ココカラＳＤＧｓ－第２回「教育×ＳＤＧｓ」（上）（１）（５月２０日放送分）

本紙掲載日：2021-05-26

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　今注目のＳＤＧｓ（エスディージーズ）をテーマに、地域や地球の未来を共に考えるＦＭのべおかの番組「ココカラＳＤＧｓ」の第２回「教育×ＳＤＧｓ」が、２０日に放送された。内容を一部抜粋し、２回に分けて紹介する。

　アドバイザーはＳＤＧｓコミュニケーターの難波裕扶子さん（４８）＝日向市＝。ゲストは延岡市立恒富中学校の校長・瀬戸山初博さん（５９）、生徒会担当講師・藤江幸子さん（５０）、生徒会役員１１人。収録は１５日、同校図書室で行われた。

◆子どもは社会に声上げる力を持っている－瀬戸山さん
◆今動かないといけない－黒木百さん
◆身近なことから、２６日できることから－難波さん

－第２回のテーマは「教育×ＳＤＧｓ」です。

〈難波〉５月５日の「こどもの日」にちなみ、次世代を担う子どもたちにスポットを当てます。ご存じの方もいると思いますが、小学校は２０２０年度、中学校は２１年度、そして高校では２２年度から新学習指導要領が全面実施されます。「新」なので、かなり大きな改訂が行われています。注目されているのは「持続可能な社会の創り手の育成」が明記されたことです。つまり、ＳＤＧｓの担い手を教育の現場から育成することが目指されています。延岡市にもＳＤＧｓを実践している学校が何校もあります。

－ゲストはそのうちの１校、延岡市立恒富中学校の皆さんです。

〈瀬戸山〉校長の瀬戸山初博です。恒富中学校は愛宕山の麓にあり、現在、生徒数２５３人、職員数２８人の中規模校です。１９６１（昭和３６）年に延岡中学校の第２校舎として授業を開始し、翌６２年に独立開校しました。今年度で６０年目を迎えます。ちなみに私と同級生です。どのような雰囲気の学校かと言いますと、例えば昨日あったことなのですが、生徒会の会長が「グリーンカーテン運動を始めるので３年生の教室前の花壇の草取りをします。手伝える人は来てください」と呼び掛けました。すると１００人近い生徒が集まりました。私もびっくりしました。非常に協力的で「みんなのために」という意識が強い学校です。また、地域のごみ集積所のごみが散乱していることがあるのですが、地域の人から「中学生が片付けてくれた」と連絡を受け、とてもうれしく思ったことがあります。そういうことができる学校です。

〈難波〉素晴らしい学校ですね。そもそも瀬戸山さんがＳＤＧｓを知ったきっかけは何だったのですか。

〈瀬戸山〉私が恒富中学校に赴任した２０１９（令和元）年度、文部科学省主催の研修会に参加しました。「２１世紀の教育政策」というテーマだったのですが、今考えると、あれがＳＤＧｓを意識するきっかけになった気がします。ただ、その時は「ＳＤＧｓって世界共通の目標なんだな」とぼんやりと理解しただけで「壮大な目標だから自分たちにはあまり関係ないのかな」とも感じました。

－なぜ、そのＳＤＧｓを学校や地域活動に取り入れようと考えたのですか。

〈瀬戸山〉今の学校は現実の社会と距離があると感じていました。学校がもっと社会のことを知って教育活動に生かさないといけない。そして、今どのような問題が社会にあって、大人がどう対応しているのか、未来の主人公である子どもたちに考えさせることがとても大切だと思いました。実感として触れさせたいと思ったのです。当時、ＳＤＧｓの認知度はまだ低かったのですが、２０２１年度からコミュニティ・スクールに指定されることもあり、地域の人と取り組むことはとても面白いな、そう思ったのです。それが取り入れた理由です。だけど私は種をまいただけ。取り組みは強制したくないと思っています。難波さんがよく言われますが「若い人の邪魔をしない」。そういう発想がとても大事です。少しずつ無理をしない程度にできればいいなと思っています。

〈難波〉校長先生自身がすごく楽しんでいる、面白がっている。だから子どもたちも動く。それも「邪魔をしない」から自発的に。とても共感します。

－ここからは具体的な取り組みについてお聞きします。

〈黒木百〉会長の黒木百花です。私たちは今までユニセフ募金や、地域の人とエコバッグやマスクを作ったり、地域の人と一緒にごみを拾ったりする活動に取り組んできました。先日は制服のジェンダー平等を実現するために「スカートとズボン、どちらをはいても良い」という決まりを先生に提案しました。
また、コロナ禍の差別や偏見をなくすため「シトラスリボンプロジェクト」として医療関係者に手紙を書きました。これは私たちの意思で恒中生全員で取り組みました。他にも、登校中に目に留まったごみを拾って学校に持ってくる「通学路ピカピカ大作戦」などに取り組んでいます。これから計画しているのはグリーンカーテン運動です。ＣＯ２（二酸化炭素）削減が目的です。何事も小さなことから積み上げていくことで大きなことにつながると思っています。これからも諦めずに続けていきたいです。

