キレンゲショウマに会いに－諸塚村の黒岳

本紙掲載日：2022-09-02

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観察ツアーで保護区域へ、シカ食害の現状も

　黄色い愛らしい花を咲かせる高山植物キレンゲショウマに会いに行く観察ツアーが８月、群生地のある諸塚村の黒岳（標高１４５５メートル）であった。

　キレンゲショウマは、環境省のレッドデータブックで絶滅危惧Ⅱ類に指定されており、黒岳では数年前からシカの食害により、著しく数を減らしている。

　観察ツアーは黒岳の多様な希少植物を楽しみ、人間と自然の関わりについても感じてもらおうと、同村観光協会（尾形浩一理事長）が毎年企画している。

　今年も開花に合わせ、計４回実施した。このうち１８日には県内外から５人が参加。小雨が降り、あいにくの天気となったが、広葉樹林内はうっすらと広がる霧と、ときおり差し込む日の光で幻想的な雰囲気に包まれた。

　黒岳にはキレンゲショウマのほか、石灰岩質ならではの希少植物が二十数種類自生しており、この日は同村観光協会事務局長の田邉薫さん（３８）の案内で、登山道沿いにひっそりと自生するクラマゴケ、ヤマシャクヤク、ヒナノウスツボなどの希少植物を観察しながら歩いた。

　キレンゲショウマの群生地には、登山口（標高約１２００メートル）から約１時間で到着。シカの食害から守るため、地元では一帯を保護区域として、何重にもネットを張って必死の保護活動を続けている。観察ツアーでは特別に、普段立ち入ることのできない区域内を案内している。

　群生地は広葉樹林内の谷間の斜面にあり、高さ１メートルほどに青々と茂ったキレンゲショウマの群生が、まるでホタルが飛んでいるかのように直径２センチ、長さ４センチほどの黄色い花を鮮やかに咲かせていた。

　数年前に初めて参加し、キレンゲショウマの愛らしさに感動したという延岡市の女性（５３）は「あの時と比べ、群生地の規模がかなり小さくなっていて驚いた。守ってくださっている地元の人たちに感謝し、いつの日か、また以前の姿に戻ることを願いたい」と話した。

　田邉さんによるとシカの食害は３、４年前に深刻化し「地域と行政が一体となって、ようやくここまで回復した」という。「黒岳の多様な希少植物に触れながら、シカの食害の現状も見てもらい、人間と自然の関わりにまで踏み込んで感じてもらえたら」と話した。