貴重な環境守って

本紙掲載日：2022-12-05

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熊野江川河口海浜域を学ぶ－南浦中で講演会

◆延岡３カ所目の県重要生息地

　今年新たに県の重要生息地に指定された延岡市の「熊野江川河口海浜域」について学ぶ講演会がこのほど、同所に近い南浦中学校体育館であり、現地調査に当たった宮崎大学名誉教授の三浦知之さん（生物環境科学科）と県北植物愛好会の成迫平五郎さんが、全国的にも特異な生態環境を末永く守っていくよう訴えた。

　２０万平方メートルの同海浜域は、川の淡水と海水が混じる汽水域に干潟も広がり、２０１５年版県レッドリストに掲載された植物２５種、魚類６種、汽水産甲殻類・貝類８種が生息。環境省レッドリストに掲載されている生物も多数確認され、今年３月に県内で１４カ所目、うち市内では家田・川坂湿原（０９年）、友内川（１９年）に続いて３カ所目の県重要生息地となった。

　三浦教授は自らの調査で発見し、名前に地名を入れた「クマノエミオスジガニ」を紹介。全国的にはかなり有名なカニにもかかわらず、地元ではほとんど知られていないことを残念がった。

　調査では１７７種類（貝７１、甲殻５８、ハゼ２７、他魚２０、ナマコ１）の生き物を確認。エビとハゼが同じ巣穴で共生したり、貝類の一種が同じ水域で一生を送るなど、全国でも熊野江にしか存在しない生態環境があると、貴重さを強調した。

　その理由として川が平らで小さな澪（みお＝分流）がある▽淡水と海水が混じった非常にいい環境▽人口が多くなく上流に工場がないなどにより好環境が保たれてきたためと説明。一方、過去には樹木への農薬散布で水域の甲殻類が絶滅しかけた時期があったとして、「若い人にこの地域を大切にしてほしい」と期待した。

　成迫さんも絶滅危惧Ⅰ類のナミキソウ、準絶滅危惧種のハマボウフウなど、指定区域に自生する貴重な植物を写真とともに紹介。「海のゆりかご」とも例えられるように、河口一帯が多種多様な生き物のすみかや栄養供給地になっていると説明した。

　その上で、最近はシカの食害が確認されており、防護ネットの設置などに努めていることを報告。一部の種類でも植物が減ってしまえば連鎖的に生態系が崩れる恐れがあるとして、「今後も定期的に観察会を開いたりして地元の人たちと見守り、保護活動を継続したい」と決意を語った。

　講演会には地元住民を含め約３０人が参加し、終了後は希望者が三浦教授と成迫さんの案内で、熊野江川河口の干潟や海岸側を見学。南浦中から参加した長濱宙斗（ひろと）さん（２年）は「地元で新種の生き物が見つかっていたことは知りませんでした。自分たちの地域だけでなく広い視野でごみ問題などを考えていかなくてはいけないと思いました」と話した。