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感染者数、7週連続で増加−県内
◆14週ぶり全圏域が「黄」区分に
県の感染症週報第1週(1〜7日)によると、県内で新たに確認された新型コロナウイルスの感染者数は前週比1・5倍の定点当たり7・45人と、7週連続で増加しました。
4段階で色分けした注意喚起の区分は14週間ぶりに、県内全域が上から4番目の「黄圏域」(基準値=定点当たり5人以上)となり、本格的な増加段階に入ったとみられます。10日時点の入院患者数は165人で前週から38・6%(46人)増加し、前の週に0人だった重症者は2人となりました。
◇延岡・西臼杵9・11人−前週から減少も県内最多
県が区分する7医療圏域のうち、延岡・西臼杵の感染者数は定点当たり9・11人で前週から2・3%減少しましたが、依然として県内最多です。日向・東臼杵は同8・17人で前週から32・4%増加しました。
また、日南・串間(定点当たり8・20人)、西都・児湯(同7・50人)、小林・えびの・西諸県(同7・00人)、都城・北諸県(定点当たり6・70人)、宮崎・東諸県(同6・67人)も軒並み増加し、すべの地域が黄圏域となりました。
県内の定点医療機関から報告された新規感染者数の年代別割合は多い順に、▼5歳未満と40代が各13%▼20代と50、70代が各11%▼60代10%▼30代9%▼10〜14歳が8%▼5〜9歳と15〜19歳が各5%▼80代以上が4%でした。
定点報告数を基にした県内の推計感染者数は1日当たり319人(前週216人)と13週間ぶりに300人を上回り、7週連続で増加しました。
全国の感染状況(1〜7日)は定点当たり6・96人で前週の同4・57人を上回り、全域で増加し、大分県が同11・02人、熊本県同10・84人など九州も多くなっています。
延岡市が独自に集計している新型コロナ感染者数の週報によると、先週1週間(1〜7日)の合計は前週比47人増の212人で、昨年11月下旬から6倍以上増えています。日別では、1日17人▽2日11人▽3日19人▽4日43人▽5日56人▽6日30人▽7日36人となっています。
一方、県が延岡保健所管内から報告を受けた定点医療機関当たりの新規陽性者数は9・86人で、前週の11・29人から若干減少しましたが、これは正月の休診が多かった影響とみられ、実際には増加した可能性があります。
◇年明けから増加傾向−「第10波」の立ち上がり
県内の新型コロナ患者数は延岡市を中心に年明けから増加傾向が1段階強まりました。過去同様に、これからは右肩上がりに増えていく可能性が強く、市新型コロナ対策アドバイザーの佐藤圭創医師は「すでに『第10波』の立ち上がりにある」と指摘しています。
宮崎県を含め国内では夏場に流行したオミクロン株のXBB1・5やEG・5の流れをくむ通称エリス系統のHK・3が現在の主流株ですが、ゲノム解析の結果、直近の3週間で突如としてBA・2・86(通称ピロラ)系統のJN・1が全体の3割以上を占めました。
JN・1は過去最強の感染力で欧州では感染者の7、8割、米国でも4割を占めて、南米、豪州などを含め世界全域で急速に感染を広めており、国内で拡大するのも時間の問題とみられていましたが、予想通りの襲来となりました。
ただ、佐藤医師によると、国内では先にエリス株が再流行した後に、JN・1などのピロラ株への置き換わりでさらに感染が拡大して、長期かつ大規模な感染が引き起こされる恐れがあり、状況を注視していく必要があるということです。
◇JN・1、潜伏期間短く、長期化の傾向
そのJN・1ですが、昨年9月に米国で初めて確認され、わずか3、4カ月でほぼ全世界に感染を広げました。まだワクチンの公的接種が始まって間がなく、抗ウイルス薬も乏しかった2021年にデルタ株が出現した時のような拡散スピードで、県内では同年夏の第5波で国のまん延防止等重点措置が適用されています。
すでにJN・1が流行している英国やフランス、スペインの疫学調査データや培養細胞などを用いた東京大学医科学研究所の分析では、1人の感染者から何人に感染が広がるかを示す実効再生算数が、国内で現在流行している変異株の1・2倍〜1・4倍程度上回ったといいます。
また、ワクチンや感染によって作られた抗体からの逃避能力も3倍超に上ることが分かり、いかに感染力が強いかを裏付けるデータとなりました。米国疾病予防管理センター(CDC)によると、JN・1が急拡大した昨年末までの1カ月程度で、同国内の新型コロナによる死亡率が急伸したといいます。
