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県域JA、来年4月発足−県北3JA組合長に聞く(中)

本紙掲載日:2023-10-11
1面

JA日向海野真吾組合長−産地連携で直売充実へ

−−農業協同組合(JA)は、長い歴史の中で合併を重ね、地域的に統合されてきた組織です。県域JA構想はその大きな区切りになると思います。

JA日向は1973年当時、現在の日向市、門川町、入郷地区にあった8農協が県内で最も早い広域合併で誕生しました。今年は50周年の節目の年でもあります。
当時の先人・諸先輩方が合併の英断をされたことで、今日のJA日向があります。しかし、50年前には想定されなかった人口減少や少子高齢化が、農業のみならず中山間地域の経済活動の衰退を招いています。
特に、ウクライナ情勢や円安による生産資材の高騰と農畜産物の価格低迷は、農家の生産意欲を急速に減退させており、単一JAでは支援に限界を迎えています。今回の県域合併は、全国初の連合会を含めた組織となるもので、財務基盤の強化、人材育成など経営資源がうまくかみ合うものになると期待しています。

−−組合員への説明はいつごろから?その間の反応はどうでしたか。

構想が県連理事会で承認され、6年が過ぎました。15年ほど前には県内を4ブロックに分ける構想も持ち上がりましたが、立ち消えになってしまった。そんな経緯もあり、県域構想は最後のチャンスと捉えていました。
組合員の皆さまには構想の骨格が示された5年前から支店別総代会などで説明してきました。当初は「中山間地域の切り捨てにならないか」「数値化目標が示されていないことで効果が見えない」といった意見もありました。しかし、繰り返し説明させてもらうことで、不安の払拭(ふっしょく)につなげられたと思います。
私も説明会で「50年前、先人の英断があって今の農業、JAがあります。今度は私たちが決断する時です」と説明させてもらいました。農家もJAも時代に合わせて変化してきました。だからこそ生き残ることができたと思っています。

◇流通コスト低減など期待

−−組合員(准組合員含む)や消費者へのメリットは?

組合員には、広域化で「販売量が増え、価格交渉がしやすくなる」「選果・流通コストの低減」「資材価格の低廉化」などが期待できます。また、専門指導員のスキルアップによる支援体制の強化や多彩な事業の人材確保と育成も可能になると思っています。
ファーマーズマーケットなども県下の産地が連携することで直売機能が充実しますし、消費者の皆さまにもメリットが還元できると考えています。
大切なのは、食糧安保の観点から、農畜産物の適正な価格転嫁の意義を広くPRできる機会にもなる点です。例えば、一杯のそばに国産の材料がどれだけ占めているか―。そんなことを考えていただける機会になれば。

−−組織風土の違いや待遇など課題もあると思います。

各JAに歴史や文化の違いがあるのは当然です。しかし、過去に執着しても改革は進められません。
JAの事業は多岐にわたっていますので、優秀な人材を育成・確保するためには、待遇面でのすり合わせも進めなければなりません。
また、伸ばす事業、縮小する事業を見極めて改革する必要も出てくるかもしれません。現実を見つめ、将来の展望を予測して一つ一つの課題解決に努めることが大切です。

◇規模拡大で農家所得向上へ

−−JA日向としては、どのような特色を打ち出していきますか。
いよいよ合併への手続きが現実のものになりました。管内の地域には海抜0メートルから千メートルの標高差があります。従来から進めている、立体園芸(高冷地野菜などのリレー生産体制)振興や和牛繁殖を絡めた採草のための水田活用などに積極的に取り組みたい。また、施設園芸やブロイラーなどの規模拡大で農家の所得向上を図ることが、生き残り策と考えています。

−−そのほか、考えがありましたら聞かせてください。

農畜産物の輸送体制は喫緊の課題です。管内の面積は、香川県の86%に上る広さがあります。都市部への物流コストに加え、遠隔地の生産者が集出荷場に農産物を運ぶ経費も跳ね上がっています。
昨年の台風で被害を受けた幹線道路が完全復旧していないため、遠回りせざるを得ないケースもある。ライフラインと物流網の正常化は切実な問題。早期復旧を行政などに切に要望しているところです。

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