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ココカラSDGs−第17回「新しい教育から考えるSDGsアクション」(下)

本紙掲載日:2022-08-25
7面

◇答えは人の数だけある−読谷山市長
◇強烈だった海、サーフィン−枡野さん
◇地球は偉大です−難波さん

−−「第4の存在」である延岡こども未来創造機構について、枡野さんはどうお感じですか。

〈枡野〉ぜひ読谷山市長に伺いたいことがあります。学校はどこに主眼を置き、「第4の存在」はどう学校を補完していくのでしょうか。

〈読谷山〉すごく大事な視点です。学校は文部科学省が定めた学習指導要領に基づいてベースとなる教育を頑張っていただきたい。
そして「勉強に対してもう少し理解を深めたい」「楽しくないけど、別のことなら楽しめる」という子どもに対しては、別の主体が学びの場として提供していくことがとても大事だと思います。
「答えは一つしかない」と思いがちな部分があるかもしれません。そうではなくて、答えは人の数だけあるのです。
例えば、STEAM教育でブロックを使って飛行機や車を作る時、車を作った子どもが優れていて、飛行機を作った子どもが劣っているということはありません。それぞれの答えがあります。
伸び伸びと学ばせることは学校でもできると思いますが、学校とは違う場所で行うことで、学校で学んだことも生かせて、学校の学びも楽しくなると思います。
先生が安心して子どもたちに紹介できるような初歩的な存在があることで、すべての子どもにチャンスが提供できます。まさに学校と連携して、互いに補完し合って、強みを発揮する関係になると考えて事業を展開しているところです。

−−枡野さんは私立学校である英数学館(広島県福山市)の広報部長を務めています。

〈枡野〉英数学館は約40年前に創立された私立の小学校、中学校、高校です。全国に先駆けて、国際バカロレア教育を導入しています。
正解が一つしかない問いを早く効率的に正しく解くといった、19世紀から20世紀にかけて工場で必要とされた機械のような人間をつくる教育は、30年前に時代遅れになっています。
それにもかかわらず教育改革はなかなか進まず、文部科学省は大幅に改訂した学習指導要領を2020年度から、小学校から順に実施しています。その手本となっているのが、国際バカロレア教育と言われています。
国際バカロレア教育は、さまざまなバックグラウンドを持つ人が、共に学ぶにはどうすれば良いかに主眼が置かれています。
例えば、世界史の中で一つの戦争に焦点を当てると、今まさに有事の状況に置かれているウクライナとロシアの出身の子どもでは、見方が180度異なります。
これに対して中国、アメリカ、イギリスの子どもたちは親から違う歴史を聞きます。しかし、その子どもたちが同じ教室で同じことを学ぶ時に、教師はどのように何を教えれば良いのか、正解がありません。
そのような中で重視されることは対話です。対話とはディベートではなく、まずは相手の話に耳を傾けること、相手の立場を一度理解してみること。このことがベースにある教育プログラムが必要です。
文部科学省は、国際バカロレア教育の導入校を全国に200校つくろうと進めています。しかし、一条校として導入している学校は非常に少ないです。
特に小学校で導入しているのは、全国で10校もありません。その中の1校が英数学館です。そこに娘を通わせながら、私も実践的に国際バカロレア教育について学んでいます。
また、早稲田大学の入学者の60%は総合型選抜入試(旧AO入試)を受けて入学しています。つまり、正解が一つしかない偏差値的な受験勉強をした入学者は40%しかいないことになります。少数派になりつつあるのです。
そう考えると、学習塾や学校などで答えがある問題をひたすら解いてきた子どもたちは大学進学できなくなる時代が来ます。
社会に出ると仕事に正解はありません。みんなで同じものを作っていた30〜50年前の「より早く」「より美しく」という工場の時代には、正解があったのかもしれませんが、嗜好(しこう)の多様化が進んでいる今、ニーズに対して柔軟に対応する働き方ができる社会人が必要とされています。
画一的に同じものを作ることは、これからすべて機械やAI(人工知能)がやります。私は「人間って何なのか」「人間が生きるってどういうことなのか」という時代に入ったと思っています。

