１５日は「いい遺言の日」

本紙掲載日：2021-11-15

8面

いつ何があっても困らないように

◆家族・親戚で考える機会を

　１５日は「いい遺言の日」。家族や親戚が顔を合わす機会の多い年末年始を前に、相続や遺言について考える機会を持ってもらおうと、１１月１５日の日付の語呂合わせでりそな銀行が定め、日本記念日協会が２００６年に認定した。

◇遺言者が決める意思表示－取り消し・変更いつでも何度でも

　遺言は主に、自分が生涯をかけて築き守ってきた大切な財産を、最も有効・有意義に活用してもらうために行う遺言者の意思表示。遺言がないために相続をめぐって親族間で争いが起きることも多く、そうした悲劇を防ぐため、遺言者自らが財産の帰属を決めておく目的で作成する。

　遺言は死期が近づいてからするものと思われがちだが、いつ何があっても残された家族が困らないように作成しておくものであり、最近では若い人が海外旅行に行く前などに作成するケースも増えているという。

　また、遺言は人の最終意思を保護する制度であるため、取り消し（法律上では撤回という）や変更はいつでも何度でもできる。ただ、取り消しや変更は新たな遺言を作成することで行うため、その都度、方式に従い進めなければならない。

◇遺言、三つの種類

　遺言には、①自筆証書遺言②公正証書遺言③秘密証書遺言――の３種類がある。いずれも遺言者の真意を確実に実現させる必要があるため、法律によって厳格な方式が定められている。

　方式に従わない遺言は全て無効となり、「あの人は生前にこう言っていた」という証言や、たとえ本人の話を録音、録画していたとしても遺言として法律上の効力はない。

□自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者本人が紙に遺言内容の全文を手書きし、日付と氏名を記入の上、署名の下に押印して作成する。基本的に費用がかからず、書き換えやすいといった利点がある一方、法律で定められた要件を満たさず無効となることがあるほか、紛失したり、改ざんされたりする恐れもある。
近年はパソコンなどで作成した財産目録の添付や、銀行通帳のコピー、不動産登記事項証明書などを財産目録として添付することはできるようになったが、それ以外をパソコン入力したり、第三者に記載してもらったりした場合も無効となる。

□公正証書遺言
公正証書遺言は、遺言者本人が公証人と証人２人の前で遺言の内容を口頭で告げ、公証人が本人の真意であることを確認した上で文章にまとめ、証人２人に読み聞かせるか閲覧させ、内容に間違いがないことを確認して作成する。
遺言をする際は、公証人に相談したり、必要な助言を受けたりすることができる。費用は制定で定められており、財産５００万～１０００万円が１万７０００円、同３０００万～５０００万円が２万９０００円など。相談は無料。
公証人は裁判官、検察官、弁護士の経験者や、長年、法律事務に携わり法曹資格者に準じる学識経験者で、正確な法律知識と豊富な実務経験を有する。複雑な内容でも法律的にきちんと整理した遺言書を作成するエキスパートで、公正証書遺言は費用がかかるが、自筆証書遺言よりも安全確実な遺言方式と言える。

□秘密証書遺言
秘密証書遺言は、自筆証書遺言と公正証書遺言双方の性質を持っている。自筆で作成し、封をするまでは自筆証書遺言と変わらないが、公証役場に持ち込んで公証人と証人２人へ遺言書を提出する。遺言内容はあくまでも秘密で、内容の確認はされない。
主に、遺言内容を秘密にしておきたい場合に用いられ、公証人によって遺言者の存在や、本人が作成したことは証明されるが、保管は自分でする。本人が亡くなった後に家族が遺言書の存在に気付かない場合があり、遺言内容が法的に無効となる可能性もあるため、利用の可否は慎重に検討することが望まれる。

