巨典の−−故郷は遠きにありて思うもの（１６）

延岡の応援店・ワインと焼き鳥の店「真純家」−福岡市西新・延岡市土々呂町出身兼重優子さん

◆結婚、一念発起しソムリエに−酒ディプロマの資格も
　超一級の食材を産み出す素晴らしいふるさと

　飲食店の激戦区でもある、福岡市西新。そのメインストリートの一角に、午後６時の開店と同時に予約客が訪れ、あっという間に満席になる人気店があります。ワインと焼き鳥のお店「真純家（ますみや）」です。

　おいしく洗練された料理とお酒、良心的なお値段、笑顔あふれるサービス。人気店の要素が三拍子そろったお店を支えているのが、延岡市土々呂町出身の兼重優子さんです。

　延岡高校を卒業した優子さんは、鹿児島の看護専門学校に進学。そして、福岡の病院に勤めていた時、看護師の先輩が連れて来てくれた真純家で、人生は大きく変わりました。お店のオーナーと恋に落ち、結婚。と同時に、看護師からソムリエへと、大きく人生のかじを切ったのです。

　飲食店関係者はもちろんのこと、ワイン愛好者なら誰もが目指したい資格の一つ、ソムリエ。ワインを中心とする専門知識を持ち、品質管理からサービスまでを行うプロフェッショナルです。

　一念発起した優子さんは、ソムリエの資格取得に向けて猛勉強を始めます。その試験は年に一度開催されていますが、１次試験の筆記試験から２次試験のテイスティング・口頭論述試験、３次試験の実技試験のすべてに合格しなければなりません。

　試験の合格率は平均約３０％という狭き門ですが、結果は…さすがの一発合格。ご主人の作る料理と優子さんが選ぶワインの、まさにマリアージュ（結婚）が真純家を人気店に押し上げることになったのです。

　さて、優子さんにふるさと延岡のことを尋ねると、話が止まらなくなります。宮崎ひでじビール、土々呂のメヒカリ、高橋水産の干物やちりめん、五ケ瀬川のアユ。ソムリエから見たふるさとは、超一級品の食材を産み出す、素晴らしく魅力のある土地であることは間違いないようです。

　ワインにおいては、宮崎県産の五ケ瀬ワインや都農ワインは福岡でも注目されています。そして、ふるさとの「人情」に励まされたこともありました。コロナ禍で売り上げが減少した際には、感染状況が落ち着くのを見計らって、高校の同級生たちがお店でプチ同窓会を開いて応援してくれたこともあったそうです。

　そんな、延岡の素晴らしさを生き生きと語る優子さんに無茶振りの質問をしてみました。「ふるさと延岡をワインに例えると何ですか？」

　少し考えた後、「ランブルスコ」との答えが返ってきました。イタリア産の甘めの発泡ワインだそうで、ふるさと延岡の人たちが持っている優しさ、おおらかさ、包容力を連想させる味わいだそうです。なるほど、さすがです！

　そして優子さんは「酒ディプロマ」という日本酒の専門資格も併せ持っています。今後はふるさとの名酒「千徳」もお店で扱いたいと話していました。

　まったくもって、福岡にこんな頼もしい延岡応援店があるのは、実にうれしい限りであります。原稿を書いてる先から、またこよいも真純家のカウンターに座りたくなりました。