３１日「世界禁煙デー」－たばこの健康影響を知ろう

本紙掲載日：2021-05-31

3面

今年度の禁煙週間ポスター

喫煙所でコロナ感染例

◆家庭、職場で受動喫煙防止を

　３１日は「世界禁煙デー」。たばこを吸わないことが一般的な社会習慣となるよう、さまざまな対策を講じるべきとする世界保健機関（ＷＨＯ）の決議で、１９８９年に設けられた。この日から１週間は「禁煙週間」として、各種たばこ対策が推進される。

　今年度の禁煙週間のテーマは「たばこの健康影響を知ろう！～新型コロナウイルス感染症とたばこの関係」。厚生労働省などによると、喫煙は新型コロナに感染した場合、重症化する最大の要因という。

　また、「密閉」「密集」「密接」の３密が重なる喫煙室は濃厚接触の場となり、県内でも喫煙所が感染源になったと疑われる事例が確認されている。県北の各保健所も「自宅にいても家族や近隣への受動喫煙を増やさないようにしましょう。あなた自身と家族、同僚を守るため、この機会に禁煙しませんか」と呼び掛けている。

◆がん死亡の危険因子

　県は目標とする「健康長寿日本一」を達成するため、禁煙推進を重視。パソコンやスマートフォンで見ることのできる「県禁煙サポートサイト」を開設し、たばこの害や禁煙のメリット、禁煙外来の紹介など、禁煙を考えている人を支援する情報を掲載している。

　県健康増進課などによると、日本では現在、喫煙により年間１２万～１３万人が死亡していると推定されている。死因の内訳は、がん７万７０００人、循環器疾患３万３０００人、呼吸器系疾患１万８０００人の合計１２万９０００人で、年間に亡くなる人の約１割に相当すると推定されている。

　喫煙による推定死亡者数に匹敵する危険因子は高血圧のみで、喫煙と高血圧が日本人の死亡に大きく関与していることが示される。がん死亡に限ると、喫煙によるがん死亡者の数は他の危険因子を大きく引き離して最も多く、がん死亡の中心的な危険因子となっている。

◆主流煙と副流煙の有害物質

　たばこの煙は、喫煙により口から直接吸い込まれる「主流煙」と、火のついた部分から立ち上る「副流煙」に分けられる。

　主流煙は、フィルターを通ることにより有害物質の一部が取り除かれるが、副流煙はフィルターを通らないため、多くの有害物質は主流煙に比べて副流煙の方に約２～４倍以上多く含まれている。例えば、副流煙には主流煙よりもニコチンは２・８倍、タールは３・４倍、一酸化炭素は４・７倍、アンモニアは４６倍多く含まれている。

　たばこの煙は空気で薄まりはするが、喫煙者と一緒にいるだけで、周りにいる非喫煙者は少量のたばこを自分で吸ったのと同じような状態になってしまう。これを「受動喫煙」という。

◆確実にリスク上昇－他人のたばこで肺がんなど

　受動喫煙により確実にリスクが上昇することが認められた代表的な疾患は、肺がんと虚血性心疾患。子どもへの影響は、肺炎や気管支炎などの呼吸器感染症、気管支ぜんそくの発病と悪化、せきなどの慢性呼吸器症状、中耳炎がある。また、出生後の受動喫煙は乳幼児突然死症候群（ＳＩＤＳ）のリスクを高める。

　妊婦本人が喫煙した場合は胎児の低体重出生をはじめ、早産、周産期死亡となる危険がある。妊娠中の喫煙もＳＩＤＳのリスクを高める。妊婦本人が喫煙しなくても、夫などによる妊婦への受動喫煙により低体重出生のリスクが高まる。

　他人のたばこを吸わされる「受動喫煙」が原因で死亡する人は、国内で少なくとも年間約６８００人に上ると推定されている。これは受動喫煙との因果関係がはっきりしている肺がんと虚血性心疾患の死者だけを対象としており、実際にはもっと多い可能性がある。

　煙にさらされる場所を職場と家庭で分けると、職場が約３６００人、家庭が約３２００人と職場が多く、男女別で見ると、男性が約２２００人、女性が約４６００人と、非喫煙者の割合が高く、家庭で受動喫煙となりやすい女性の方が被害が大きくなっている。

◆未成年、喫煙で死亡率上昇

　青少年期に喫煙を開始すると、成人後に喫煙を開始した場合に比べて、がんや虚血性心疾患などの危険性がより高くなる。肺がんは２０歳未満で喫煙を開始した場合の死亡率が、非喫煙者の５・５倍に上る。

　吸い始める年齢が若いほど、ニコチンへの依存度が高い人が多くなることも報告されている。

　喫煙はがんだけでなく、虚血性心疾患（狭心症、心筋梗塞）や脳卒中など循環器の病気、肺炎や慢性閉塞性肺疾患など呼吸器の病気の原因にもなっている。このため、たばこを吸わないことが、さまざまながんの最大の予防策となる。

◆自力より成功しやすい－医療機関での禁煙治療

　禁煙は自力でも可能だが、医療機関での禁煙治療や禁煙補助薬を利用すると、ニコチン切れの症状を抑えることができるため、比較的楽にしかも自力に比べて３、４倍禁煙に成功しやすくなることが分かっている。

　禁煙治療はニコチン依存症の診断テスト（自己診断）が５点以上で、同意書の署名、１日平均喫煙本数×喫煙年数が２００以上の３５歳以上を対象に、医療保険適用で受けることができる。

県北の禁煙外来医療機関は次の通り。

【禁煙外来医療機関】延岡市＝杉本病院（三ツ瀬町）岸医院（本小路）米田脳神経外科（惣領町）黒木病院（北小路）みぞぐち医院（伊形町）髙橋医院（北浦町古江）生協クリニックのべおか（浜砂）平田東九州病院（伊形町）もうりクリニック（北川町川内名）早田病院（高千穂通）桜小路クリニック（桜小路）▽日向市＝吉森医院（原町）東郷病院（東郷町山陰）和田病院（向江町）にいな鶴町クリニック（鶴町）▽門川町＝森迫胃腸科内科（須賀崎）▽椎葉村＝村国民健康保険病院（下福良）▽諸塚村＝諸塚診療所（家代）▽美郷町＝南郷診療所（南郷神門）▽高千穂町＝佐藤医院（岩戸）