桜ケ丘に希（のぞ）みあり（４）−延岡商業高校創立１００周年

甲子園春夏３度−１９６８年、県北から初出場

◆珠算部・９２年に県２８連覇達成

　１９６８年７月３１日、延岡市は熱気に満ちていた。延岡商業が県北から初めて、夢の甲子園への出場権を勝ち取ったのだ。優勝決定の瞬間、祝砲の花火が打ち上げられ、選手が乗った列車が到着する南延岡駅では歓迎会、そして桜ケ丘の学校までパレードが行われた。中堅手として出場した野村秀一さん（７１）＝新制９回卒、長浜町＝は「すごい群衆に私たちもびっくり。お祭り騒ぎだった」。初の出場に市民の期待は大きく、寄付金が続々と集まった。

　そして１７年後の８５年、夏２度目となる甲子園出場を果たす。当時の主将・山下佑二さん（５４）＝新制２６回卒、東京都＝は「秋も春も県大会１回戦負け。自分たちが一番びっくりした」。優勝候補にはほど遠く、部長だった鳥越浩二教諭（６０）は「一戦ごとに力が付き、あれよあれよと勝った」と話す。

　出場決定後「知らないＯＢがいっぱい来ていじめ抜いてくれた。一日が長く感じた」と山下さん。８２年春にはセンバツに出場しており、大舞台を経験した若い先輩らが毎日駆け付け、鍛えてくれた。

　甲子園での１勝の期待は高まり、延岡駅から９両編成の臨時列車「延商号」が駆け付けた。ＯＢや延岡市の関係者らも乗り込み往復２６時間かけて移動。「１年生は座れず、床に敷いた新聞の上で寝た」

　人数の少なかったブラスバンド部に急きょ経験者が集められて加わり、空手部中心の応援団、チアリーダーが応援を先導。大声援の後押しあって丸子実業（長野）に勝利した。山下さんは「うれしくて初めて声に出して校歌を歌った」。在校生やＯＢらはアルプスやテレビ画面越しに歓喜の涙を流したという。

　活躍は野球部だけではない。現在地に新制として開校後こそ人数がそろわなかったが、年数を重ね徐々に力を付けた。活躍した年代は違うが相撲、剣道、空手やバスケットボール、ソフトボール、陸上などの各部も上位大会に進むなど活躍。女子ホッケーは７８〜９０年に高校総体を制した。

　同校の阿南昇教諭率いる珠算部は、県内では他を寄せ付けない強さを誇り、９２年に２８連覇を達成。九州でも５連覇、全国でも種目別優勝など輝かしい成績を誇り、現在も同部ＯＢが市内外で活躍する。

　近年は強化指定を受けている体操部、毎年上位大会に出場する陸上部をはじめ、今年の高校総体２位の女子ハンドボール部、３位の空手部など多数活躍。商業ならではの部活動の活躍も目立ち、一昨年にワープロ部、流通経済部が県１位を獲得。専門分野を生かした地域貢献にも取り組む。

　現在は運動部１４、文化部１２部あり、部活動加入率は８割超え。昔も今も変わらず、文武両道を実践している。
（タイトルは校歌から。題字は流通経済科３年の後藤きららさん）