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しの笛としだれ桜が創り出す幻想的な世界

本紙掲載日:2023-04-04
7面

物部聖子さん(宮崎市)が浄専寺で演奏−五ケ瀬町

 しの笛奏者、物部聖子さん(52)=宮崎市=のコンサートが1日、五ケ瀬町三ケ所の浄専寺であった。大々的な告知がなかったにもかかわらず、町内外から100人以上が来場。境内に鎮座する樹齢約300年のしだれ桜の前で、物部さんが奏でる清らかな音色に聞き入った。

 物部さんは生まれ育った宮崎市を拠点に活動。初心者向けのレッスンや体験会を開くなど、しの笛の普及にも努めている。中学、高校と吹奏楽部でフルートを担当したが、その後、音楽とは疎遠に。自身の引っ込み思案な性格や流されがちな生き様に悩み、苦しんでいた17年前、知人の勧めでしの笛を始めたという。

 以来、「人が変わったように」和楽器に熱中。昨年6月、全9曲を収録したファーストアルバム「篠(しの)の聖姫(さとひめ)」をリリースし、癒やしと元気を届ける「癒やしの笛奏者」として各地を回っている。

 コンサートは「物部さんの演奏と浄専寺の素晴らしいしだれ桜との共演が、県北地域にしの笛の魅力を発信する良い機会になるのでは」と、友人の椎葉年美さん(57)が企画。同町では初めての開催となった。

 午後6時を告げる鐘が鳴り、横笛奏者の鯉沼廣行さんが編曲した「さくらに寄す」で開演。羽衣を連想させる桜色の装いで「荒城の月」(作詞・土井晩翠、作曲・瀧廉太郎)、ジブリメドレー、オリジナル曲「天花乱舞」、「春よ、来い」(作詞作曲・松任谷由実)を情感たっぷりに奏でた。

 ゆっくりと昇る月、ライトアップされた巨木から舞い落ちる淡紅色の花びら、宵闇に浮かぶ三重の塔が創り出す幻想的な世界観に来場者はくぎ付け。幸せそうに体を揺らしながら没頭している姿も多く見られた。

 夜桜を見に訪れた際、偶然立ち会ったという河内正邦さん(56)=熊本県=は「心に響く演奏と美しい景色のハーモニーが素晴らしく、本当に運が良かった」と笑顔。

 物部さんは「和楽器に対して堅い印象を持つ人は多いと思うが、もっと自由に、好きなように楽しんで良いということを広めたい。私の演奏から、和楽器への親しみやすさや可能性を感じてもらえたらうれしい」と話した。

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