〈難波〉現在、大学入試は大きく変わろうとしており、答えがない問いを自分なりに、あるいは友達と共に納得できる答えを見つける力が必要とされています。
新しい学習指導要領では、この力を身に付けるための探究学習が組み込まれていますが、まだ踏み込めていない地域では、延岡こども未来創造機構のような「第4の存在」が生かされていくと思います。

−−枡野さんが今月上旬に実施した「日向サマースクール」について教えてください。

〈枡野〉数年前、日向市でサーフィンの世界大会を見ました。世界42カ国から約550人の選手団が参加し、日向市のポテンシャルの素晴らしさを感じました。
また世界平和を考えた時に、いきなり世界人口の77億人を対象にするのではなく、数えられるくらいの人たちが一堂に会して、仲良くなることが世界平和につながると思いました。
例えば、カナダやスイスには世界中の人々が交流できる学校があります。日本にはまだまだ少ないですが、長野県軽井沢町にある「ISAK(アイザック)」という学校はとても良い例で、第二の故郷として日本を思ってもらえるような学校です。
このような学校を日向市につくったら、ものすごく面白いと思いました。毎年数十人が世界中から集まって、ゆったりと対話を重ねて自分自身を再発見し、世界に帰って行くことができたら、世界と日向市がつながり、平和の輪が広がっていくと思い、日向サマースクールを構想しました。
8〜10歳を中心とした子どもたち7人で、サーフィンをしたり、地域の農業体験や漁業体験、海岸沿いを歩いて地形を学んだりして、毎日いろいろなアクティビティーを楽しみました。そして気付いたことや学んだこと、感じたことを対話するという4泊5日のサマースクールでした。
一番強烈だったのは、海のすごさ、サーフィンのすごさです。参加者の半分は国際バカロレア教育をすでに受けている子どもたち。半分は日本の公立校の子どもたちでした。
国際バカロレア教育で育った子どもたちは、枠にとらわれないので園児のように思い付いたことをすぐに発言し、公立校に通う子どもたちが手を焼いている印象でした。
しかし、海に入るとみんながお互いを励まし合い、譲り合っていました。日向市の海でサーフィンをすることで、子どもたちが一つになっていることが分かりました。

〈難波〉地球という大きなものを目の前にすると、そうなるのでしょうね。地球は偉大です。

〈枡野〉海を見て「この海が世界につながってるんですね」、流れてくるごみを見て「あれはだめだよね」と話す子どももいました。学校で習った知識が納得できた、学びのあるサマースクールでした。読谷山市長がおっしゃったように、遊びは最高の学びであることが、まさに当てはまります。

〈読谷山〉延岡こども未来創造機構にも自然体験のプログラムがあります。自然の中には楽しさの他に、怖さもあることを学びます。また、怖い思いをするからこそ、そばにいる仲間のありがたさも分かります。
枡野さんの取り組みも勉強させていただき、掛け替えのない体験を通し、子どもたちの生きる力を育むことができたらと思っています。


【第17回の出演者】
〈ゲスト〉延岡市の読谷山洋司市長、TOOT(トゥート、本社・東京都)顧問の枡野恵也さん。
〈アドバイザー〉SDGsコミュニケーター難波裕扶子さん(日向市)。
〈ナビゲーター〉松田祐子さん(FMのべおか)。

□第17回の再放送□
25日午後8時、28日午前11時からの2回(おわり)

□第18回の内容□
〈テーマ〉「SDGsって今どうなの?」
〈ゲスト〉グローバル・クリーン(日向市)専務の税田倫子さん、池上冷熱(延岡市)専務の新名裕一さん
〈放送日〉9月15日午後1時から
〈再放送〉9月22日午後8時から、同25日午前11時からの2回






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