柳澤さん（小学生）吉田さん（中学生）ら最優秀賞

本紙掲載日：2021-11-16

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美郷町第３３回葉桜短歌賞

◆藤田世津子賞は児島さん（宮崎）

　美郷町主催の「第３３回葉桜短歌賞」の受賞者が決まった。今年は一般、小中高校生の４部門に県内外から２０２７首の応募があり、県北からは、小学生の部で柳澤彩雪さん（西郷義務教育２年）、中学生の部で吉田智恵さん（土々呂中３年）が最優秀賞に輝いた。

　町では、旧西郷村出身の歌人小野葉桜を顕彰する葉桜顕彰会を１９８８年に設立。短歌賞は、顕彰と地方の詩歌の発展、文化向上を図ろうと８９年に第１回を開催して以降、毎年実施している。同郷の歌人、藤田世津子を顕彰する「藤田世津子賞」も併せて選んでいる。

　今年は昨年同様、新型コロナ感染防止として、表彰式は行わず発表のみとなった。受賞者には今後、賞状や副賞が贈られる。一般の部最優秀賞は、葉桜ふれあい公園に記念碑を建立する。

　小野葉桜本名・小野岩治。明治１２（１８７９）年、西郷村花水流の農家の長男として生まれた。小学校に勤務、村内で薬店を開くなどして人望を得て、同４０年に２８歳で東臼杵郡議会議員となるものの、人力車の事故で頭部を強打し、就任１年余りで辞任。

　度重なる病と貧困の中、唯一の心のはけ口として短歌に情熱を注ぎ、東郷村（現・日向市東郷町）出身の歌人若山牧水とも親交を深めた。

　しかし、歌人としての将来を期待されるようになり、作品集を出そうとしていた３４歳の時、再び病に倒れて歌人としての活動を終えた。以降、短歌を詠むことはなく、病も一進一退のまま６３歳で不遇の生涯を閉じた。

　藤田世津子西郷村小原出身。末期がんを宣告された２００３年に、がんを患う自身を見詰めながら歌集「反魂草（はんごんそう）」にその思いをしたため、第６回駿河梅花文学大賞を受賞した。翌年、６４歳でこの世を去った。

