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郷土の歌、被災地への思い…

本紙掲載日:2021-05-07
7面

40周年記念で演奏会−延岡少年少女合唱団

 結成40周年を迎えた延岡少年少女合唱団(工藤由紀子代表、17人)の第33回定期演奏会が2日、延岡総合文化センター小ホールであった。県内外の新型コロナウイルス感染拡大の影響で、合唱作曲家弓削田健介さん(佐賀県在住)の特別出演を直前になって断念するなど内容の変更もあったが、工藤代表の指揮で、未就学児から中学2年生の団員が元気な歌声を響かせた。

 緑色のベレー帽をかぶり、制服姿の団員は、同合唱団のピアノ伴奏者・村本文子さんが演奏する「MUSIC」(弓削田さん作詞作曲)に乗って入場し、ひな壇にそろうと、客席からの手拍子を受けながら元気に歌って演奏会が始まった。

 第1部最初の曲は、第1回定期演奏会で先輩たちが歌った「春を歌おう」。続いて「みかんの花咲く丘」、「橋の日」の歌、国文祭・芸文祭のイメージソング「ひなたの真ん中で」など、延岡にゆかりのある曲、先輩たちから歌い継いできた曲など計6曲を披露。かわいらしい曲目紹介や振り付けに、会場は何度も拍手と笑い声に包まれた。

 第2部は一緒に歌う予定で練習してきた弓削田さん作の「しあわせになあれ」など3曲と、これまでに歌ってきた曲などを歌った。最後はミュージカル「アニー」から、同団で歌い継がれている「Tomorrow」。観客は客席から団員に手を振り、終始笑顔だったステージをたたえた。

 同団は1980年10月、市内の小中学校で音楽を教えていた教員らが中心となり、約100人の小中学生で結成。初代代表の関孝さん(享年89)の指導の下、「やさしい心をうたにのせて」を合言葉に活動してきた。2014年4月に関さんが他界後は、立ち上げ時から関わってきた工藤さんが代表を務めている。

◆いつか一緒に歌いたい「阿蘇」−大津少年少女(熊本)との約束

 第1部では、2016年4月の熊本地震で崩落した「阿蘇大橋」の復興を願って作られた「阿蘇〜あの橋をいつかあなたと〜」(樋口了一作詞、三宅美紀子作曲)も歌った。

 同団の関係者が、五ケ瀬町で開かれたコンサートで曲を聴き、感動したのがきっかけ。紹介された工藤代表は曲について調べるうちに、地元の大津少年少女合唱団(熊本県菊陽郡大津町)が歌っていると知った。

 「楽譜が欲しい」と相談すると、作曲家の三宅さん(福岡県在住)につないでくれた。大津の合唱団も三宅さんも、歌いたいとの思いを喜んでくれた。メールやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)でやりとりし、「大橋が完成したら一緒に歌おう」が共通の約束になった。

 3月7日の開通式で大津少年少女合唱団と合同で歌うことを目指し、急ピッチで3部合唱を仕上げた。だが、新型コロナウイルスの終息は見えず、セレモニーは開かれなかった。

 今はまだ、会うことさえできていない。でも、「いつの日かいつの日かあの橋をあなたとほほ笑みながら渡る日が来ると私は信じている」(歌詞の一部)。子どもたちの優しい歌声が観客を包み込んだ。

 「コロナが終息したらみんなで歌いたい」というのが両合唱団と三宅さんの願い。その日が一日でも早く来ることを願い、歌い続ける。


◇九鬼勉さん作曲「のぼり猿」披露

 第2部では、子どもの立身出世を願って、かつては端午の節句に飾られ、今は郷土玩具として親しまれている延岡市の伝統工芸品「のぼり猿」についての曲も披露された。

 作詞作曲は延岡ガイド・ボランティアの会会長、延岡市観光協会副会長などを務める九鬼勉さん(70)。これまでも地元の観光振興に役立てばと「延岡の四季」「星のシンフォニー」など十数曲を手掛けた。

 今回も「延岡をPRできるものを」と考え、「のぼり猿そのものは知っているけど、由来や歴史的背景は意外と知らない人が多い。歌を通して市内外にPRして、郷土愛を育成できれば」と作った。

 「何度も詩を読み直して校正するうちに、詩の中に隠れていたメロディーが出てきた」と作曲。「子ども向けの曲だから、ぜひ子どもに歌ってほしい」と、昨年秋ごろに工藤代表に託した。

 楽譜を見た工藤代表は「この歌をデビューさせなくてはという使命感を感じた」と、ピアノ伴奏を作った。

 披露するのは、先月行われた延岡今山大師祭奉納演芸大会に続き2回目。団員は、猿が登っていく様子を表した振り付けを交えて、かわいらしく歌い上げた。

 大師祭で最初のステージを見て感銘を受けたという九鬼さんは「郷土を歌った曲。子どもたちに歌い継いでもらい、広まっていけば」と期待した。


「のぼり猿」

(一)赤い褌(ふんどし)ひらひらさせて
   五月(さつき)の空を昇るもの
   あれは何じゃと尋ねたら
   児等(こら)の成長願う猿
   延岡名物のぼり猿
   児等の成長願う猿

(二)むかしむかしのそのむかし
   延岡城下の下級武士
   暮らしのためにつくりたる
   児等の幸せ願う猿
   延岡名物のぼり猿
   児等の幸せ願う猿

(三)菖蒲(しょうぶ)の旗立て鼓背に
   五月の風にするすると
   今日(きょう)も昇るよのぼり猿
   児等の出世を願う猿
   延岡名物のぼり猿
   児等の出世を願う猿



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