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炭焼き、里山を守る営み

本紙掲載日:2022-01-27
7面

県無形民俗文化財−美郷町の製炭の現場を訪ねて

◆黄金色の輝き、響く金属音

 美郷町備長炭製炭技術保存会(上杉貴敬会長、29世帯)の備長炭製炭が昨年3月、県の無形民俗文化財に指定された。同町で生産される備長炭は県内生産量の約8割(2020年度時点)を占め、中でも同町北郷は主要な産地として知られる。同会事務局長の奥井博貴さん(50)朝子さん(52)夫妻の協力の下、製炭方法や炭焼きの魅力を取材した。

■製炭方法

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本県で生産される日向備長炭は、和歌山県の紀州備長炭と高知県の土佐備長炭と並び、日本三大備長炭に数えられる。紀州と土佐はブナ科のウバメガシが原料だが、日向備長炭には同じブナ科のアラカシが使われている。
博貴さんは、このアラカシを町内や延岡市北川町の山で調達する。次の世代が30年後も炭を焼き続けられるよう配慮しながら手頃な太さのものを選んでチェンソーで切り倒した後、約230センチにカットしてトラックに積む。この作業をトラック1台当たり約120本になるまで繰り返す。

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ドーム状の窯の高さに合わせて190〜230センチに切った生木420本以上を、一本一本持ち運び、窯の奥から立てて並べていく。これを「くべる」という。最初は2人で中に入って作業するが、窯内のスペースが狭くなると、朝子さんが外から博貴さんに渡し、博貴さんがくべる。終わるまで、休憩を含めて約6時間かかる。
伐採したてで水分を多く含んでいるほど、良質な炭ができる。使うのはこうしたアラカシだ。しかしその分重い。「体幹を意識していないと、振られて倒れそうになります」と朝子さんは言う。
約7・5トン分をくべたら、クチカケと呼ばれる窯の出入り口の部分をレンガでふさぐ。「レンガの隙間には粘土を詰めてふさぐ人が多い」というが、博貴さんは灰に水を混ぜたものを粘土代わりに使っている。

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クチカケの下に作られている小窯でテギ(まき)をたき、20〜30日間、アラカシを乾燥させる。ひび割れを防ぐため、たきすぎには注意を払う。「だから最初は火が強くならないシイのテギを使います」と博貴さん。温度はテギの量とくべ方で調節し「ちょうどいいあんばいは経験です」と笑う。
小窯を使うのは北郷の炭焼きだけ。紀州と土佐の炭窯には備わっておらず、クチカケの下側「ハラセ」を開けておき、ここでテギをたく。この手法だと数時間おきにたかなければならない。一方、小窯だと朝晩だけで済むため、管理は楽。ハラセを使うよりも乾燥に時間はかかるが、じっくりたくことで、ひび割れを少なくできるのもメリットの一つだという。「ハラセでたくのは炭木を『あぶる』、小窯でたくのは炭木を『いぶす』イメージですね」。博貴さんはそう話す。

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炭化は酸素を遮断した状態で炭木を加熱し、炭素に富んだ物質に変化させること。これにより炭は多孔質になる。すると酸素が内部に入るため燃えやすく、火持ちの良い炭になるという。
乾燥し終えたら、この炭化を起こすため、火力のあるテギを次々にくべて窯内の温度を約300度に上げる。反応が始まると酸素が入らないよう、煙の色や匂いを基準に2日をかけて排気口や少しだけ開けておいたクチカケ上部の穴をふさいでいく。この工程を「火上げ」という。
この微調整が難しい。排気口をふさぐのは直径4ミリの鉄製の棒。これを1本置くだけで酸素量が変わってしまう。博貴さんは「酸素を入れすぎたら炭が割れたり砕けたりします。逆に足りないと良い炭にはなりません」と、1日目は1、2時間おきに調節している。
匂いの基準は「甘い、辛い、苦い、きな臭いかどうかです。甘い、もしくは辛い匂いを維持できるとだいたいうまくいきます。それ以外だと消し炭のようになり、備長炭ではなくなってしまいます」。煙の蒸気をなめ、料理人のように味で判断することもある。
調整の最終段階には、直径2ミリの焼き鳥用の串を用いる。炭の出来栄えを左右する大事な工程のため、車中泊も多い。その際は、愛犬のフクと一緒だ。火上げは博貴さんの仕事。だから、朝子さんはいつも「フクちゃん、お父ちゃんをよろしく頼む」と送り出す。

