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薪能特集−熊谷拓郎さんインタビュー

本紙掲載日:2023-10-05
7面

支える立場で再び−2002年「鞍馬天狗」に出演

 のべおか天下一薪能の特徴である「こども能楽プロジェクト」。稽古を積んだ延岡市の子どもたちがプロの能楽師とともに舞台に立つ。2002年に始まり、初回の演目は「鞍馬天狗」だった。当時小学3年生で稚児役の一人として出演した熊谷拓郎さん(30)は、同市職員として今年4月から市歴史・文化都市推進課地域文化振興係に勤務し、同薪能を担当する。出演者を支える立場で再び舞台に関わる熊谷さんに話を聞いた。

−−能「鞍馬天狗」で稚児役を演じた当時の思い出を教えてください。

何度も集まって稽古したのを覚えています。今回の子方の子どもたちと同じように、カルチャープラザのべおか1階の多目的ホールが稽古場でした。
特に、片山清司(現・片山九郎右衛門)先生に教えてもらった時は、先生が入って来られた瞬間に空気がピリっと引き締まって、緊張感が高まり「本当に本番が来るんだ」と自覚しました。
幼いながらに「すごい人なんだな」と思った記憶があります。

−−本番当日、のべおか天下一薪能の舞台はどう映りましたか。

緊張しすぎていて正直、本番のことはほとんど覚えていません。「分厚くていつもよりも重い服をいっぱい着たな」ということと、薪能特有の「たき火の匂いがずっとしていた」ことははっきりと覚えています。
衣装の裾が長くて、移動する時にはおんぶされていたような気がします。何より、とにかく緊張しました。

−−今年は延岡市の小中学生14人が出演します。

稽古の様子を見ていましたが、すごく堂々としている印象を受けました。片山先生が指導されてるときも、必要以上に恐れおののいていないというか。
本番の緊張感は小中学生が普段味わうものではありませんし、おぞましいとさえ感じてしまう舞台の雰囲気を経験できることは、一生の財産になると思います。
難しいかもしれませんが、子どもたちには舞台を楽しんでほしいです。

◆子どもからたくさんのエネルギー、伝統を全身で感じて

−−今年の見どころは。

地元延岡の子どもが出演することは大きな特徴です。今年は能「鞍馬天狗」で、稚児役だけでなく、初めて牛若丸役(子方)を地元の子どもが演じます。
ストレートに刺さる子どもの声と素直でまっすぐな姿からは、たくさんのエネルギーをもらえると思います。
幽玄の世界を体現する延岡城の雰囲気も同時に楽しめますし、かがり火が魅力をさらに引き上げます。
脈々と受け継がれている延岡の伝統を全身で感じてほしいです。

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