－校長室の前に使い捨てコンタクトレンズの空ケースの回収ボックスが置かれています。

〈瀬戸山〉私は、ＳＤＧｓは〃自分事〃にしなきゃいけないと思っていて、私も何かしたいと思って今年１月から始めました。子どもたちに協力してもらっていますが、あれは私の取り組みです。たくさん集まったらコンタクトレンズ専門店に送ります。ごみとして燃やしてしまうのではなく、リサイクルすることでＣＯ２の排出量が削減されます。そして再資源化され、さまざまな製品に生まれ変わります。

－昨年、難波さんからＳＤＧｓに関する出前授業を受けたそうですね。

〈黒木百〉難波さんの出前授業を受けた後、ＳＤＧｓを広く知ってもらおうと、私たち生徒会役員で貧困や地球温暖化などの課題を分かりやすく伝える劇を制作し、地域の人や全校生徒の前で上演しました。

〈難波〉実は私、上演された劇を見て号泣してしまいました。私が伝えたい思いが伝わったんだと思って。

〈黒木百〉上演後、同級生から「分かりやすかった」と言ってもらいました。それが私たちが今できる一番のことです。まずは身近な友達から伝えていくことが一番大事だと思っているので、うれしかったです。

〈瀬戸山〉子どもたち、すごいでしょう。子どもたちは社会の現状に対して「こうしたい」と声を上げる力を持っています。子どもたちの行動を待つこと、子どもたちの声に耳を傾けることの大切さをつくづく感じています。

－難波さんの出前授業を受けて、どのようなことを感じたのでしょうか。

〈黒木百〉私は今取り組みたいと思いました。今動かないといけない、ひとごとじゃないなってすごく感じました。私が見ている世界と、違う国から見た世界は全然違っていて、私が当たり前に学校に通っていることや友達とたくさん笑い合えることは、とても幸せなことなんだと改めて感じました。同じ空の下にいるのに、こんなにも違うなんて、正直、少し疑問を持ちました。

〈谷〉副会長の谷陽香稟（ひかり）です。私は、当たり前は当たり前じゃないと感じました。私たち人間だけじゃなく動物や自然も大きな危機に直面していることが分かりました。私たちが学校で勉強していることや、お父さんお母さんがいることは決して当たり前じゃないので、感謝しながら生活しないといけないと感じました。

〈難波〉「当たり前は当たり前じゃない」ということに気付けたことは、すごく大きいですね。感謝という言葉が胸に響きました。

〈稲村〉副会長の稲村蓮騎（はすき）です。延岡は美しい自然があったり、おいしい食べ物があったり、僕は今、自由に生きることができています。ＳＤＧｓはこれからも自由に生きていくために必要な活動だと思いました。

〈難波〉そうですね。今学校から見えているこの美しい緑を将来にも残したい、そのためには今動かないと残せない、そんなふうに感じてくれたのですね。私、また泣いてしまいそうです。

－出前授業を受ける前と受けた後で、どのような心の変化や行動の変化がありましたか。

〈廣瀨〉書記の廣瀨明星（あかり）です。私のクラスは、すごく意識が変わったなと感じています。出前授業を受ける前は給食の残食が多かったのですが、受けた後は食べられる人が食べたりして、自然と残食が少なくなりました。

〈山﨑〉会計の山﨑歩夢です。僕は二つのことを意識して生活するようになりました。一つ目は使っていない電気を消す。テレビや部屋の電気をつけっぱなしにしないように気を付けています。二つ目はごみの分別です。ストローが「燃やすごみ」だということに最近気が付きました。お母さんが教えてくれました。家族でルールブックを読み返したりして、ちゃんと分別するようにしています。

〈片伯部〉統括専門委員長の片伯部ほのかです。出前授業の後、レジ袋が有料化されたのは何でだろうと思って調べたら、プラスチック削減という目的があることを知りました。今まで買い物をするときはレジ袋を使っていましたが、これからの社会に一つでも役立てることがあればいいなと思い、エコバッグを使うようになりました。家族にも話したら「ああそうだね。協力していかないとね」と言ってくれたので、とてもうれしかったです。

〈難波〉すてきですね。未来のリーダーである子どもたちがこうやって動くことによって、大人たちも変わります。身近なことから、２６日できることから一緒に取り組んでいきましょう。