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過酷な現場から生まれる美しい輝き

本紙掲載日:2021-08-26
7面

国内3社のみ、ガラスビーズ製造−松野工業

◆1次加工担う宮崎門川工場−「自分たちの誇り」

 門川町南町に宮崎門川工場を置く松野工業(本社・大阪市、松野龍太郎社長)。国内唯一のビー玉製造メーカーとして知られるが、実は、国内に3社しかないガラスビーズの製造メーカーでもある。「昼夜3交代で火を絶やすことなく続けられる製造現場の過酷さと、出来上がったアクセサリーの美しい輝き。それが醍醐味(だいごみ)であり、自分たちの誇り」と工場長の今西誠二さん(52)。世界に認められる高品質のガラスビーズ作りやファッション業界注目のオリジナルアクセサリーなどについて紹介する。


◆高い品質、世界のファッション業界が注目

 同社のガラスビーズ作りには、最大20の工程があり、このうち宮崎門川工場(従業員約80人)は1次加工を担当。室温約50度の中、ガラスの原料を溶かす窯の火を絶やすことなく、昼夜3交代で作業に当たっている。

 1次加工とは、▽ガラスの原料となる石粉やソーダ灰などの調合▽1400度以上に熱した窯のつぼに入れて、原料を水あめ状に溶かす「溶融」▽溶けたガラスをくみ出して、穴の開いたチューブ状に引き伸ばす「管引(かんびき)」▽高速回転する刃で切りそろえる「切断」▽炭の粉と一緒に加熱し転がすことで切断面の角を溶かして丸くする「黒鉛焼成」▽炭の粉を薬品で洗い流し、すりガラスの状態にする「洗浄」▽電気炉で荒れた表層面だけを溶かし、つやのあるビーズに仕上げる「つや出し仕上げ」▽ふるいに掛け、粉や割れてしまったものを取り除く「フルイ」。

 わずか数ミリの愛らしい小さなガラスビーズからは想像できない、過酷な「溶融」に始まり、どの工程も、機械というより道具に近い設備で、人の手と目を頼りに進められていく。同工場の人事総務課・樫村慎也さん(37)は「作業はすごく繊細で、でも働く従業員の姿はすごくダイナミック」と表現する。

 そんな熟練の技から生まれた高品質のガラスビーズは、ビーズ文化が根付く欧米、イスラム圏、アジア諸国など世界中のファッション業界に届けられている。

 同社では、オリジナルのアクセサリーブランド「MATSUNOGLASSBEADS(松野グラスビーズ)」を立ち上げ、ピアス、ネックレス、ヘアゴム、ブレスレット、アンクレット、眼鏡コードなどを販売している。

 どれもガラスビーズならではの上品な輝きが特徴で、中でも、マスクのひもに取り付けて首に下げることのできる「マスクコード」は、マスクを外した時にテーブルなどに置かずに済み、コロナ禍で人気という。

 また同社は、発展途上国の女性たちを支援するため、適正な価格で取引されている米国のフェアトレード商品「LilyandLauraBracelets(リリーアンドローラブレスレット)」に、材料となるガラスビーズを提供している。

 このブレスレットはネパールの女性たちの手で一つ一つ、チューブ状に編み込まれたもので、その利益は確実に女性たちに還元される仕組みになっている。

◆「地域の素晴らしいもの知って」−エンクロスで販売中

 延岡市幸町の駅前複合施設エンクロスでは、松野グラスビーズのアクセサリーと、リリーアンドローラブレスレットを特設ブースで販売している。9月末まで。蔦屋書店延岡エンクロス店の文具雑貨担当者は「こんなにも素晴らしいものが、この地域で生み出されていることを知ってもらいたい」と語る。

 なお、宮崎門川工場の事務所内にあるフラッグシップストアでも購入できる。平日のみ午前11時〜午後4時。問い合わせ先は同工場(電話門川63・0344)。

=商品とネパールの写真は、いずれも同社提供=


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