岩熊井堰の歴史学ぶ－東小

本紙掲載日：2022-12-27

7面

班のみんなでろう屋の狭さを体験

恐る恐るクスノキを嗅ぐ児童

用水の構造や藤江監物を知る

　延岡市立東小学校（濵砂一徹校長、５３１人）は１１月３０日、４年生７３人を対象に体験学習を行った。同校卒業生で同市出北在住の寺田勝彦さん（７０）を講師に迎え、地元の農業に大きな役割を果たしている岩熊井堰（いぜき）の歴史について学んだ。

　出喜多村（現・同市出北）は川と土地に高低差があるため水を引くことができず、「ヒバリの巣」と言われるほど荒地が広がっていた。今から２７０年以上前、延岡藩家老の藤江監物（ふじえけんもつ）は、農民の窮状を救うため、岩熊井堰と出北用水の建設に着手した。

　しかし、難工事で多額の藩費を要したこともあり、軍用金流用の疑いを掛けられ、３人の息子とともに投獄。病弱だった長男の図書（ずしょ）が病死すると、監物自身も悲しみから自ら食を断ち、非業の死を遂げた。

　その後、遺志を受け継いだ郡奉行の江尻喜多右衛門が３年の月日をかけ、井堰と用水を完成させた。

　体験学習では「授業で話を聞くより、実際に見て触って体験すると頭により記憶が残る」と寺田さん。寺田さん自らが製作し、用水などに用いられているサイホンの原理が一目で分かる装置や地中に埋め込んで水を通す樋（とい）「埋樋」を原寸大サイズで作った発泡スチロール製レプリカなどを使って説明した。

　児童は石割り体験、サイホンの原理を学べる揚水実験、藤江監物が投獄されたろう屋の間取りなどを学んだ。このうち、ろう屋体験では、実際のサイズと同じ縦横１・５メートルの正方形シートの上に座った。

　ろう屋に使用していた木材はクスノキ。クスノキは防虫剤の材料にもなり、チャック付きポリ袋に入れたクスノキを嗅いだ児童は「うわ！」「変な臭いがする」と大騒ぎ。寺田さんから「ずっとクスノキの臭いがするろう屋に入れられて、寝転ぶことも許されなかった」と解説を受けると、児童たちは真剣に話を聞いていた。

　牧野優萌（ゆめ）さん（１０）は「サイホンの原理はいろんな所で使われているのが分かった」。杉尾颯介さん（同）は「ろう屋が思ったより狭かった。クスノキは消毒液の匂いがした」と驚いていた。