延岡商業高校創立１００周年思い出座談会（１）

本紙掲載日：2021-10-30

6面

全産業に通用する人材育成

◆高い技術を持っていた珠算部－県北初の甲子園出場（１９６８年）

　延岡市桜ケ丘の県立延岡商業高校（大迫良三校長、４２９人）は今年、創立１００周年を迎え、１１月６日に延岡総合文化センターで記念式典を行う。同日を前に同校同窓会「延商（えんしょう）会」から６人に集まってもらい、在学中の思い出や母校への思いを聞いた。

――まずは在学中の一番の思い出を教えてください。

【浅田】「こんな所に学校があるんだ」というのが一番の思い出です。受験する時に場所が分からず同じ町内に住む先輩に連れていってもらいました。自転車をこぎながら「まだですか」と。田んぼばっかりだし、山の方に行くし、「うわー、すっごい所だなー」って思いました。

【井本】３年生の時の担任が井上喜代司先生という生徒思いの熱い先生で。クラスでいろんな問題が起きても、校長先生たちに「とにかく卒業させてくれ」って頭を下げてくれました。卒業する時、涙ながらに「お前たちをここまで卒業させることができてホッとしている」と。先生とすごい絆がありました。人間味のある良い先生が多かったです。

【野村】３年時に出場した甲子園の入場行進です。当時は県大会で優勝しても南九州大会で勝たなければ甲子園に行けませんでしたが、ちょうど５０回大会で、１県１校が出場できたんです。延岡商業は最後から３番目の登場で、沖縄と鹿児島の前でした。その頃、沖縄返還が決まった時期で、祝福ムードがありました。５万人の観衆の拍手の波が私たちの後ろの方からザーッときて。すごく感動しました。

【髙田】私が入学した頃は校舎以外は未完成の状態だったので、学校に来たというより作業に来た感じでした。体育の授業は１週間のうち１回運動をしたか。他は土運び。バスケットコートを造るために、山を崩し、卒業までに３メートルくらい土を盛り上げました。男子だけです。たまに日曜日「今度はお前たちの番じゃ」と言われ、出てきて泥運びをしていましたね。先生が「俺たちも出てくるからお前たちも出てこい」と。

【浅田】私たちの時も、夏休みは出てきて作業しました。月曜日の全校朝礼では、並んで石拾いをしました。

【髙田】日常です。作業の感覚しかない。それでも先輩たちと比べると楽だったと思います。

【富士持】私の思い出は高校の時よりも４０歳の時に担当する同窓会「延商会」で、在学中は一言もしゃべっていない人たちと仲良くなったことです。延商会以降、同期生で毎年何かやります。学生の時にしゃべったことがない人と仲良くできているのはありがたいです。

【髙島】私は卓球部を３年間続けたことです。入部した初日、学校から野球場まで１０往復と言われて。終わったらそれからが本番で夏田山扇森稲荷神社へ駆け上がって腕立て伏せ１００回、腹筋１００回、うさぎ跳び１００回させられました。５０人くらいいた部員は、明くる日には３０人。すぐに辞めるかもしれないと思いました。休日は全部で６日あったか。「お前が３年間続くとは思わんかった」と、父が初めて褒めてくれました。
その代わりよく食べていました。学校近くの店でパンと牛乳を食べて、髙田万十に行って「お茶とたい焼き３個」って。さらに帰ってから茶わんで８杯か９杯、ご飯を食べていました。

――野村さんは１９６８年に甲子園に出場されています。

【野村】３年生の時、甲子園に行きました。県北で初の甲子園出場でした。試合が終わって南延岡駅に着くと、すごい群衆でびっくりしました。オープンカーや小型四輪駆動車を連ねて、学校までパレードをしていただきました。

【髙田】私が２３歳の時。やっぱりうれしかったですね。

【井本】１９８２年にはセンバツ、８５年には２度目の甲子園に出場し、初めて１勝しました。校歌が流れた時は涙が出ました。感動しましたね。

【富士持】２年生の時でした。私は応援団が行くことを知らず、現地に行けていません。友達は学校から帰ろうとしたらみんなが集まっていて「今から大阪に行く」と聞き、そのまま付いて行ったそうです。特別列車で座る所もなく、新聞を下に敷いて座って移動したと聞いています。

