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市史編さん−市民参加型で若い力も

本紙掲載日:2020-02-07
11面
講演する上原兼善さん

願う会シンポジウム−上原さん(岡山大名誉教授)が講演

 「共に語ろう!市史への夢を」をテーマに、延岡市史編さんを願う会(九鬼勉会長)は1日、同市のカルチャープラザのべおかでシンポジウムを開いた。講演とパネルディスカッションがあり、会員や市民ら約200人が耳を傾けた。

 シンポジウムでは、岡山大学名誉教授の上原兼善さんが「延岡市史編さんに向けて」と題し、自身が携わった自治体史編さんの経験を交えて基調講演。延岡市史編さんへの提言として「市民参加型の編さんにして、自分たちの市史という認識を持ってもらいたい。よそ者が作る市史ではいけない。若い人たちの力も取り込んで、土の匂いがする市史編さんを目指してほしい」と呼び掛けた。

 自治体史編さんの目的については、「地域を余すところ無く調査して後世に残していく作業」とし、岡山県の吉井町史、宮崎県史、北浦町史、日向市史などの自治体史編さん事業を解説した。

 このうち、岡山県の吉井町史(現在の赤磐市)の編さん事業では、ローラー作戦で小さな山村の全地域で資料調査を実施し、「この事細かに作った資料目録が、後に大きな役割を持った。ここで資料調査の重要性を学んだ」。さらに、「資料調査に投入した若い学生には、読み解く力が身に付き、成長につながった」と成果を挙げた。

 編さん委員会としては、「町民の関心を高めるために報告会や講演会を開催したり、広報などを発行したりして町民の関心を呼び起こしながら事業を進めた」と紹介。これらの取り組みは県内の自治体史に影響を与え、「『吉井町方式』として定着した」と報告し、「(編さん事業は)町を挙げての強力な体制の構築が必要」と語った。

 一方、吉井町史の執筆は有識者らが中心に担ったことで「レベルの高い学究的な町史に仕上がった」が、「土の匂いがあまりしない。地域の人が町史に原稿を出すような、自分たちの興味が湧く町史にはなっていなかった。よそ者が作った自治体史に過ぎなかった」と回顧。こうした経験から「自治体史を作るなら、そこに住むさまざまな人に参加してもらい、原稿などを執筆してもらうと、自分たちの市史という認識が出てくるのではないか」と提案した。

 また、宮崎県史の編さんを振り返り、「編さん体制の強化と中堅クラスで力のある人をスタッフに加える必要性を改めて感じた」とし、「皆さんで知恵を出し合って、若い力を市史の中に取り込んでいただきたい」と呼び掛けた。さらに、北浦町史では「町史というのは、現在の私たちから未来に対する贈り物です」という当時の町長の名言を伝えた。

 そのほかの助言として、「学校などで使用できるようデジタル化する」「長期計画で内藤家文書の膨大な資料を継続して刊行する」「どんな資料が出るか分からないため先に刊行計画を立てない」「議会の承認を得る」などと付け加えた。

 後半のパネルディスカッションでは、黒木豊さん(元日向市史編纂〈へんさん〉室長)、木原万里子さん(五ケ瀬川の畳堤を守る会会長)、甲斐典明さん(延岡史談会副会長)、古川久師さん(郷土史作家)、高橋勝栄さん(NPO法人ひむか感動体験ワールド理事長)、渡邉斉己さん(延岡市史編さんを願う会副会長)の6人がパネラーとして登壇。上原さんがアドバイザー、九鬼会長がコーディネーターを務め、延岡市史編さんに向けた思いなど意見を交わした。

 同会は2018年6月に設立し、市制施行100周年に当たる33年までの本格的、体系的な市史編さんを目指して活動。講演に先立ち、あいさつに立った九鬼会長は「延岡市は、市史編さん事業に向けてかじを切った。令和2(2020)年度の早い時期に市史編さん室の設置、職員配置、予算措置が実施されることに期待している」と語った。


延岡市史編さんについて意見を交わしたパネルディスカッション
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