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川面に揺れる灯籠

本紙掲載日:2023-08-21
1面
灯籠を流して先祖の霊を供養する盆納めの伝統行事「流れ灌頂」(延岡市亀井橋下流の五ケ瀬川河川敷)

延岡市仏教会が流れ灌頂

 灯籠を川に流して初盆や先祖の霊を供養する延岡市仏教会(野中玄雄会長、32カ寺)の伝統行事「流れ灌頂(かんじょう)」が19日、同市亀井橋下流の五ケ瀬川河川敷で営まれた。

 大雨による増水の影響で、前日から延期となったが、会場には午後6時ごろから多くの人が詰め掛け、川岸で静かに手を合わせながら、流れゆく淡い光を名残惜しそうに見送っていた。同仏教会青年部の僧侶が受け取って川に浮かべた灯籠は水面(みなも)にゆらゆらと明かりを反射させながら、夜風に乗ってゆっくりと漂った。

 会場に設置された慰霊所では、市仏教会の住職たちが法要を営んで供養。供養花火も打ち上がり、来場者は夜空を彩る鮮やかな光を見守りながら、穏やかな時間を過ごしていた。

 病気で亡くなった父を見送りに愛媛県から帰省したという60代女性は「ご焼香の時も、常に生前の父の姿を思い出していた。帰ってきてくれてありがとう。お別れだね。向こうに行っちゃうのね、という気持ち。来年もまた帰ってきてね、とお願いした」と話していた。

 野中会長は「毎年、灯籠の光に命の移り変わりを実感する。きょうに感謝し、明日に向かっての英気を養い、仲良く、平和に歩んでいきましょう」と願いを込めた。

 秋山栄雄著「民俗探訪ふるさと365日」によると、流れ灌頂は無縁や迷う霊を供養する「流れ灌頂」と祖先と初盆の霊を慰め灯籠で送り出す「精霊流し」が重なったもので、川に恵まれた延岡独自の盆行事。1926(大正15)年発行の書物に「約90年前に始まった」と書かれており、190年以上前の江戸時代に始まったとみられている。

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