【井本】選手たちは飛行機で行ったんですか。

【野村】私の時は大分からフェリーで行きました。

【富士持】それこそ笑い話があって、選手のおじいちゃんが「今からヘリで帰って来るげな」って言うから、みんなそろって上を見上げていたと。よく聞いたらフェリーだったんです。

【髙田】練習はどこでやっていたんですか。

【野村】私が１年生の時は学校のグラウンドで、１年の終わりの時に野球場ができて、同時に西階球場も新しくできました。学校で練習していた時は狭くてレフトオーバーしたり、市営住宅に迷惑を掛けたりしていました。

【井本】野球が強くなると必ず反発したのが珠算の阿南先生でしたね。阿南先生は野球をすごく心から応援してくれていましたが、授業中は「お前たちはちょっと入賞したくらいでビフテキ食べやがって」とか言ってましたね。

【髙島】珠算に阿南昇先生という名物先生がいてね。

――阿南先生について教えてください。

【髙島】珠算部の女子部員はみんな１級。１級で１００点満点を取るまでは段の認定試験を受けさせなかった。全国大会では他の高校は段を持った生徒がいますが、段を持っていない延岡商業が優勝していました。

【浅田】１年生の時、クラスマッチの珠算大会があったんです。旧体育館で阿南先生が高い声で読み上げるんです。クラス代表で出たのですが、みんなに見られて、寒い季節だったのに、暑くなったのを覚えています。

【井本】珠算部の男子がクラスにいて、試験中に彼から男子全員に小さな紙が回ってくるんです。採点したらみんな９９点。別室に呼ばれ「お前たちみんな９９点とはどういうことか」と怒られました。

【浅田】２年生の時、西日本一になった珠算部の女子が隣の席にいて、珠算の試験があったんです。「始め」と言われて必死で。そしたら横から音がしないんですよ。２問ぐらい解いて横を見たらもう全部終わっている。玉をはじかないんです。暗算だったんですね。

【富士持】私は簿記の試験の時にそろばんを忘れたんです。その時に九段の子がいて、「私そろばん使わんでいいから貸すよ」って。その子のそろばんを借りて、試験を受けました。

【髙田】そろばんは苦手で、中学まで見たことがなかったもんね。

【富士持】一から学ぶんです。初心者は６級から。

【浅田】私たちの時は３級から。２年で２級を取りました。入学した時に３級は取るよう言われました。

【髙田】今４０代の娘が延商でしたが、電卓しか使わなかった。

【富士持】私は情報処理科でしたが、２年までそろばんがあって、３年でなくなりました。就職して最初の棚卸し計算はそろばんでしたんです。電卓はよう使わんから。

【井本】どうしても野球部はそういった話には入っていけないですがね。勉強した記憶がないからね。寝ていたら「起こすな」と先生が言ってくれていました。

【野村】授業中何をしているかって、ボール縫いです。糸がほつれたものを、机の下に１０個くらい仕込んで。

【井本】僕もやらされていました。だから飾り縫いは得意。

◆延商が大好き－伝統を守りつつ新しい風起こしたい－生徒会

　生徒会役員として行事の運営などを行っています。１００周年の節目に在学でき、光栄です。

　延岡商業高校には、販売実習の桜マーケットなど、他の学校にはない延商ならではのものが多くあります。また、「５秒間の礼」など生きていく上で必要で役立つ礼儀を学ぶこともでき、今後に残していきたいと思います。

　これまで先輩方が築き上げてきた伝統を守り残しつつ、新しい風を起こしていきたいです。私たちは延商が大好きです。おじいちゃん、おばあちゃんになっても、何百年後もあり続ける延商であるよう後輩たちに魅力を広げ、伝統、歴史をつないでいきたいです。

　楽しくて自然が豊かで、すごく充実した学校生活が送れます。先生方も、私たちの分からないことを親身に教えてくださる、一人一人の生徒を大切にしてくださる方ばかりです。ぜひ多くの人に、延岡商業高校に入学してほしいです。