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和裁士の技術生かしチクチク

本紙掲載日:2022-01-06
7面

人形のファッションデザイナー・中濱るり子さん

◆オリジナルの型紙120種類以上

 延岡市昭和町の自宅でジェニーちゃん人形の洋服を作るのは中濱るり子さん(47)。「デザイナーになりたい」という幼い頃の夢を〃人形のファッションデザイナー〃という形でかなえた。作っているのは、緑色のセットアップ、赤いジャケット、花柄のタイトワンピースなどおしゃれな服ばかり。「私よりも洋服を持っているかもしれません」と笑う。

 中濱さんは小学校低学年から中学生まで、着せ替え人形のジェニーに夢中。中学生になると友人が人形から離れていく中、中濱さんだけは「こんな洋服を着せたい」と、実際にフェルトで作ってみたり、着せ替えをしたりして1人で楽しんでいた。高校生になり人形遊びから卒業した中濱さんは短期大学を卒業後、和裁士の資格取得の期間を含めて6年間、宮崎市と西都市の職業訓練校で着物を縫っていた。

 40歳を過ぎた頃、癒やしを求めて20年ぶりに人形を手に取った。その瞬間、「この子のために洋服を作りたい」と、洋服作りを始めたという。

 はがきや厚紙で作ったオリジナルの型紙は、ジャケット、シャツ、ワンピース…と分けて箱に入れ、大切に保管している。数はジェニーのサイズだけで約80種類。今年から作り始めたリカちゃん人形のサイズまで含めると120種類以上になる。

 生地は手芸店やインターネットで購入する。柄は、ワンピースにしたときを想像して選ぶ。以前は人形のサイズに合わせて小さな柄を選んでいたが、最近はインパクトのある大きな柄も取り入れている。

 和裁士時代の名残で、あぐらをかき、すべて手縫いで作り上げる。使用する針は自分で管理ができる5本までと決めている。和裁の技術が体に染みついており、迷うことなくチクチクと丁寧に針を進める。作品は1970〜80年代のどこか懐かしい雰囲気を感じさせるものが多い。

 デザインは頭の中でイメージし、色の組み合わせはインターネット上のファッションを参考にすることもあれば、外出した時に通りすがりの人の洋服をチェックすることもある。

 完成後に気になっても、一切手直しをしないという。生地の裏表を間違って縫ったこともあれば、襟ぐりを広げすぎたこともあるが、これも味だと受け止め、次回改善する。

 こだわりは洋服だけでなく、人形に持たせる小物やアクセサリーにも。バッグやベルト、イヤリングなども古いベルトやビーズなどで作り、ジェニーを頭から爪先までおしゃれな「一人の女性」に変身させている。

 自身のことを飽きっぽいと話す中濱さん。これまで続けられたのは、人形への愛情はもちろん、これまでお世話になった人への恩返しの意味もあるという。特に職業訓練校では、年上の人にかわいがってもらい、多くの和裁の技術を教えてもらった。その証しとして洋服を作り、誰かに喜んでもらうことで恩返しになればと続けている。

 「『好き』がずっと続いている。これからも飽きることはありません」と断言する中濱さんは〃人形のファッションデザイナー〃として、これからも活動していく。

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