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高天原物語−楽しく感動の舞台

本紙掲載日:2021-08-03
6面

ミュージカルのような舞踊劇

◆助け合い、困難を乗り越えよう−神々に私たちの願い重ねる

 国文祭・芸文祭みやざき2020の延岡市分野別フェスティバル「日本舞踊で舞う〜神話の源流〜」は1日、延岡総合文化センターであった。歌あり、せりふありでミュージカル要素の強い舞踊劇を約1000人の観客が楽しみ、感動、豪華な舞台に大きな拍手を送った。

 公演は、同市出身の舞踊家・振付家の花柳達真さん(44)がこの日のために創作、演出した「天翔(あまかけ)る神々高天原(たかまがはら)物語」(2幕5場)。「コロナ禍を乗り越えようとするわれわれの姿と、平和な世を切り開こうとするニニギノミコトが同じ立場にあると感じた」と達真さん。恋をしたり、怒ったり、喜んだり、困ったりする神々の〃人間くささ〃を自分たちと重ね合わせ、困難な中、心を通わせることで、新しい未来を切り開いていく、という物語に仕立てた。

 日本舞踊家は、延岡日本舞踊協会(花柳慶次松会長)の会員12人の他、東京藝術大学の卒業生で結成された「藝○座(げいまるざ)」から、達真さんを含む4人が特別出演。さらに、市内在住の声楽家後藤紀子さんと市内のダンススタジオ「RHYTHMMASTER(リズムマスター)」から子ども12人が参加。舞台裏のスタッフも合わせ、総勢60人が携わる大舞台となった。

 第1幕は3場から成り、ニニギノミコトが、愛宕山でコノハナサクヤヒメとイワナガヒメ姉妹と出会い、妻を選ぶ場面から始まる。その後に時がさかのぼり、2場は高天原が舞台。ニニギの祖母アマテラスが、弟スサノオの言動に怒って「八咫(やた)の鏡」を放り投げてしまい、「鏡と草薙(くさなぎ)の剣を探して来るまで、自分は岩戸から出てこない」と隠れてしまう。このためスサノオと神々は助け合い、二つを探す旅に出る。これが物語の軸となっている。

 3場では、ヤマタノオロチのいけにえとなりそうになったクシナダヒメをスサノオが助け出し、オロチの尾から剣を見つける。しかし、鏡はなかなか見つからない。

 第2幕では、鏡の在りかをめぐって神々が奔走した。キーワードは「歌と踊り」。「天国と地獄」や「カルメン」など、耳なじみのあるクラシック曲にコミカルな動きを交え、物語が進んだ。

 歌えない神様に代わって登場したのが、後藤さん扮(ふん)する「歌の神」。澄んだ歌声が響く中、リズムマスターの子どもたちが「花の精」となってかわいらしく踊り、舞台に花を添えた。

 鏡を探す過程で須美江の海に潜るなど、延岡近辺の名所を神々が〃観光〃。「ばんば踊り」を三味線で歌舞伎音楽調にアレンジした曲や「延岡といえばアユと地鶏と旭化成。(オリンピック柔道競技での)金メダル二つおめでとうございます」というアドリブが、観客をさらに喜ばせた。

 神々の協力で岩戸は開き、アマテラスが復活。ニニギに新たな世界を創るよう命じる。集まった神々は「心でつながる豊かな国」「疫病退散」「いざや目指さん新たな世界」と口々に発し、ニニギの願いと、コロナ終息を祈る現代の私たちの願いを込めて、ステージを締めくくった。豪華なステージを心から楽しんだ観客からの惜しみない拍手が会場いっぱいに響いた。

 市内から訪れた60〜70代の女性3人は「初めての機会でとても感慨深かった。いい時間だったし、分かりやすくて楽しかった」と満足顔。クシナダヒメを演じた寿百重美里さんに踊りを習っている杉尾愛果さん(南小6年)は「とてもかっこよかった。先生みたいに踊れるようになりたい」と声を弾ませた。

 慶次松会長は「3年前から国文祭に参加しようと構想を練ってきて多くの人に協力していただいた。胸がいっぱい」と涙。達真さんは、「観客も一緒に(困難を)乗り越えることができた舞台。少しでも皆さんに思いが届いていたらうれしい」と話した。

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