■小学生の部
◇最優秀賞
美郷町立西郷義務教育学校２年・柳澤彩雪
シャキシャキでしるがじゅわぁっとじいのなしなんこもたべれるウマ！むげんなし

◇優秀賞
日向市立坪谷小学校２年・平井杏樹
すいかわりもったいなくてわれないようちでそだてた大きなスイカ

日向市立坪谷小学校４年・山口和志
にじの上つかれたときにあるきたいもしできるならぼくはしあわせ

美郷町立美郷北義務教育学校２年・早田健
夏休みじゅんびばんたんえさとかごカブトムシだけそろわずにいる

◇佳作
日向市立寺迫小学校１年・小畑唯
あさがおがちっちゃいのさいたかわいいなむらさきいろでまんなかはほし

日向市立寺迫小学校２年・海埜結汰
川の水キラキラしててきれいだなもぐってとりたいダイヤモンド

日向市立寺迫小学校４年・橋口大翔
石並川深い所泳いだら下見てびっくり体ういてた

日向市立東郷小学校１年・寺原遥馬
なつやすみぼくにははじめてやってきたはやねはやおききちんとするぞ

日向市立東郷小学校４年・畝原和真
にいちゃんのたんじょうびだいつもよりたくさんあそぶいっぱいいわう

日向市立坪谷小学校１年・海野謙心
ぶどうかん五かいかったよけっしょうだめんぬきめんでかぶとをとった

■中学生の部
◇最優秀賞
延岡市立土々呂中学校３年・吉田智恵
あいうえおあ（愛）から始まりわ（別れ）でおわるなんだかとっても不思議だね

◇優秀賞
日向市立東郷中学校１年・那須陵太郎
青葉たち土を押し上げ天高く夏を背負って出たかのように

美郷町立西郷義務教育学校９年・甲斐光祐
てきとうにピアノをひくとおもしろい二度と聞けないせんりつだから

延岡市立土々呂中学校３年・久保田優真
話題振り話題振られて笑い合うなんてことないそんなやりとり

◇佳作
延岡市立南浦中学校３年・岩切陽海
夕暮れにぽろぽろぽろと滴るは干した水着が語る思い出

高千穂町立高千穂中学校２年・向朝陽
相手へと向けた手の先シャトル飛ぶ「パァン」と響く七月の空

高千穂町立高千穂中学校２年・工藤愛理
「うりよっつ」写真見ながら語りあい笑顔飛び交う家族の会話

小林市立紙屋中学校２年・坂上きら
あじさいの一つの滴輝いて葉のすべり台ころがっていく

延岡市立土々呂中学校３年・高橋日和
次こそは勝ってみせるぞライバルに背中見るのはもうあきたから

日向市立日向中学校１年・甲斐光
夏休み出店で食べる焼きそばはくるくるしてて天然パーマ

■高校生の部
◇最優秀賞
県立宮崎商業高校３年・寺原瑠月
サイダーの中で輝く惑星は私の夏を音で彩る

◇優秀賞
県立日南振徳高校１年・田島杏美花
恋心嘘と自分に言い聞かせ待ち合わせする友達の君

県立宮崎商業高校２年中原藍
月明かり涼しい夜風あなたの声心地よかった会いたくなった

県立宮崎商業高校３年北原理李
休み時間忘れてないのに会いたくて君に借りた分厚い教科書

◇佳作
県立富島高校３年竹田友月
貴女を知る楽しいと知る恋を知る苦しいと知る嬉しいと知る

県立宮崎商業高校１年日髙愛蘭
太陽に負けないほどの明るさでレンズ越しに君がいた夏

県立宮崎商業高校２年香月瞳美
我々はコンクリートの隙間から葉を出すように強く生きてる

県立宮崎商業高校２年廣島奨龍
甲高い声とホコリと木の匂い帰ってきたんだおばあちゃん家

県立宮崎商業高校３年甲斐桜奈
木の陰に隠れたままのたんぽぽを見かねたさくら舞い降りていく

県立宮崎商業高校３年福永玖瑠美
図書館でひそひそ話いたずらに聞き返したら椅子急接近

■一般の部
◇最優秀賞
広島県・岩本幸久
山頭火の道をたどるか山蟻の列をはなれてさまよう奴は・
一枚の落ちたる羽根が道しるべまっすぐ行けと羅針盤めく・
凶を引くその強運をよしとするまだまだ戦う気力のあれば

◇優秀賞
岐阜県・伊藤敦
から揚げが紙コップからあふれでるテイクアウトの子どもおやつ・
きっちりと車椅子押す父の目が痴呆の母を優しく守る

岡山県・小橋辰矢
赤い月ぼんやり浮かぶ空にまだ届いていない私の祈り
少しでも苦が減るように祈る夜にカラスが鳴いた闇よ答えろ

三重県・樋田由美
夕されば梢に積もれる囁きは叶わなかった万葉の恋
悲しみの蒼い海より取り出したこの花群を紫陽花という

兵庫県・中下重美
空気ってどうして読むの問いかける君の瞳の中のゆらめき
恋をしておなかいっぱいの気分と言う中二の娘もりもり食べる

三重県・山岡裕喜
折り紙の予期せぬ穴からあふれ出た紙の吐息が和室に溶ける
なつかしいアニメは故郷の木や風のかわりにぼくをぴかぴかにする

◇佳作
佐賀県・古賀由美子
九十の父にステーキの肉を買う食べた途端にとろける肉を

大分県・伊藤美佐子
ベランダの小き草もみじツルソバに秋の旅人七星瓢虫泊まる

大分県・岸本恵美
コロナ禍に半年会えぬも携帯電話の声のトーンに知る君の今日

宮崎市・松浦淳
夢に見しレイクランドの青き波水上スキーは終に叶はず

熊本県・吉野佳子
仙人掌の明るく育つ一室で終末医療の話はじまる

静岡県・尾内甲太郎
肩車する児は「つき」へ行けと言う今を逃せば行けないだろう

岐阜県・上久保みどり
弟の臓器もらいし四人のひとコロナなんぞに負けるでないぞ

福岡県・青山裕洋
母がよく口ずさみいし「赤とんぼ」、厨に妻の歌いておりぬ

延岡市・河野正
しみじみと同じ夕焼け妻と見て青田の匂ひ纏ひて帰る

新富町・門田祥子
三分の一の空白そのままに施設の母の三年日記

高知県・蛭子泰明
むらさきのマスクの媼堤防に縮緬雑魚の天日網設く

三重県・田中亜紀子
閉店を告げるはり紙増えていき町埋め尽くす白い紙々

西都市・児玉智子
手さぐりの道思いつつラジオ聴く教育相談流れくる時

日向市・上野順子
「その人に一番似合う生き方を天は与うる」妣の座右銘

五ケ瀬町・上米良綾子
昨日より今日の私は新しい昨日の私は〓の抜け殻

大分県・田口玲子
美術館の待ち合はせとはなつかしと友は杖つき歩みきたりぬ

和歌山県・松田容典
風に乗り来る放課後の吹奏楽おぼつかなくも生真面目がよし

日向市・植野正治
何となく恋といふ字を書くうちに思ひ出づるは初恋の人

日向市・甲斐住子
一棟で十五の所帯あり里の集落よりも多いアパート

宮崎市・堀越照代
われひとり地上に生きているごとく人の気配のなき星月夜

■藤田世津子賞
宮崎市・児島直美
点滴のほそき雫がはろばろと母のいのちの海へと還る