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農業遺産、どう生かす

本紙掲載日:2022-01-25
8面
農業遺産の特徴や課題などについて意見を交わしたパネルディスカッション

県内3認定地域が意見交わす

◆高千穂町で合同シンポジウム

 世界農業遺産に認定されている高千穂郷・椎葉山地域と、日本農業遺産に認定されている日南市と田野・清武地域による合同シンポジウムが13日、高千穂町三田井のゆめゆめプラザTACで開かれ、各地域の取り組みや今後の課題などについて意見を交わした。主催は県と世界農業遺産高千穂郷・椎葉山地域活性化協議会。

 県北5町村(高千穂町、日之影町、五ケ瀬町、諸塚村、椎葉村)からなる高千穂郷・椎葉山地域は2015年12月に「高千穂郷・椎葉山の山間地農林業複合システム」、日南市は昨年2月に「造船材を産出した飫肥林業と結びつく日南かつお一本釣り漁業」、田野・清武地域は同じく昨年2月に「宮崎の太陽と風が育む干し野菜と露地畑作の高度利用システム」などが評価され、それぞれ認定を受けた。

 合同シンポジウムには3地域の関係者ら約50人が参加。「地域の農林水産業、変えるべきもの、変えてはいけないもの」をテーマにしたパネルディスカッションでは、総合地球環境学研究所の阿部健一教授がコーディネーターを務め、高千穂町の甲斐宗之町長、宮崎市田野総合支所の齋藤裕美子支所長、日南市の南郷漁協の岩切孝次理事がパネリストとして登壇、意見を交わした。

 この中で齋藤支所長は、大根やぐらや千切り大根棚など干し野菜の技術などを組み合わせた露地畑作の特徴について、「地域の団結力が非常に強く、大根農家だけでなく栽培業種を超えた協力体制ができている」と紹介。その上で、「みんなでその地域を守っていく農業システムを維持しなければならない」と指摘した。

 また、岩切理事は、江戸時代から約300年続く日南のかつお一本釣り漁について、魚群の一部しか収穫しないため「水産資源に優しい漁業として続いている」と説明。一方、「課題点は乱獲によって水産資源が枯渇していること。このことを日本中に訴えていきたい」と強い危機感を表した。

 甲斐町長は、山間地に張り巡らされた農業用の山腹用水路や五穀豊穣(ほうじょう)などを願う神楽などの文化に触れ、「この地域を守っているのは共同作業による人同士の結び付き。自然に感謝しながら行う農業の在り方は変えてはいけない。コミュニティーの思いを将来も維持したい」と強調した。

 阿部教授は「課題は簡単に解決できないが、大事なのは問題を地域で抱え込まずに広く共有すること。認定地域同士でいろいろな知恵を出し合ってほしい」と呼び掛けた。

 合同シンポジウムでは、同研究所の山極壽一所長による基調講演や、世界農業遺産高千穂郷・椎葉山地域活性化協議会による事例報告も行われた。

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