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電力の地産地消災害に強いまちへ

本紙掲載日:2023-08-29
1面
「脱炭素先行地域」に選ばれた一ケ岡地区での住民説明会(27日、延岡市立一ケ岡小学校体育館)

延岡市・脱炭素先行地域−一ケ岡地区で説明会

◆2770世帯、民間65施設など対象

 延岡市は26、27日、国から「脱炭素先行地域」に選ばれた一ケ岡地区で住民説明会を開いた。読谷山洋司市長自ら出向き、モデル地区ならではの有利な制度を活用してもらいながら、「電力の地産地消」や災害に強いまち、マイカー依存からの脱却などを実現していく考えを示した。

 脱炭素先行地域は政府目標の2050年に先駆け、30年度までに温室効果ガス排出の実質ゼロを目指すモデル地域。環境省は25年度までに農山漁村や都市部など100カ所以上の選定を進めている。昨年11月の第2回選定で全国50カ所の提案の中から、延岡市など20カ所(23自治体)が選ばれた。県内では唯一となる。

 対象は北一ケ岡1〜4丁目と南一ケ岡1〜7丁目の住宅2770世帯、民間65施設、公共2施設。公募で選ばれたみやまパワーHD(本社・福岡県)、ジャパンインターナショナル総合研究所(同)、パナソニックが現地に共同で立ち上げる「延岡脱炭素エネルギーマネジメント」が実施主体を担う。

 住民や事業者は同社と電力契約を結ぶことで、太陽光発電パネル(屋根、カーポート型)や蓄電池、EV(電気自動車)充電器、省エネ性能が高いエアコンやエコキュート(給湯器)、LED照明を初期費用ゼロ円で設置できる。

 また、これらの設備やEVの購入・買い替え、住宅の断熱改修などにも手厚い補助を用意。補助金の申請は10月1日から受け付けを開始し、改めて事業やサービス内容を回覧で周知するという。

 一方、市は集約・再編事業に取り組んでいる一ケ岡市営住宅の建て替えや、今後、地区内に整備する南部地域子育て支援施設も、木造で再生可能エネルギー利用や省エネを基本とする「ゼロ・エネルギー」型を採用することにしている。

 住民説明会には2日間で計約120人が来場。27日の説明会で読谷山市長はこうした公共施設整備の計画や、複数ルートで運行している乗り合いタクシーなど、一ケ岡地区に脱炭素の下地があることで先行地域に選ばれた経緯を報告した。

 また、同事業で太陽光発電設備を導入した住宅や事業所の余剰電力は売電できないが、地区全体の蓄電量を把握し、大規模停電が発生した際は地区内で融通し合う仕組みを構築する考えを説明。「停電のない、災害に強いまちづくりにも効果が大きい」と力を込めた。

 参加住民からの質問もあり、「電力会社(延岡脱炭素エネルギーマネジメント)は倒産しないのか」の問いに対して市の担当者は、近年全国で相次いだ新電力の倒産は発電所を持たずに市場調達価格が高騰したことが原因だと説明。

 一ケ岡地区では契約者の太陽光パネルが発電所となるため市場調達の必要がないことを伝え、読谷山市長も「市としてもしっかりチェックし、介入していく」と安心するよう理解を求めた。

 地区内に勤務する50代男性は「事業所の建て替えに合わせ脱炭素に貢献できないかと参加した。ぜひ、太陽光発電設備やEVを導入したいと思った」。

 4人家族で地元に居住する50代女性は「脱炭素の生活にはずっと関心があったが費用面でできなかったので、今回の事業はとてもありがたい。ただ、一ケ岡は高齢化が進み空き家も多いので、取り組みがどれだけ広まるかが心配」と話した。

一ケ岡地区脱炭素先行地域づくり事業の概要は次の通り。

【事業計画名】高度成長期を支えた住宅地のカーボンニュートラルによる再生と強靱(29日じん)化モデル〜ニュータウン脱炭素再生戦略

【計画事業費】総事業費=52億9861万円(うち交付対象事業費52億5339万円、交付限度額37億905万円)

【2030年度の数値目標】一ケ岡全人口に対する50歳以下の人口割合=50%(2022年8月現在44・7%)▽非常用電源(大型蓄電池)確保箇所=4カ所(同0カ所)▽EV入れ替え・導入普及数=千台(同数値なし)

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