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巨典の−−故郷は遠きにありて思うもの(15)

本紙掲載日:2022-05-12
8面

見事な再生福岡の吉塚商店街−二つの優しい思いが一つになり

◆最盛期150店舗から42軒、このままでは消滅する
悲壮感からスタート再生プロジェクト−リトルアジアマーケットに生まれ変わる

 今年のお大師さん(延岡今山大師祭)は天気に恵まれました。山下通りから延岡駅前、そして祇園町にかけてのにぎわいは、活気にあふれていた昭和の延岡を思い出してうれしくなりました。

 しかし、全国的に見ると、地方の商店街は疲弊しているのが現状です。コロナ禍もシャッター化に拍車を掛けていて、地域にとって非常に深刻な問題となっています。

 そんな中、見事に再生を果たした商店街が福岡市にありました。博多駅から鹿児島本線で一駅の小さな小さな吉塚商店街です。

 1950年ごろ、魚屋さんと八百屋さんの計3店舗からスタート。最盛期には150軒ものお店が軒を連ねていたそうですが、スーパーやコンビニなどの台頭から徐々に寂れていき、現在は42軒に。「70年以上の歴史を持つ吉塚商店街が消滅してしまう」。そんな悲壮感から、2020年の年末に再生プロジェクトが始動しました。

 新しい商店街のコンセプトは「地域住民と、周辺に住む在住外国人との共生・交流」。

 まず、商店街を活性化すること。そして、コロナ禍で祖国に帰れず不安を抱えながら生活する外国人が安心して暮らせる場所を作ることと、地域の人と外国人が交流できる場を提供すること――。この3本柱を実現させることで、吉塚商店街は「吉塚市場リトルアジアマーケット」に生まれ変わります。

 そして、このプランが経済産業省の「商店街活性化・観光消費創出事業」に採択され、7000万円の総事業費のうち、約6割が補助されることになり、タイ、ミャンマー、中国、ベトナム、カンボジア、韓国のアジア6カ国の飲食店が市場に出店。今では、一歩足を踏み入れると、昭和のノスタルジックな雰囲気の店舗と、アジア各国のエキゾチックなレストランが見事に融合しています。

 昔の銭湯「若桜湯」をそのまま使っている飲食店も話題となりました。男湯がミャンマー料理、女湯がタイ料理のレストランです。ユニークな店構えですが、当然、本場のおいしさです。

 そして空き店舗の活用で、来場者が使えるトイレを新設。さらには、地域住民と外国人、そして買物客が気軽に交流できるようにと、「アジアンプラザ」というスペースも新たに設けました。

 ここでは、市場で購入・テイクアウトしたものを食べながら、親睦を深めることができるのです。しかも、コーヒーなどのドリンク200円、生ビール400円と利用しやすい料金設定です。

 そして何と昨年3月には、ミャンマーから、金色に光り輝くお釈迦(しゃか)様をお迎えし、外国人仏教徒の心の支えとなる場所にもなっているそうです。

 単に商店街の集客力を上げるのが目的ではなく、「吉塚に住む外国人が気持ちよく過ごせるように」、そして「昔ながらの商店街を守れるように」。そんな二つの優しい思いが一つになって、商店街は生まれ変わりました。

 まったくもって「アッパレ!」です。そしてスピード感を持ってプロジェクトを進めた商店主の皆さんにも「アッパレ!」だと思います。

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