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ふるさとの子どもたちへ−牧水が切り取ったページ

本紙掲載日:2023-03-16
1面

少年倶楽部1924年2月号−額装し坪谷小へ届ける

◆夕刊デイリー新聞社の書庫から見つかる

 若山牧水(1885〜1928)が手ずから切り取ったと思われる「やよ少年たちよ」初出のページが、夕刊デイリー新聞社の書庫から見つかった。編集委員だった秋山栄雄氏(2004年死去)が保管していたものとみられる。講談社(当時は大日本雄弁会)が発行した「少年倶楽部(くらぶ)」1924(大正13)年2月号の一部。

 添えられていた手紙によると、牧水の高弟で研究者だった大悟法利雄氏(1898〜1990)が牧水本人からもらったもので、大悟法氏が亡くなる前年に秋山氏が預かったようだ。大悟法氏は、牧水の母校坪谷小学校(日向市東郷町)に寄贈する予定だったと考えられることから、弊社は14日、額装して同小に届けた。

◇高弟の大悟法氏が大切に保管

 「やよ少年たちよ」は、「若竹の−」を第1首とし、いずれも子どもに向ける温かな視線が感じられる9首の連作。少年倶楽部は、1914(大正3)年から62(昭和37)年まで発行された児童向け月刊誌で、読者が読みやすいよう、ほとんどすべての漢字に、かなが振られている。

 大悟法氏の手紙には「これは(中略)牧水先生が切りぬかれたのを私がいただいて大切に持っていたものです」「このお歌は全国の子供たちに呼びかけているのですが先生はこのとき(自分の)お子さんたちやふるさと坪谷小学校の生徒たちを思いうかべながらお話をするような気持ちでお作りになったものと思われます」と書かれている。

 「やよ少年たちよ」は、巻頭の「二月の言葉」に続く2ページ目と3ページ目に掲載された。切り取られた2ページ目の裏(巻頭言のページ)には、「大正十三年二月号少年倶楽部」とペン書きがあるが、誰が書いたかは不明。

■やよ少年たちよ

 若竹(わかたけ)の伸(の)びゆくごとく子(こ)ども等(ら)よ真直(ます)ぐに伸(の)ばせ身(み)をたましひを
幼(をさ)な日(び)の真澄(ます)めるこころ末(すゑ)かけて濁(にご)すとはすな子供等(こどもら)よやよ
速(すみや)かに過(す)ぎゆくものをやよ子等(こら)よ汝(な)が少年(せうねん)をおろそかにすな
忘(わす)れても汚(けが)すとはすな汝(な)がために再(ふたた)びは来(こ)ぬ少年(せうねん)の日(ひ)を
うつくしく清(きよ)き思(おも)ひ出とどめおかむ願(ねが)ひを持ちて今(いま)を過(すご)せよ
人(ひと)の世(よ)の永(なが)きはげしき働(はたら)きに出(い)でゆく前(まへ)ぞいざ遊(あそ)べ子等(こら)
子供等(こどもら)は)子供(こども)らしかれ猿真似(さるまね)の物真似(ものまね)をして大人(おとな)ぶるなかれ
いぢけたる面(つら)は醜(みにく)しのびのびとそだてよ子等(こら)よ事(こと)にたゆまで
生意気(なまいき)は見(み)にくきものぞ生意気(なまいき)の人(ひと)若しあらば見(み)ておもへ子等(こら)
老(お)いゆきてかへらぬものを父母(ちヽはヽ)の老(お)いゆくすがた見守(みまも)れや子等(こら)
(編集部注・旧漢字は常用漢字に改めました)

※9首とも、牧水没後10年の1938(昭和13)年9月、妻喜志子と大悟法氏によって発行された第15歌集「黒松」に収録されている。第2首は、初出とは異なる「をさな日の澄めるこころを末かけて濁すとはすな子供等よやよ」が収められた。

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