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生活の中にある美(18)−県北の土木構造物

本紙掲載日:2021-04-02
7面

耳川の豊かな水を活用

◆塚原ダムと諸塚ダム(諸塚村)

 諸塚村の塚原ダムは重力式コンクリートダム。堤高87メートル、堤頂長215メートル、総貯水容量3432万6000立法メートル。管理者は九州電力。発電用ダムとして1931(昭和6)年に着工し、総工費約16億円をかけて38年に完成した。

 ダムの右岸には、殉職した44人の慰霊碑が立つ。同社によると、必要なセメントや砂などの材料は、耳川道路と40キロの索道(ケーブル)を使って、延岡市から昼夜兼行で運搬されたという。

 日本で初めて近代的な機械化施工で造られ、堤高は当時日本一を誇った。2004(平成16)年、文化庁の有形文化財に登録され、07年には経済産業省の近代化産業遺産群に認定された。

 諸塚ダムは1960(昭和35)年に完成。堤高59メートル、堤頂長約150メートル、総貯水容量348万4000立法メートル。国内に13基しかない中空重力式コンクリートダムで、九州では唯一。この形式では国内で3番目に古い歴史を持つ。

 九州初の混合揚水発電所、塚原発電所の上池として建設された。揚水発電は、下部の貯水池から水をくみ上げて再利用する方式。川の水も利用しているため、混合揚水発電と呼ばれる。

 耳川の流域面積は881平方キロ、延長は102キロ。豊かな水資源を有するため、耳川水系には堤高15メートル以上のダムが両ダムを含め、八つ造られている。この数は大淀川水系に次ぐ多さだ。

 最上流にあるのが上椎葉ダム、最下流が大内原ダム(美郷町)。その間に岩屋戸(椎葉村)、塚原・諸塚・宮の元ダム(諸塚村)、山須原・西郷ダム(美郷町)があり、生活に欠かせない電力を供給している。

■豆知識
ダムの形式

 県北にあるのは重力式コンクリートダム、中空重力式コンクリートダム、アーチ式コンクリートダム、ロックフィルダムの四つ。

 重力式コンクリートダムは、最も多い形式。コンクリートの重さで水圧を支える。そのため、建設地点の地盤の強さが必要になる。断面の形は直角三角形に近い。コンクリート量が多く、コストがかかる。

 その弱点を補ったのが、中空重力式コンクリートダム。内部に空洞を設け、コンクリート量を節約した。軽くなった分は、堤体の上流側を斜めにするなどして安定性を維持。ただ、複雑な構造で施工に人件費がかかるため、国内では13基しか建設されていない。

 アーチ式コンクリートダムは、水圧を左右と底部の岩盤に伝える構造。重力式とは異なり、両岸の岩盤に十分な強度が必要になる。コンクリート量を節約して建設費を下げるために開発されており、大規模なダムに採用されている。

 ロックフィルダムは、岩盤と土砂を盛り立てて造られたダム。底面積が広く、その広さで水圧を支える。地盤の弱い場所でも建設することが可能。県北には、門川町の門川防災ダム1基しかない。

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