◇専門士が力に――「まずは気軽に相談を」

　遺言書の原稿作成は弁護士や司法書士、行政書士に依頼することができる。費用はそれぞれ異なる。弁護士に相談すれば遺言の形式や内容について正確な情報が得られ、「遺言執行者」として遺産の適正な処理を依頼することも可能。相続人の立場でも、相続に関する複雑な問題（特別受益、寄与分、遺留分など）へ適切に対処してもらうことができる。

　司法書士は、遺言書の書き方をはじめ、何を書いておけば相続トラブル対策になるかなどの相談にも対応。戸籍謄本や登記簿謄本など必要書類の収集や、公証人との打ち合わせなど、遺言書作成や相続に関する手続きを代行、支援する。公正証書遺言を作成する際の証人、遺言執行者になってもらうこともできる。

　行政書士も遺言の相談から必要な書類の収集、遺言書作成（公正証書遺言では起案・証人等、秘密証書遺言ではその作成等を含む）まで支援。相続手続きでは書類作成の専門家として、主に相続関係説明図、相続財産目録、遺産分割協議書などの作成（法的紛争段階の事案や税務・登記業務に関するものを除く）を中心に、その前提となる各調査や戸籍など必要書類の収集も含め引き受ける。

　県弁護士会、県司法書士会、県行政書士会、延岡公証人役場は無料相談の窓口を設け、遺言・相続をはじめ各種相談に応じている。いずれも「まずは気軽にご相談ください」と活用を呼び掛けている。

【県弁護士会】毎月、県内各地区で無料相談会を開催している。いずれも定員制で予約が必要。県北地区の今月と来月の相談会会場と申込先は次の通り。

［今月］１６日午後１時３０分～４時３０分＝門川町社協（電話門川６３・２１４３）▽１７日午後１時３０分～４時＝五ケ瀬町社協（電話五ケ瀬８２・１７００）▽１８日午前９時３０分～午後３時３０分＝日向市中央公民館（日向電話５２・２１１１）▽２４日午後１時３０分～４時３０分＝高千穂町社協（電話高千穂７２・３６６３）▽２５日午後１時３０分～４時３０分＝延岡市男女共同参画センター（電話延岡２２・７０５６）。
［１２月］１日午後１時３０分～４時３０分＝日向商工会議所（電話０９８５・２２・２４６６）▽１６日午前１０時～午後３時＝延岡市社協（電話延岡３２・６５５５）▽２１日午後１時３０分～４時３０分＝門川町社協（電話門川６３・２１４３）▽２３日午後１時３０分～４時３０分＝延岡市男女共同参画センター（電話延岡２２・７０５６）▽２４日午前９時３０分～午後３時３０分＝日向市中央公民館（電話日向５２・２１１１）。

【県司法書士会】宮崎市旭町の県司法書士会館内に「相続・遺言相談センター」を設け、毎週水曜（祝日除く）に応談している。司法書士が面談で遺産相続の手続きや、自筆の遺言書を見つけた場合の対応、遺産の把握、遺産分割、借金の相続回避、生前の相続放棄、生前贈与、遺言書作成などについての相談に応じる。相談時間は午前９時３０分～正午。初回相談（３０分）は無料。予約は県司法書士会（電話０９８５・２８・８５３８、平日午前１０時～正午と午後１～４時）。

【県行政書士会】ホームページでは日本行政書士会連合会の公式キャラクター「ユキマサくん」が、遺産・相続を含む相談内容別に行政書士の役割を漫画形式で分かりやすく紹介した「解決☆ユキマサくん！」（同連合会ホームページ経由）を見ることができる。
また、主な取り扱い業務を選択するなどして、自分が住んでいる地域の行政書士を案内する検索ページもあり、活用を呼び掛けている。

【延岡公証人役場】延岡市中町の延岡公証人役場（ジブラルタ生命延岡ビル５階）では、祝日を除く毎週月曜から金曜の午前９時～午後５時に無料相談を実施している。遺言や各種契約の公正証書作成について広く応談。法務省が運営する登記・供託オンライン申請システムを使った電子認証やテレビ電話での認証手続きも行っている。詳しくは延岡公証人役場（電話延岡２１・１３３９）。