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立つだけで雰囲気変えた故・椛山さん
◆「いつかは僕も、そんな存在に」
県北唯一の市民オーケストラ、延岡フィルハーモニー管弦楽団(延フィル)の指揮者に就任した渡邊祥吾さん(30)=門川中学校音楽教諭、日向市向江町=。延フィルを長年けん引し、昨年12月に亡くなった音楽監督・椛山達己さん(享年69)からバトンを引き継いだ若き指揮者に、今の思いを聞いた。
−−30歳という若さで就任。戸惑いはなかったのでしょうか。
責任の重さをすごく感じています。ただ、音楽を愛する者にとってオーケストラの指揮者は、憧れであり夢。声を掛けていただき、うれしく思っています。
椛山さんに指揮法などを学ばれていたそうですね。
椛山先生から「習いに来ないか」と声を掛けてもらい、個人的に約2年間、椛山先生の自宅で、2週間に1回のペースで指導を受けていました。
初めは吹奏楽の指揮を中心に。それから「いずれはオーケストラも振れるようになりなさい」と言われ、2020年夏から延フィルの練習で、椛山先生の不在時に代わりに振るようになりました。
−−椛山さんの下で、どのような学びがありましたか。
大学時代に吹奏楽の学生指揮を経験したこともあり、簡単な指揮法は分かっているつもりでしたが、椛山先生には姿勢から教えていただきました。
一番自分の中で変わったことは楽譜の読み込み方です。それぞれの楽器が持つ一音一音をすべて細かく理解しなければ、アンサンブルはつくれないことを学びました。
いくら楽譜を読み込んでも時間が足りません。椛山先生はよく「指揮者は一生勉強」「人生何周しても勉強し足りない」とおっしゃっていましたが、その意味を今、実感しています。
−−椛山さんと生前、後継者について話をされたことはあったのでしょうか。
一度だけ、そういう話をされたことがありました。「自分の後継者をつくっていかないといけない」と。
−−オーケストラにとって指揮者は、どのような存在だとお考えですか。
当たり前のことですが、いろいろなことを決断し、リードしていく存在です。自分が迷うと、それが音楽に出てきます。椛山先生からはよく「りんとした指揮をしなさい」と言われていました。
−−これから延フィルを、どのようにリードしていきたいと考えていますか。
アマチュアオーケストラなので、仕事をしながら活動している団員が多く、どうしても個人のレベルに差が出てきます。そんな中、せっかく練習に出てきてくれる団員の皆さんに少しでも「練習に参加して良かった」と思ってもらいたい。そのために少しでも楽しく、レベルを上げていきたいと頑張っています。
椛山先生は常々「ふるさとを大切にしなさい」とおっしゃっていました。僕は県北出身ではありませんが、延フィルがいかに地域に愛されているか、いかに大事に育てられてきたかを感じています。
椛山先生が大事にしてきた地域への姿勢を、これからもしっかり引き継いでいきたいと思っています。また、椛山先生は「県北の文化を象徴するのが延フィルだ」ともおっしゃっていました。「レベルが下がった」と言われないよう、その言葉を大切にしながら頑張っていく覚悟です。
−−どのような指揮者を目指されますか。
椛山先生は、先生が指揮台に立つだけでオーケストラの雰囲気が変わりました。先生の人生そのものが、そうさせたのだと思いますが、いつかは僕も、そんな存在になりたいと思っています。
【プロフィル】宮崎市生まれ。福岡教育大学教育学部音楽科を卒業後、公立中学校の音楽教諭に。財光寺中学校(日向市)への赴任を機に2017年4月、トロンボーン奏者として延フィルに入団した。先月開かれた団員総会で延フィルの指揮者に就任。6月18日に延岡総合文化センター大ホールで開かれる「第14回ファミリーコンサート」でデビューする。現在は門川中学校(門川町)に勤務し、同中吹奏楽部を指導。声楽もたしなみ、県北ゆかりの声楽家らで結成する「ひむかオペラの会」会員としても活動する。
◆6月18日にファミリーコンサート
延岡フィルハーモニー管弦楽団(北林鉄平代表、団員33人)の「第14回ファミリーコンサート」は6月18日午後6時30分から、延岡市東浜砂町の延岡総合文化センター大ホールで開かれる。ファミリーコンサートとしては2016年以来、6年ぶり。来場を呼び掛けている。
第1部は、弦楽器と管楽器の音色を比べて楽しむプログラム。曲目は▽ベートーベン作曲「交響曲第7番」第1楽章▽チャイコフスキー作曲「弦楽セレナーデ」第1、2楽章▽ホルスト作曲「吹奏楽のための第1組曲」(伊藤康英校訂版)。
第2部は、ドボルザーク作曲「交響曲第9番『新世界より』」第2、4楽章を解説付きで演奏する。弦楽器教室(のべおか文化事業団主催)の生徒らによる「ドラゴンクエスト」序曲などの演奏もある。
指揮は延フィルの指揮者に先月就任した渡邊祥吾さん、司会はフリーアナウンサーの薗田潤子さん。
チケット千円(全席自由)。延岡総合文化センター、日向市文化交流センターなどで扱っている。未就学児は無料。