県北でも「感染者と接した翌日に発症して新型コロナと診断された」という人や、療養期間を終えて家族に感染したケースが確認されていて、すでにJN・1が広がっている可能性があります。
こうした研究結果、潜伏期間の短縮化や感染の長期化とみられる臨床症状について佐藤医師は、「JN・1は細胞と結合する力が極めて強く、ひとたび感染すると体内で急激にウイルスが増殖するため」と推察し、肺炎などによる重症化率や死亡率が高まっているとする海外からの情報も説明が付くと話しています。
◇佐藤医師「感染症は〃災害〃」−ポータルサイト・動画で備え呼び掛け
新型コロナ感染者の増加が確実視されることから、延岡市はホームページの新型コロナ対策ポータルサイトで、佐藤医師からのメッセージ動画を通じて「第10波」への備えを呼び掛けています。
まずは感染防止策の強化として、マスク着用や手洗い、うがい、換気、加湿、3蜜(密集、密閉、密着)回避に心掛けることです。特に、大人数で集まったり食事をする際は対策を強め、発熱、せき、喉の痛みといった症状がある場合は必ずマスクを着けて、外出も控えるよう訴えています。
ワクチン接種は重症化予防に効果があり、感染もある程度防げるとして推奨しています。市内ではクラスター(感染者集団)も出始めていて、職場や学校などでの対策を徹底し、バランスのいい食事や適度な運動・睡眠も心掛けてほしいということです。
次に、感染者が出た場合の備えとして、検査キット、常備薬(解熱剤、喉の痛み止め、せき止め、整腸剤、総合感冒薬など)、飲料水、食料を準備しておくことです。新型コロナは喉の痛みで食事が飲み込めないことが多く「ゼリー状飲料は必須で、痛み止めがなければ喉あめだけでもあるといい」と話しています。
佐藤医師は「感染症は〃災害〃であり、準備が大事」だとして、「ぜひ、あらかじめ感染時のシミュレーションをしておいていただければ」と呼び掛けています。
◇「医療崩壊」回避が命題
第10波のピーク前にこうした呼び掛けを強めるのは、県北の医療資源が限られていて、病院に患者が殺到したり重症者が増えれば、真に必要とする人が治療を受けられなくなる「医療崩壊」が起きてしまうためです。
それを避けるため、発熱があっても夜間や土日・祝日の病院受診(いわゆるコンビニ受診)は控え、感染が疑われても若者や基礎疾患がない人はまず常備薬で対応した上で、改善しない場合に受診するようお願いしています。
また、新型コロナやインフルエンザの陽性・陰性診断書発行は病院業務の負担となるため依頼を控えるべきで、厚生労働省も職場や学校などに向け現在のような混雑期には提出を求めないよう呼び掛けています。
佐藤医師は「自分だけではなく家族、市民、社会を守る行動が大事です。延岡市民として延岡の医療を守るため、ご協力いただければ幸いです」と理解を求めています。
◇インフル、宮崎が3週連続で全国最多
12日に国立感染症研究所が発表したインフルエンザ流行レベルマップ第1週(1〜7日)によると、1医療機関(定点)当たりのインフルエンザ患者数は宮崎県が3週連続で全国最多となりました。
休診した医療機関が多かった影響で本県を含め全国的に前週より減少しましたが、人の動きが活発化した年末年始や冬休み明けの学校再開などにより再増加が懸念されます。
宮崎県は定点当たり26・05人で、全国平均(定点当たり12・66人)を2倍以上も上回りました。保健所管内別では延岡が同35・86人で、新型コロナ同様に突出して多い状況です。
佐藤医師は「発熱患者の3人に2人がインフルエンザ、1人が新型コロナ」と話しています。つばを飲み込めないほど激しい喉の痛みや強い頭痛など、つらい症状を訴える人が多いそうです。
◇同時感染の恐れも
また、感染症は患者全体に占める低年齢層の割合が大きいほど流行が続く傾向があるといい、県内のインフルエンザ患者は現在、14歳未満が半数以上のため、なお予断を許さない状況です。
一方、延岡市内の高齢者施設などでは新型コロナ、インフルエンザとも集団的感染(クラスター)が複数発生していて、関係者は警戒感を強めています。
佐藤医師によると、現在はインフルエンザによってほかの感染症の拡大が抑えられる干渉効果が働いているということですが、例えインフルエンザ落ち着いても次は新型コロナが急増する可能性が高いといいます。
また、インフルエンザが収まらないうちに新型コロナがまん延すれば、重症化率や死亡率が増す同時感染が起きる恐れもあるとして、「いずれにせよ、マスク着用は効果的です。手洗いやうがいなどを含めた基本的な対策の徹底をお願いします」と訴えています。