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9日夕方から運用へ−九州電力
◆木城町から大分県臼杵市124キロ
九州電力は9日夕方から、50万ボルト送電線「日向幹線」の運用を開始する。宮崎県木城町のひむか変電所と大分県臼杵市の東九州変電所を結ぶ総延長約124キロ。これによって九州電力送配電管内における同送電線がループ化し、九州全域の電力系統強化につながることから、災害時の広範囲停電リスク軽減などが見込まれる。建設工事を管理する九州電力送配電・延岡送変電工事所(小笠原博所長)によると、7日から実施されている最終検査の終了後、9日午後5時ごろからの運用を予定している。
日向幹線は宮崎県側の延岡市、美郷町、門川町、日向市、西都市、木城町の延長約78キロと、大分県側の臼杵市、佐伯市の同約46キロの山間部に建設した291基の鉄塔をつなぐ送電線。九州において、これまで同様の50万ボルト送電線は、中央変電所(福岡県筑前町)―南九州変電所(鹿児島県伊佐市)間をつなぐ「熊本幹線」「中九州幹線」「南九州幹線」で構成する西九州側の1ルート(2回線)のみだった。
同ルートでは今月から2028年にかけて電線や金具類の更新工事が順次予定されており、2回線のうち1回線を長期間にわたって停止する必要があるという。更新工事中に災害等で残りの1回線の送電がストップした場合、九州南部で広範囲にわたる停電発生が危惧されることから、日向幹線はその対策として14年11月に着工した。
敷設場所の大半が一般の交通網から離れた山間地という日向幹線の建設は、人員や資機材を運ぶ道路整備から始まり、鉄塔建設のための基礎・組み立て工事、その後の架線工事へと続いた。21年6月には鉄塔291基すべての組み立てが完了し、同年11月から自主検査期間に。全5回の検査を経て9日午後5時ごろからの運用を開始し、同6時ごろから九州一円の50万ボルト幹線ループ化が完了するという。
◇困難乗り越え−プロジェクト完遂
事前調査から約15年、着工から7年余りにわたる一大プロジェクトは多くの困難と共にあり、15年の台風15号襲来や20年7月の豪雨発生の際には搬入路が崩壊する被害を受けた。16年の熊本地震では、被災地の復旧応援のため一時作業を中断したほか、現場周辺で希少猛禽(きん)類のクマタカの生息が確認された時には、繁殖期の工事休止に踏み切ったこともあったという。
19年に赴任し、現在、最終検査に臨んでいる小笠原所長は「締めを任されるとなった時のプレッシャーは大きかった。工程調整や新型コロナ対策などで施工会社の皆さまに多大な協力をいただき、ようやくここまでたどり着くことができた」と最後の3年間を振り返った。
施工会社の一つで、ひむか変電所における保護装置分野で日向幹線建設に関わった興電舎(延岡市浜町)の甲斐稔康社長は「今回の運用開始は、道路に例えると東九州自動車道開通のようなもの。将来にわたってより安定した送電網が構築されることになる」と話し、今後の安心安全な電力供給に期待を寄せた。