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約1週間の炭化が終わると、閉じきっていたハラセを徐々に開けて窯に酸素を入れ、硬度を高めるため約1000度まで温度を上げていく。冷たい空気をいっぺんに入れると崩れてしまうため、この工程も24時間態勢で行う。もちろん愛犬のフクも一緒だ。
博貴さんは「炎の立ち方や色を見ながら、レンガを取り外します。1度外すと元に戻せないので、1〜2時間置きに様子を見に行っています」と、神経を使って作業に当たる。
この工程から炭が黄金色に輝き始める。その美しさは「オーロラよりきれいだそうですよ」と朝子さん。写真家のアシスタントとして北極や南極に行ったことのある知人が炭窯を訪れた際、そう話していたという。
ねらしの後は、炭を取り出す窯出し。その約6時間前からは、車で仮眠しながら様子をうかがう。「この時、寝過ごして炭が全部灰になる夢をよく見ます。本当に焦って飛び起きます。良い炭が出てくる夢は、まだ見たことはありません」。博貴さんは苦笑いを浮かべる。

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長さ約6・5メートルのステンレス製の棒を、小屋の天井からつるした鎖に引っかけて操作し、ねらしを終えた炭を取り出す。窯内の温度は1000度を優に超え、窯から約4メートル離れていても肌を突き刺すような熱に襲われる。
炭は溶かした鉄のように黄金色に光り輝き、カーンカーンという金属音を響かせる。博貴さんは炭を取り出し、それを一本一本、朝子さんが冷ますための鉄製の箱に入れる。約10時間、この作業を繰り返す。
箱に入れた炭は、土に灰と炭の粉を混ぜた「スバイ」にいけ込み、最低2日間冷ます。スバイをかけた時に白くなるため、備長炭は白炭とも呼ばれる。
灼熱(しゃくねつ)の現場では、博貴さんは真冬でも半袖。「夏場は地獄。暑すぎて、服を着たまま水をためているタンクに入るんですが、作業を始めるとすぐ乾きます。最初の頃は顔をやけどしました」と笑う。

炭切り
炭を切って長さや重さ、太さなどが異なるさまざまな規格に仕分ける。この工程は主に朝子さんの仕事。一般的に丸のこが使われるが、「うるさいし、けがしそうだから」と、朝子さんは、おのを用いる。
その分、時間がかかる。終わるまでに約1週間。1本1本カットし、規格別に箱に入れる。炭同士がぶつかり、カランコロンと心地よい金属音が響く炭窯で、朝子さんは黙々と手を動かす。
「窯の中は見えないから、結果で考えるしかないんです」と、作業中は炭の良しあしやなぜそうなったかを考える。もちろん、お客さんのことも。「元気かな。コロナでしんどい思いしてないかなって。会えてないから、なおさら思いますよね」


◆炭の魅力伝えたい−生産者の減少が課題

 美郷町備長炭製炭技術保存会は2014年に設立された。これを呼び掛けたのが博貴さんだった。

 「紀州備長炭の製炭技術は、1974年に和歌山県の無形民俗文化財に指定されています。後世に受け継がれるよう、北郷の備長炭も県の文化財にできないか。そのためにはまず、母体が必要でした」。そう思ったのがきっかけだ。

 設立した翌年には町の無形文化財に。その6年後の2021年には県の無形民俗文化財に指定され、目標は達成された。博貴さんは「周りの皆さんの協力のおかげですし、スムーズだったのは運が良かったんだと思います」と、控えめに喜ぶ。

 だが、会員数は昨年10月時点で29世帯。その半分以上を60〜70代が占め、生産者数の減少と会員の高齢化という課題は残ったままだ。博貴さんは「文化財の指定で少しでも状況が変われば」と願う。

 課題解決の一つの方法として、保存会は宇納間地蔵尊大祭に合わせ「火鉢でお餅を焼こう会」を開催。イベントでは、炭火になじみがない人々に火鉢を囲む楽しさや炭で焼く餅のおいしさを体験してもらっている。

 ただ、「炭焼きが後世に受け継がれていくためには、魅力の伝え方も考えなければならないと感じています」と朝子さんは言う。その魅力とは何なのか。

 「里山は自然資源を供給するだけではなく、生物の多様性や豊かな川、海を守っています。良好な景観維持や文化の継承、水源かん養や治山などの役割も担っています。木を切り炭を焼くことは、その里山を守る営みでもあるんです」

 そしてこう願う。

 「おいしい魚を食べたり大雨が降ったりした時など、里山を守る炭焼きのことを思い出してもらえるくらい理解が深まり、大なり小なりいろんな人に関わる仕事だと分かってもらえるとうれしいですね」

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