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巨大紅渓石に鳴鶴の書

本紙掲載日:2022-06-16
7面

宮大・山元准教授が研究

◆「英霊気節巌霜烈日」碑−京都の大学教科書に掲載

 亀井神社の「英霊気節巌霜烈日」碑が、今春発行の京都芸術大学(旧・京都造形芸術大学)通信教育部美術科・書画表現コースのテキスト「書画美への招待〜書法2書人とその展開」(藝術学舎)で紹介されている。

 著者は、宮崎大学教育学部准教授の山元宣宏さん。京都大学博士。東洋文字文化に関する優れた研究者などに贈られる立命館白川静記念東洋文字文化賞受賞。

 2011年に亀井神社の石碑と出合って以来、研究を進め、14年には福岡市で開かれた「世界漢字学会」で研究成果を中国語で発表している。

 石碑は、延岡藩主内藤家の中興の祖である内藤家3代の家長と、その次男元長をたたえている。家長・元長親子は、関ケ原の戦いの前哨戦といわれた伏見城の攻防で討ち死にした。300年後の明治32(1899)年、内藤政挙が大祭典を行い、その際に旧藩士らが建立した。

 高さ2メートル15センチの巨大な紅渓石(こうけいせき)の表側に隷書で「英霊気節巌霜烈日」、裏面には親子の功績が見事な楷書で刻まれている。

 山元さんによると碑文の書は、明治・大正時代の書壇の第一人者で、「明治の三筆」と呼ばれる近代書道の確立者の一人、日下部鳴鶴(くさかべ・めいかく)が62歳の時に揮毫(きごう)。

 石碑の「力強い楷書と特徴的な隷書」に注目した山元さんは、なぜこのような書風で書かれたのかを探究。「外的な影響が大きい」という。

 その一つは、明治13(1880)年、鳴鶴が43歳の時に中国から来日した楊守敬(ようしゅけい)。彼が携えて来た古い石碑の拓本に鳴鶴は学んだ。山元さんは「北魏の石碑に影響を受け、鳴鶴の力強い楷書の根底になっている」という。

 もう一つの要因は、明治24(1891)年、鳴鶴54歳の時に訪中し、清国で楊(ようけん)ら一流の学者や文化人と交流したこと。

 亀井神社の石碑表の隷書は、漢碑を学んで特異の隷法を導き出した楊の影響が明らかだという。

 山元さんは大学テキストで石碑について「日本書道史における転換を象徴する鳴鶴書法の、完成期に至る前の形成過程を考えるうえで、亀井神社に現存する『英霊気節巌霜烈日碑』は、大変貴重な石碑といえます」と述べている。

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