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迫る市長選−延岡市の課題(5)

本紙掲載日:2022-01-15
1面
「この程度の大きさしかないんです」と用水路を見下ろす佐藤区長(富美山町中央区)

浸水対策−富美山町中央区、大雨のたび浸水

◆市、雨水ポンプ場整備へ

 「50年暮らしているが、大雨のたびに水が上がる。命があればいいという程度に思っていた方がいいのかもしれない」。富美山町中央区の佐藤孝雄区長(73)は半ば諦めたように語った。

 住宅が密集し、郵便局や商店が並ぶ町の中心部に位置するが、浸水は常態化している。交通量の多い生活道が冠水で通行止めになることも珍しくない。

 佐藤区長の自宅裏には祝子川へと下る地区の幹線用水路が流れており、まとまった雨が降ると周辺地区から一気に水が集中。今山方面に立ち並ぶ山下町の団地からも雨水がこの用水路へと流れ込んでくる。

 市史によると、富美山土地区画整理事業計画が認可されたのは1974(昭和49)年で、同用水路も当時に整備。その後次々と住宅が建設され、3千近い世帯が暮らす市内屈指のベッドタウンとなった。

 宅地開発とともに、雨水を蓄える森林がなくなり、アスファルトやコンクリートの構造物が増えるに従い、用水路の水量も増加。祝子川の水位が上がると、川からの逆流を防ぐ止水板が閉まる仕組みになっているため内水がたまり、周囲よりも低い中央区は浸水してしまうのだという。

 市下水道課によると一帯では、1997年の台風19号で住宅の床上浸水が98戸、床下浸水が66戸に上り、2005年の台風14号でも床上76戸、床下43戸の被災。その後も昨年の台風9号まで、たびたび浸水被害が発生している。

 一方、頻発する豪雨災害を受け、国土交通省は全国の自治体へ21年度までに下水道施設の耐水化計画を策定するよう要請。これに伴う財政的支援を活用し、市は26年度完成を目指して富美山第1・第2雨水ポンプ場の整備に着手した。

 住民にとって悲願の朗報で佐藤区長も喜んではいるが、「完全には解消しないだろう」とも指摘。特に浸水の頻度が高い同区の延岡富美山郵便局付近は、大雨が降ると用水路の容量不足に加え、側溝自体が排水しきれないまま吹き上がるようにして水がたまるからだ。

 富美山を一望する高台に立った佐藤区長は、「これだけ広い団地で、あの程度の用水路では浸水はなくならない。とにかく大雨が降りそうな時は車や大事な物を高いところに上げるように呼び掛けたい」と、これからも続くであろう水との闘いを覚悟していた。

 市内には区画整備に取り残されるように、全域的に内水の浸水箇所が点在。各地域からは毎年、市をはじめとする行政機関へ解消が要請されている。

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