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巨典の−−故郷は遠きにありて思うもの(10)

本紙掲載日:2022-01-26
8面

鐘川友紀さんの店「タカチホキッチン」看板メニュー、両親直伝チキン南蛮

◆高千穂の喫茶店ヤングエコーの味
 本場、本物に衝撃−福岡市中央区薬院

 福岡市中央区の薬院。閑静な住宅街でありながら、おしゃれなショップや飲食店などが多い人気の街です。

 その薬院の街に溶け込むように「タカチホキッチン」があります。ドアを開けると、洗練された店内のあちらこちらに「高千穂町」を感じます。

 代表を務めるのは、高千穂町出身の鐘川友紀(かねがわ・ゆき)さん。看板メニューはチキン南蛮です。

 1981年から2010年まで、「ヤングエコー」という喫茶店が高千穂駅のすぐ近くにありました。町民はもちろん、観光客にも人気のお店でした。そのお店を切り盛りしていたのが、鐘川代表の両親です。

 ヤングエコーのチキン南蛮は当時、宮崎県の「チキン南蛮50選」(MRTが09年に選定)にも選ばれた逸品でした。

 その後、鐘川代表は知人のつてもあり、そのチキン南蛮のレシピを持って福岡市に出店します。「鶏の空揚げのマヨネーズあえのチキン南蛮もどき」がまかり通っていた福岡に、タカチホキッチンのチキン南蛮は衝撃デビューを果たします。

 宮崎出身、福岡在住のお客さんたちは、一口食べて「これ、これ!」と、大いに出店を喜んでくれました。県外からの出張族は、連日訪れては本物の味を堪能してくれたそうです。

 さらには、チキン南蛮ファンのみならず「高千穂ファンです」というお客さんが多いことにも驚いたそうです。やはり「高千穂」の持つブランド力は福岡においても絶大のようです。

 鐘川代表は高千穂小、高千穂中、高千穂高に通った生粋の高千穂っ子。高校を卒業すると、東京は新宿にある東京モード学園のファッションビジネス学科へ進みます。

 自然豊かで人情味あふれる高千穂ですが、思春期になると、職業の選択肢や情報量に不安を感じずにはいられなかったそうです。

 ふるさとを飛び出した彼女は、大都会で生き生きと暮らしました。私が思うに、この経験がなければ「タカチホキッチン」は生まれなかったのかもしれません。

 スタイリッシュな店内であるのに、実に居心地の良い空間が生まれているのは、彼女のセンスと創造性が高千穂町と福岡市をうまく結び付けたからだと思います。彼女が培った豊かな感性が、個性的な創造力につながったのでしょう。

 一方、高千穂からわざわざ足を運んで「頑張ってねー」と声を掛けてくれる人もいるそうで、鐘川代表はこのお客さんたちを「ふるさとからのエール」と捉えて大きな励みとしているようです。

 そして今、鐘川代表は「チキン南蛮」に大きな可能性を感じていると言います。娘さんは美容系の仕事で現在、ロンドンに在住。友人たちとのパーティーにチキン南蛮を持参すると、アジア系、ヨーロッパ系の人種を問わず、大受けだそうです。「チキン南蛮は、中華料理や洋食のテイストも併せ持っているからだろう」と鐘川代表は分析しています。

 高千穂町で両親から受け継いだチキン南蛮が、新たな拠点である福岡から世界へ広まる可能性は、決して小さくはないのかもしれません。

 最後にむちゃぶりを一つ。「ふるさと高千穂町を男性に例えると誰でしょうか?」。その投げ掛けに鐘川代表は少し考えた後、「高千穂峡の柱状節理のようにシュッとしていて、神秘的なディーン・フジオカさん」。

 そう来たか!そこにも鐘川代表の豊かな感性が垣間見えました。

(元UMKアナウンサー。現在、フリーアナウンサーとしてテレビ西日本の「ももち浜ストア」のMCを担当。日之影町生まれの延岡育ち。趣味は渓流釣り。県北のほとんどの川で釣りをしたというヤマメ釣り歴45年。延岡高校31回生・1979年3月卒/リポートは月2回のペースで掲載します)

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