日の神楽笛や太鼓の音源を使って曲を作る。それぞれ来年２月以降に受注販売し、収益をアーティスト支援や中畑神社への奉納に充てる計画という。

　来場者は、目の前で繰り広げられる神秘的な演舞とライブパフォーマンスに大満足の様子。インスタグラムによるオンライン配信もあり「素晴らしい環境で描いていますね」「現地で見たかった」といった称賛のコメントが多く見られた。

　家族５人で訪れた甲斐祥知さん（４０）＝同町三田井＝は「妻がさと神楽保存会に所属しているつながりで参加した。福岡県から今年Ｕターンしてきて、久しぶりの神楽はもちろん現代アートとのコラボレーションも素晴らしかった」と笑顔。

　日髙社長は「本物の神話と現代が交錯する画期的なプロジェクトだと思う。夜神楽、アーティスト、クラブカルチャーなど幅広いファンたちが出会い、交流を深めながら伝統や文化を盛り上げていくきっかけにつながればうれしい」と話した。

　高千穂の夜神楽は、氏神を神楽宿と呼ばれる民家や公民館へ招き、秋の収穫への感謝と翌年の五穀豊穣（ほうじょう）を祈願する伝統神事。毎年１１～２月、各集落の奉仕者が夜を徹して３３番の舞を奉納しており、国の重要無形民俗文化財に指定されている。